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中2が、銀の弾丸を放つ拳で、魔物と語り合うゆうべ『ブラス・ナックル』

今の漫画は長すぎる、と感じたことはないだろうか。 50巻越えは珍しくなく、流行っている漫画の多くは10年を超える長期連載ものだ。面白いことが長く続く、贅沢な悩みだが、大人の娯楽は漫画だけではないし、子供も長すぎる漫画に飽きている。

 

短い期間で終わり、爽快な痛快な気持ちになれる。そんな、読みごたえのある漫画を読みたいと言ってきたら、

 

私はこれを薦める『ブラス・ナックル』(著:技来静也)だ。

 

 

“西部開拓時代”   “黒人”   “ボクサー”   “KKK”

この単語だけでイメージすることは何であろう。人種差別で迫害され、KKKのボクサーに殴られる哀れな黒人といったところだろうか。

 

ただこれに、

“無法者”  “魔物狩り”  “銀の弾丸”  “メリケンサックに仕込み銃(ブラスターナックル)”

なんて単語がはいってきたらどうだろうか。

おそらく困惑するはずだ、前後の関係が想像できないと。だが、この単語を全て足すと“理解”はできる、ただし“納得”できるかは別の話となるのだが。

 

 

つまりこうだ。米国 西部開拓時代、元ヘビー級 巨漢の黒人ボクサー<ヴィクター・フリーマン>が幼き頃、白人至上主義団体のKKKに両親を惨殺された。しかし、KKKは、黒人を殺すだけでなく、食べていた。しかしそれは、ある種の人種平等であり、選り好みすること無く黒人以外の人間も、魔物の餌として食べていたのだ。人に擬態した魔物は、人間社会に溶け込み、多くの移民として米国に魔物も移民していた。

 

 

 

ヴィクター・フリーマンは、2メートルを超える巨漢の元ヘビー級ボクサーだ。

巨漢にもかかわらず、黒人種特有のしなやかな筋肉から繰り出される拳は、まさに鈍器。秒速を超える鈍器で蜂のように刺し、蝶のように舞いステップを刻み、魔物を翻弄する。捕食される“餌”であった人間に、反撃すらできず打ち倒され狩られる。魔物は、殴られる“衝撃”を感じる刹那、死をもたらす“銀の弾丸”が拳のブラスターナックルから放たれ、“銃撃”も喰らい息絶える。残ったのは人間の姿に戻った死体。

だからこの作品の主人公は、常に追われる<無法者>なのだ。最も差別が激しい中で行う、白人殺しというタブーを堂々と行う恐怖の対象として。

だが、ヴィクターは、あらゆる危険に屈せず、威風堂々と己を全面に出し、たくみに人に紛れ潜む魔物を狩っている。

 

 

 

過去を紐解いてみると、ボクシングものに名作は多い。

また、魔物狩りものにもハズレはない。

この二つのジャンルを組み合わせることは、必然の面白さなのだ。つまり“面白い×面白い”を掛合わせ、その論理によって生み出された漫画が『ブラス・ナックル』だ。

 

著者の 技来静也氏 は、サービス精神を旺盛で、凡庸さに埋もれまいと多くの魅力をこの漫画に散りばめている。個性的なキャラクター。圧倒的な強さを誇る魔物を倒すための武器は、遊び心に満ちている。そして、そのギミックを巧みに使い、ケレン味溢れる演出で読者を魅了し、剣とも銃とも違う方法での新たな戦い方で魔物狩りを成立させている。

 

 

ここまでインパクトがある内容となると、連載を長く続けることは必ずしも名作たる条件ではない、と思う。

短く太くそれも一つ心残る一作になるのだ。だからこそ、この物語は、人種差別という理不尽、人食魔物が闊歩する不条理、組織からの離反と、それらに頑然と立ち向かう孤高の無法者(アウトロ-)の姿を描き、読むものを中2こころ全開にさせてしまうのだ。

 

 

こんな人におすすめ

【中2心がある人、一味違ったヴァンパイア・ハンターものが見たい人、弱者が強者に勝つ話が見たい人、】

 

試し読み

https://booklive.jp/product/index/title_id/534634/vol_no/001

 

 

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著者:技来静也
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ブラス・ナックル 2 (ジェッツコミックス)
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