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『吾峠呼世晴短編集』を読んで『鬼滅の刃』をちょっと深堀りしよう!

先月の2019年9月をもって、アニメ『鬼滅の刃』の第1期が終わりました。
皆さんはご覧になりましたでしょうか?
竹谷はすべて観て、大体おろろんと泣いていました。

呼吸の表現や、鬼の怖さ、各キャラクターの声。
各自の思う「ぼくのかんがえた最強のアニメ化」を地で行くクオリティだったと思います。
続編となる映画も楽しみですね。どなたか一緒に行きましょう。

『鬼滅の刃』連載当初「これはちょっと合わないなあ」と言っていた知り合いも、「いやあ、マンガの時から思ってたけど、アニメも本当に面白い!」と矛で盾を突っついてました。

その『鬼滅の刃』の作者吾峠呼世晴先生初の短編集が、満を持して発売されています。

 

 

吾峠呼世晴短編集 (ジャンプコミックス)
無料試し読み
著者:吾峠 呼世晴
出版社:集英社
販売日:2019-10-04

『鬼滅の刃』の空気を纏った、4つの物語。

この短編集は、4つの話で構成されています。
『過狩り狩り』、『文殊史郎兄弟』、『肋骨さん』、『蝿庭のジグザグ』です。

もう、タイトルからしてワクワクします。
明治大正の文豪たちの作品のように、吾峠呼世晴先生の言葉選びは、繊細でありながら、したたかな色を帯びています。

『過狩り狩り』は、『鬼滅の刃』のベースとなる作品です。
「鬼殺隊」や「呼吸」といった概念は出てきませんが、鬼を中心に話が進んでいきます。

2013年の作品なのですが、この時からすでに『鬼滅の刃』(2016年連載開始)の画風が垣間見え、ファンとしてはたまらない作品です。
連載前の作品を収録した短編集には、そういう系譜を想像できる楽しさがあって素敵です。

『文殊史郎兄弟』、『肋骨さん』、『蝿庭のジグザグ』は、舞台が現代です。
吾峠呼世晴先生の描く現代、という時点でもう興味が沸点を超えます。

それぞれ、特殊な力を持った者がなにかと対決するという物語なのですが、
魔法や超人的な身体能力、というよりは、どこか仄暗さのある能力を持った人間が主人公です。

主人公たちの戦うモチベーションも、シンプルな勧善懲悪の正義の心ではなく、それぞれ絶妙なものがあります。ちなみに竹谷は『肋骨さん』が大好きでした。

どの作品も『鬼滅の刃』に繋がる意匠や発想が点在しており、とても面白く読ませていただきました。

しかし、4つの作品を拝読して、ふと思ったことありました。
どの物語にも、「竈門炭治郎」がいないということです。

『鬼滅の刃』の主人公・竈門炭治郎へと収束したもの。

『鬼滅の刃』ではないのだから、竈門炭治郎がいなくて当然ではないか。

そう思われるのも至極もっともなのですが、4つの作品中に出てくるキャラクターの外見や内面を見ても、竹谷には「これが竈門炭治郎のベースだ」と思える要素が見つけられませんでした。

『鬼滅の刃』の主人公竈門炭治郎は、あの残酷な世界の中で誰よりもまっすぐで明るく、どこまでもプラスな存在です。

対して、短編の主人公たちには、独特な雰囲気があります。
マイナスめいた印象さえ、竹谷は覚えました。

だからこそ、思ってしまいます。
このそれぞれの世界に竈門炭治郎がいてくれれば、短編の主人公たちが一層引き立つのではないかと。

そして、その竈門炭治郎の創生こそが、『鬼滅の刃』を『鬼滅の刃』たらしめているのだと、改めて強く思った次第です。
逆に言えば、それぞれの主人公にはないものが集まり、収束して竈門炭治郎となったのではないかと思えるほどです。

当たり前に受け止めている竈門炭治郎という人間の不在。
ゆえに『吾峠呼世晴短編集』には『鬼滅の刃』とは異なった面白さがあり、新鮮に感じました。

『鬼滅の刃』に通じながらも、新しい物語を味わえる。
『吾峠呼世晴短編集』は、独立して面白いながら、『鬼滅の刃』の排反としても楽しめる、そんな贅沢なマンガです。

そして、冒頭でも触れましたが、圧倒的な言葉のセンスは、短編集でも存在感を出しています。
いつか漢字ドリルになってくれることを、願ってやみません。

 

吾峠呼世晴短編集 (ジャンプコミックス)
無料試し読み
著者:吾峠 呼世晴
出版社:集英社
販売日:2019-10-04

 

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