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歴オタもビジネス書好きもまだ知らない経済史『その弐 江戸時代の経済入門!』公開

 

 

10月下旬、経済歴史マンガ家、アイタローさんの新刊『その弐 江戸時代の経済入門!』がKindleインディーズで公開されました。

 

グローバルな体制を作り上げた中国の明王朝、大坂や博多の町を作った戦国商人たち――個人の活動が世界とつながる現代で、知っておくべき過去の知恵がぎっしり詰まった一作です。

 

 

その弐 江戸時代の経済入門!
著者:アイタロー
出版社:#manufacturer
販売日:2019-10-21

 

 

『その弐 江戸時代の経済入門!』は、2018年12月に「Kindleマンガの売れ筋ランキング(無料)」で1位となった『その壱 江戸時代の経済入門!』の続編。

江戸時代の寺子屋で2人の子供(と黒しば!)とともに、江戸時代とその江戸を作った経済のおもしろさを探究する物語です。

 

 

その壱 江戸時代の経済入門!
著者:アイタロー
出版社:#manufacturer
販売日:2018-12-02

中国・清王朝を生んだ交易の力

 

 

『その弐』は、大航海時代の先鞭をつけた中国・明王朝の興亡と、清王朝の成立からスタート。日本人は学校の歴史の授業で「長期にわたって中国を支配した明の力が弱まり、北方民族の女真族に侵略された」と習います。

 

でも「なぜ北方の一民族の女真族が侵略できるだけの力をつけたのか」は教えられないまま、暗記するように言われた人も多いでしょう。その答えは「交易」です。

 

 

©アイタロー / 大福組

 

 

明の時代の「南海遠征」をきっかけに、中国を中心とする「交易」がグローバルに広がりました

交易が発展するということは中国での生糸や絹織物、砂糖や陶磁器といった輸出商品の生産が活発になります。

しかも中国製は安くて質がよく、それまで絹織物などを生産していた国の需要を奪ってしまいました。中国商品の輸入制限も行われたとか…どこかで聞いたことのある話ではないでしょうか。

 

 

海を渡り、国を作った商人たち

動乱の中で貿易を利用して財を蓄積し、政権を取る――これは中国の清王朝だけの話でありません。『その弐』によると徳川幕府も同様とのこと。

イスラム商人の活躍、明の南海遠征、そして欧州諸国の遠征といった大航海時代が始まるなかで、当然、四方を海に囲まれた日本もこの流れの中で重要な位置を占めることになります。

 

『その弐』の物語も、この時積極的に海に出ていった、戦国大名と結びついた江戸初期の豪商の話に移ります。

 

 

©アイタロー / 大福組

半分武士だった戦国商人たち

 

 

流通も市場も未整備の中で、情報収集を通じて商機を見つけ投資をする。

幕府の許可を得て、船を仕立てて東南アジア地域に進出し、オランダなどと権益を争う。

そして利益が出たら商売を広げる基礎のために街づくりへの投資も惜しまない

 

――とにかくスケールの大きい活動をしていた人々がいきいきと描かれます。

 

個人的に面白かったのは北陸や博多といった地域の商人の話です。

特に北陸商人は、当時「米遣い経済」になりつつあった江戸時代に、自藩では消費しきれない米を藩外で販売し、外貨を得る大名の力になった人たち。地方の経済的な力と人材の豊富さを実感させます。


そして大坂の街づくりを主導した淀屋。

時代の機微を見ながら、豊臣・徳川の時代に橋を含めた都市開発、大名への融資などを通じて大商人となっていきます。

大坂はいまでも「水の都」というようにとにかく川が多い。

これに橋をかけて、町が町として機能するように整備していったのは、その機能を一番必要とした商人たちだったのです。

国を作る政治家が活躍し、豊かな文化を作り上げる芸術家が活動できるのも、すべては生活の基盤を整え、オカネやモノが流通するようにした人たち――商人が活躍したから。

そんなことがこのマンガを読むとわかります。

 

なお、この淀屋は幕府に財産を没収され滅びます。

処分理由は今も謎のままですが「力をつけすぎた富裕層、しかも大名に大金を貸し付けていた商人への突然の処分」は浄瑠璃の題材にもなりました。

同じことが今も起きていないと断言することはできません。

 

 

©アイタロー / 大福組

機微を読むのは今も昔も変わらない

 

未来を見通すために過去を知る

 

「歴史は昔のことでしょ? なぜいまさら知るの?」と思われるかもしれません。特に日本の歴史教育は、事実の暗記が中心なので、興味のないことを覚えないといけない人にとっては苦行なのでしょう。

 

でも大人になってからの歴史は「暗記」とか「教養のため」とかではなく先を考えるためのツールだと思います。


マンガにも出てきますが、戦国から江戸にかけて当時の日本が世界と海を通じてつながったとき、現代のグローバリズムと同じことが起きました。

 

世界で過去に何が起きたかを知っておけば、突拍子もないことがおきても驚くことは少なくなります。もちろん今の時代の人の考え方や技術に合わせた調整は必要ですが、歴史のとくに経済史を知れば知るほど、人間の欲望や考えていること、商売で大切なことはあまり変わらないと実感します。

 

 

一緒に読みたいこの2冊!経済史好きにおススメのマンガ

 

『海帝』(星野之宣)
マンガにも出てきた、中国の明の時代の鄭和の大航海を描いた一作。

少しサスペンス風にもなっています。船の描写含めて航海の面白さがわかります。個人的には星野先生のSF作品が好きなので「歴史分野に来るのか!」とも驚きました。

>>>無料試し読みはこちら

 

『センゴク外伝桶狭間戦記』(宮下 英樹)

マンガと少し歴史や地理は違いますが、同じく戦国武将の織田信長にかけた熱田・津島商人の姿がわかります。

 

>>>無料試し読みはこちら

 

 

海帝 (1) (ビッグコミックススペシャル)
著者:星野 之宣
出版社:小学館
販売日:2018-11-30

 

 

高校の卒業旅行で新撰組ゆかりの地を回り、「世界不思議発見」で世界史のおもしろさを知り、いまでも歴史の研究本を読む私は、同じ世代に比べると比較的歴史は好きな方に分類できると思います。

 

その私も、歴史の中の経済や商売は発見が多くてとにかく飽きません。同じことを思える人がひとりでも増えることを願います。

 

 

 

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