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『名探偵コナン』以来の傑作ミステリー『約束のネバーランド』の謎解き構成を解説

小説、映画でミステリーは、最も人気があるジャンルだ。でも、漫画には、ミステリーというジャンルがない。

『金田一少年の事件簿』『名探偵コナン』という大ヒット作が二つあるが、それに続く新作は、なかなか出てこない。出てきてもヒットしなくて続かない。

なぜ、漫画にはミステリーというジャンルがないのだろう?

 

ミステリーとはどのようなジャンルを指すのか? 広い定義だと謎を解き明かすことだが、犯人、動機、犯行方法を解き明かすフィクションを指すことが多い。

そのようなミステリーは、小説や映画では大人気だ。

 

なぜ、小説も映画だと、ミステリーが成立するのか。

すべての情報が、均一に扱われているからだ。見かけだけで、どの情報が重要かはわからない。伏線の一文も、描写の一文も、みかけは同じ一文だ。読者の方で、ここが実は伏線じゃないかと推測する。

映像も同じだ。伏線のシーンも、風景のシーンも同じように1秒が過ぎる。重要な情報を、バランスよく隠せるのだ。

 

でも、漫画はそれができない。漫画の大きな特徴は、コマの大きさが変わることだ。伝えている情報が作者にとってどれくらい重要かが、コマの大きさでも表現されている。

だから、伏線をあまりにも小さくすると読者からずるい演出だと思われるし、大きくすると伏線だということがバレバレになって面白くない。

 

『金田一少年の事件簿』では、犯人が黒い影で表現されるという手法が開発されたが、漫画は登場人物を絵で描いてこそのメディアだ。他の作品だと、犯人を黒い影にするという手法は使いにくい。

だから、犯人や動機を推測する物語は、なかなか生まれてこない。

 

代わりに生まれたジャンルがある。

漫画なので、主人公自体は確固とした存在だ。代わりに、世界観が謎に包まれている。主人公たちは、成長しながら、その世界の謎を解き明かしていく。世界の謎を解き明かしていく様子は、ロールプレイングゲームのようでもある。

まだジャンルとして名付けられていないが、僕はそれを「世界観謎解き漫画」と勝手に呼んでいる。

 

そのジャンルの始まりは、『ジョジョの奇妙な冒険』だと僕は勝手に思っている。スタンドの仕組みやジョスター家について知りたくて、読み進めていく。

『HUNTER×HUNTER』が、「世界観謎解き漫画」の代表作だ。暗黒大陸が何なのかを多くの人は待っていて、ゴンと父親の親子愛エピソードをもっと、と待っている人は少ない。世界観が明らかになることが、物語の推進力になっている。

 

『ドラゴンボール』だって、世界観の構築が素晴らしい。でも、物語を読み進める力は、悟空が勝つのかどうかであって、この世界の仕組みではない。どんどん強い敵にインフレが起きていて、突き詰めるとどこかで矛盾がありそうだなとみんな思っているけど、そこを突っ込むのは野暮というものだ。

 

「世界観謎解き漫画」として、最大のブレイクは『進撃の巨人』だ。巨人が何もなのか? 国がどうなっているのか?ということの方が、エレンやミカサの感情よりも気になっている読者多い。

 

そして、『約束のネバーランド』は、その系譜をしっかりと受け継いでいる「世界観謎解き漫画」だ。

ジャンプだけど、キャラ漫画ではない。もちろん主人公のキャラクターは、しっかり立っている。エマたちの友情で感動するし、ビジネスマンにも役立つような金言が所々で出てくる。

でも、何よりもこの作品の魅力は、謎解きだ。作者がどこにどんな伏線を巡らせているのか、ミステリー小説の犯人を当てるような気持ちで、作品を読むと伏線に思える箇所がたくさん出てきて、答え合わせがしたくて、先が読みたくてたまらなくなる。

 

キャラクターへの共感で進む物語が多いが、『約束のネバーランド』は、ゲームブックを解くつもりで読むほうが、ずっと興奮する。

 

今、下北沢で『約束のネバーランド』のリアル脱出ゲームをやっている。

謎解き×謎解き。

相性がいいに決まっている。僕ももちろんやってきた。脱出はできなかったけど。

 

ミステリー小説を、作者に挑戦するような気持ちで読む人がいると思う。同じように、『約束のネバーランド』も、作者の用意した伏線に気づいて、世界観を予測できるか。作者と勝負する気持ちで読むのが、「世界観謎解き漫画」のオススメの読み方だ。

 

ちなみに担当編集者と僕は、対談をしているので、こちらから。

 

 

 

 

ゲームの解説のように、『約束のネバーランド』の謎を推測する専門チャンネルがあるので、読んでも全然謎に気づけなかった人は、こちらから。

 

 

 

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