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性の残酷さと醜悪をありったけ詰め込んだ『ハッピーシュガーライフ』が伝えたかったこととは?
レビュー執筆者:たまごまご

 

ヒューマンドラマ『ハッピーシュガーライフ』

 

・女子高生と幼女の残酷な逃避行、完結

 

アニメ化もされた『ハッピーシュガーライフ』の9巻と10巻が同時発売され、完結を迎えた。

 

幼女誘拐。教師の未成年淫行。少年の監禁。友人の殺害。レイプ。DV。かわいい絵柄で、地獄を詰め込んで描いた作品だ。

 

この機会に是非作者インタビュー記事も目を通してみてほしい。

 

高校一年生の松坂さとう。空っぽな日々を送っていた彼女は、最愛の人を見つけ、生活が一変する。その相手は、幼い少女しお

 

さとうが住んでいる家で、連れてきたしおと二人暮らし。学校やアルバイトに行っているときは、しおは外に出ないで留守番をしている。しおもさとうのことが大好き。二人はいつも誓いあっていた。

 

しお「しがふたりをわかつまで私はさとちゃんが大好きなことをちかいます」

 

悲惨な状況に追い込まれる人間が沢山でてくる。登場人物たちは誰かを苦しめ、あるいは誰かに苦しめられる。ほぼ全員に、救いは訪れない。

 

最後に物語はどう転ぶのかと思いきや、結果だけ言うと、何一つ社会的正義にかなったことは起きない。全部崩壊してしまう。

 

作品のタイトル「ハッピーシュガーライフ」は、心の中の「甘い」を満たして生きたいと願う、さとうの心を表したものだった。そのため、さとうとしお2人きりのパートは、世の中のあらゆる苦さから切り離されていて、かなりふわふわと浮世離れしている。

 

たとえば2人が住んでいた部屋から逃亡する際、さとうがしおからもらった指輪を忘れるシーンがある。ここで戻れば2人の逃亡は失敗し、殺される可能性が出てくる。なのに、しおの勧めで2人は、部屋に戻ってしまう。

 

心の中を何もかも甘いもので満たす選択を続ける2人。結果、周囲からは追い詰められていくハメになる。理にかなっていない行動を重ねながらも、2人の心は幸福感で満ちていく。

 

結末はハッピーエンドとは言えない。2人の行動は正しくもない。迷惑がかかった人もいる。あえて理不尽を描く展開は、見る人を選ぶところだろう。しかし、2人の心が「甘いか苦いか」を追っていくと、2人が閉じこもる破滅の甘美さがくっきりと見えてくる。

 

この歪んだ魅力に気づいたら、とことんまで読者をのめりこませる魔力のある作品だ。

 

すごい勢いで人々の苦痛が畳み掛けてくるこの作品、10巻一気に読めるので、通して読んでみてほしい。アニメとマンガ、どちらからでも楽しめます。

 

 

ハッピーシュガーライフ(10)(完) (ガンガンコミックスJOKER)
無料試し読み
著者:鍵空 とみやき
出版社:スクウェア・エニックス
販売日:2019-07-22

 

 

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