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まるで劇場映画のようなインパクトと充実感。短編集『つきのもと』が規格外の面白さだった。

“まるで1本の劇場映画作品を観終わった後の感覚だ”

 

私自身が初めて『願いの境』という読切作品を読み終えた時の感想がこれでした。

 

『願いの境』という作品は漫画家・月本千景の初持ち込み投稿作品の読切だったのですが、読み始めてすぐに感じたのは“あれ? これページ数多いな? まだ終わらない?”というページ数の多さでした。

 

後から(単行本の巻末コラムなどで)知ったのですが“ページ数無制限”という賞の性質から読切とは思えないほどの大ボリュームとなっていました。

 

そのページ数、なんと164ページ!!

 

読切作品ですよ!?

 

ほぼ単行本1冊分に近い描きおろしの読切作品が初投稿作品って……さぞや原稿を受け取った編集部では大騒ぎになったことでしょう。

 

実際に読んでみるとそのページ数の多さ以上に、登場人物やドラマの展開や謎にグイグイと引き込まれていく。

途中からは「ああ、終わるな、まだだ、もうここまで来たら最初に貼られた伏線まで回収してくれ! え?あ、やっぱり! ちゃんと回収してくれるんだ、良かった! え?まだあるの? この先が? まだ読ませてくれるの? 嬉しい!」といった感じで、最後の最後まで夢中になってしっかりと読ませてくれる作品でした。

 

そして読み終えた後の感想が冒頭の“まるで1本の劇場映画~”となるわけです。

 

『願いの境』という作品の時代背景やジャンルが日本刀(妖刀)や時代劇ということもあって、さながら大河ドラマを2時間に凝縮して観ているような感覚でした。

 

 

©Chikage Tsukimoto/Cork

 

©Chikage Tsukimoto/Cork

 

 

 

素直に面白い。

 

そして読んで良かった。

 

読者の期待に応える要素と、それを裏切り驚かせて感動させるバランスが実に心地よい。

 

読切作品ということもあって、何の準備も無しにパッと読めるところが良い。

 

とはいえ「164ページかぁー」と思われる方もいるかもしれませんが、漫画家・月本千景の作品は長編だけではありません。

 

というのも、この作品『願いの境』は『つきのもと』という短編集に収録されていて、『遠距離こうかんノート』『春は秋のカゲロウ』と合わせて3作品を楽しむことが出来るようになっています。

 

『遠距離こうかんノート』は48ページ。

 

『春は秋のカゲロウ』は50ページ。

 

いわゆる一般的な読切作品として妥当なページ数になっています。

 

まあ、この『つきのもと』という短編集が、3作品+巻末コラムという収録内容なのに285ページという恐ろしいサイズのお得感溢れる本になっていますのでやっぱりイビツではあるのですが。

(そもそも164ページもある読切を短編と呼んでいいのか)

 

けど、ページ数なんか関係ない。

 

長くても中身が無い作品だってあるし、短くても凝縮された面白さを持つ作品だって存在します。

 

漫画家・月本千景の『つきのもと』収録作品はどれもキチンと意味があるページ数で描かれていて、なおかつどの作品もちゃんと面白く、他の誰にも似ていない。

 

サッと読んで楽しむには最適の1冊です。

 

そして、いつまでも心に残り続ける1冊です。

 

 

 


*:画像は著者ご本人よりご了承いただき掲載させていただいております。

つきのもと (コルクインディーズ)
著者:月本千景
出版社:コルク
販売日:2019-08-31