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処女と引き換えに少女が得たモノとは?過酷な世界に身を置く彼女が追い求めた『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』
レビュー執筆者:いづき

 

ヒューマンドラマ『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』

 

会田薫先生による、『写楽心中 少女の春画は江戸に咲く』の1巻が発売されました。

 

・15歳が春画を描くという話

 

ざっくり言うと、15歳の少女が春画を描いて世に出ていくというお話。

 

物語の主人公・たまきは、天才浮世絵師・写楽の娘。吉原の遊郭にいたところを、浮世絵版元である二代目・蔦屋重三郎に身請けされ、以降彼の元で自由に絵を描き暮らしていました。

 

重三郎の営む耕書堂が衰退しつつある中、状況打開の策として打って出たのが、たまきに、人気が高まっていた”春画”を描かせること。しかしたまきは、男も知らぬ15の少女。果たしてたまきは天才ひしめく浮世絵界で、その才能を開花させることができるのか……というお話。

 

 

・コメディではなく超シリアス

 

美少女がエロ漫画家だったり、小学生がエロ本屋で働いていたり、女子高生が官能小説家だったりと、本来エロとは最も遠い場所にいるはずの若い女子が、その業界に身を置いている……というのは、漫画の世界では割とよく目にする設定ですが、その多くがコメディとして描かれている印象があります。

 

本作もてっきりそんな系統の作品かと思っていたのですが、全然コメディじゃなかったです。むしろめちゃめちゃシリアスですし、なんならちょっと暗い雰囲気です。

 

幼いたまきを引き取って自由に絵を描かせる重三郎は、そこだけ切り取ると「良い人」のような感じがするのですが、それはあくまでもビジネスのため。処女であるがゆえに血の通った春画が描けないことを見抜いた彼はたまきに、男に抱かれてこいと命じ、逆らうことのできないたまきは、実際に幼馴染に抱いてもらうんですよね。別に好きでもない男に

 

いやぁ、いきなりめちゃくちゃハードです。少女に春画を描かせるってだけでなかなかブラックなのですが、「抱かれてこい」ですから。

 

重三郎は、たまきが自分に好意を寄せており、また身請けしてあげた立場であるために、命令に逆らえないことをしっかり理解した上で仕向けているわけですから、あくどいですよ。細目で眼鏡で無表情と、たたずまいからして冷徹な雰囲気なのですが、その見た目を裏切らないスパルタっぷりにドン引きです(私が)。

 

それでもたまきは、そのつらい経験を糧にして、見事に素晴らしい春画を描きあげるんですね。

 


 

現代だったら成り立たないし、なんなら虐待的に扱われるであろう事案を、こうして時代背景を上手く使って物語に仕上げてしまう。このへんのさじ加減が上手。そういえば会田先生は『梅鴬撩乱』でも高杉晋作と、彼の愛した芸者との恋物語を濃厚に描いておりましたが、本作も実在の人物や団体をベースにしつつ、恋愛交えた濃密な時代もので、得意とするパッケージなのかもしれません。

 

たまきの作品が世に出たところで1巻は終了。1巻は自身の置かれた立場や出自、近くにいる人達との関係など、比較的狭い世界で展開していましたが、2巻以降では外の世界にいる売れっ子浮世絵師たちが相手になるわけで、もう一歩広がりを見せてくれることでしょう。

 

また春画は、1枚の絵ながらその背景には色々な物語が見え隠れしており、浮世絵師の人生経験が反映されるものとして描かれています。ゆえに、売れっ子になるためには、単にスキルを磨くだけでなく、彼女自身の人生経験の深まりというのが重要になってくるわけで、そちらの方面でも物語の進展が望めるのではないでしょうか。

 

なかなか見られない題材・展開の作品なので、果たしてどういった落とし所になるのかなかなか想像つかないですが、いずれにせよ骨太で濃密な物語をきっと見せてくれることでしょう。誰向けかと言われるとよくわからないのですが、無視しちゃいけない存在感と読み応えですので、気になったら”読み”の一手あるのみです。要注目。

 

 

 

 

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