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「女の子だから」という罪悪感を解きほぐす異色作『さよならミニスカート』

むしろおじさんにこそ読んで欲しい

少女マンガの歴史というのは、ジェンダー論の歴史でもある。

と、私は思っている。

 

思えば『リボンの騎士』のサファイアも、『ベルサイユのばら』のオスカルも、「女にはできない(とされている)任務」を果たすために男装し、男性としての人生を送る物語だ。

 

1976年という時代に少年愛を描いた『風と木の詩』も少女マンガだったし、『大奥』は、男女逆転させることにより当時の妾制度の闇を際立たせたのも少女マンガだった。

 

しかし、かつて、ここまでリアルに、ここまでダイレクトに、ジェンダー問題と向き合った少女マンガがあっただろうか。

 

「どうしてただの仮装大会がミスコンになったのかな」

「どうして男子の部活にだけ女子のマネージャーがいるのかな」

「どうして女の子のアイドルはみんな30歳になる前に消えちゃうのかな」

 

『さよならミニスカート』は、2018年から集英社『りぼん』で連載開始されるや話題を呼んだ異色作だ。

大きな瞳に星が入った、ザ・少女マンガな絵柄なのだが、その中身は、現代的ジェンダー観の教科書ともいうべき内容で、セクハラ発言をしてしまって何が悪いかわからないというおじさんや、これから価値観を形成していくであろう男子生徒にこそ読んで欲しいと思う作品なのである。

(ちなみに、上記のような意図なのか、少年ジャンプ+で第一話が無料公開されている。)

 

変質者をつくるのはミニスカートなのか

 

主人公の神山仁奈は、黒髪を短く切り、高校の制服もスラックスを選び、まるで男子生徒のような姿と言葉遣いで、クラスメイトから変わり者扱いされている。

しかしその正体は、人気アイドルグループPURE CLUBの元センター・雨宮花恋だった。

花恋はあるとき握手会で起きた傷害事件をきっかけに、突然アイドルを引退してしまっていたのである。

 

物語は、なぜ仁奈(花恋)がアイドルを辞め、男装して生きることを選んだのかという過去の話と、仁奈の通う高校で起こる男子と女子のズレや女子同士の衝突という日常のストーリーを描きながら、その街に忍び寄る変質者の影(それは花恋を襲った犯人かもしれない)というサスペンス、そして仁奈の恋を軸に話が進んでいく。

 

ページをめくる手がはやるほどエンターテイメント要素も豊富なのだが、そのところどころに、世の中にはびこるジェンダーギャップが描かれていく。

 

「お前らもさー 変質者怖がってるくせに なんでそんなスカート短けーの?」

「女使って男釣って儲けてんだから恨み買われて当然だろ」

「ブスに限って痴漢怖いとか騒ぐからさーっ」

 

そう。私たちもしょっちゅうそんなこと言われてきた。

のこのこ酒飲みに出かけてるんだからやられたって仕方ない。

体のラインを強調する服を着てたら襲われたって仕方ない。

女らしくしろ。いや女を出すな。

愛想よくしろ。いや媚を売るな。

そして何があっても「自分が悪い」と思わされてきた。

 

このマンガはそんな私たちの罪悪感をひとつひとつ解きほぐしてくれる。

「自分が女だから」という罪悪感を。

 

このマンガに関係のない女性はいない

おもしろいのは、仁奈の敵役にあたる長栖未玖というキャラクターだ。

未玖は常に男性に都合のいい価値観を提示しながら可愛らしい言動を続け、男子生徒に「男の理想!」ともてはやされている学校のアイドル的存在で、自身が変質者に会ったときにも、

 

「もーっ みんな大げさっ! たかが太ももだよぉ?」

 

とにこやかに笑い飛ばす。

 

ときとして女子たちに疎まれ嫌われながらもそのスタンスを貫き、裏では仁奈の恋の邪魔をしたりもする。

まあ、その辺によくいる「女に嫌われる女」をぎゅっと煮詰めたような存在なのだが、しかしその未玖の心の陰影さえも、このマンガは救い上げる。

 

「私は何も与えてやらない この世界を利用して 奪う側に立ってるだけよ」

 

こんなマンガが少女誌に、しかも『りぼん』に載っていることに驚いた。

当初のキャッチコピーが

 

「このまんがに無関心な女子はいても、無関係な女子はいない。」

 

だったように、これはすべての女子に、いや男子にも、というか大人だってハッとさせられるような社会的なテーマが描かれている。

異例の大ヒットを飛ばしているらしく、このまま連載が続けば、きっと少女マンガの歴史に刻まれる作品になるだろう。

 

しかし2019年6月号掲載の第7話以降、この作品は休載しているらしい。ちょっと心配だが、

 

「このまんがに関しては、何があろうと、読者のみなさんに面白さが伝わるまで、連載をし続けていきます。それくらいの覚悟を示せるまんがと出会ってしまったのです。」

 

というりぼん編集長・間氏の言葉を信じて待っていたい。