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ある日突然、連載中の人気漫画家が死んだら…? 言語化しきれないマンガの面白さと向き合った、サスペンスコミック『ミリオンジョー』!
表紙の絵も、設定も、あらすじも自分好みで、「絶対におもしろそう!」と思って読んだ漫画が、なんだか面白くない……。
大好きなあの漫画と似ているのに、こっちの漫画は全然面白くない……。
漫画を読んでいて、こういった正体不明の違和感を感じたことがある人は、少なくないのではないでしょうか。
 
正体不明の違和感と正面から向き合い、漫画のおもしろさとは何なのかを探求するのが、今回ご紹介する『ミリオンジョー』という作品。
少年誌の編集者が主人公の物語です。
ただし、この物語の主人公は、『重版出来』の黒沢のような情の厚さも、『バクマン。』の服部のような熱血さも持ち合わせていません。
 

やる気のない主人公を待ち受ける試練とは…

主人公の呉井聡市は、「週刊グローリー」の編集者として働く28歳。
入社3年目にして、看板作品として国民的人気を誇っている『ミリオンジョー』の作者・真加田の担当編集を務めています。
 
 
 
ⓒ十口了至・市丸いろは/講談社
 
 
 
天才との呼び声も高い、真加田の原稿は常に完璧で、呉井の出る幕はありません。
呉井の仕事は、原稿を真加田から受け取り、製版所に渡すだけ。
呉井は、真加田が人とのコミュニケーションを極端に嫌うことも相まって、彼と打ち合わせをすることもありませんし、
そもそも『ミリオンジョー』をまともに読んだことすらないのです。
 
そんなある日、呉井は真加田から「心臓が痛い」と訴える電話を受け取ります。
呉井は、締め切りを伸ばすための仮病だろうと、はじめのうちは電話を無視するのですが、
いよいよ原稿が落ちてしまうという段階になって、真加田のもとへ向かいます。
 
 
 
ⓒ十口了至・市丸いろは/講談社
 
 
 
ⓒ十口了至・市丸いろは/講談社
 
 
 
 
ⓒ十口了至・市丸いろは/講談社
 
 
 
 
ところが、時すでに遅し。
呉井が駆け付けた時には、すでに真加田は亡くなっていたのです。
『ミリオンジョー』連載終了によって失う利益の大きさ、人気漫画家の急死という世間への影響、読者の期待……
さまざまな不安がよぎり、呉井は、真加田の死を隠蔽し、『ミリオンジョー』の連載を継続する決意を固めます。
 
 

絵もストーリーも完璧なはずなのに…

真加田の遺体を葬ったのち、呉井は『ミリオンジョー』の連載を続けるための作戦を考えました。
それは、真加田の創作ノートをもとに呉井がネームを書き、長年真加田のチーフアシスタントを務めていた寺師が作画する、というものです。
 
真加田の創作ノートには、『ミリオンジョー』の結末までのシナリオやキャラクター設定がビッチリ書き込まれていました。
寺師の絵は完全に真加田の絵柄をコピーできていたので、案外簡単に連載が続けられるように思われました。
 
ところが、彼らが手がけた『ミリオンジョー』は、「週刊グローリー」の読者アンケートで大きく票数を落としてしまいます。
ストーリーも、絵も、真加田のものとは見分けがつかないのに、彼らの『ミリオンジョー』は、何かが違っていました。
 
『ミリオンジョー』の読者や、「週刊グローリー」の作家たちは、「ストーリーは盛り上がっているはずなのに、何故か面白くない」「説明できないけれど、いつもと何かが違う」という違和感を異口同音に話すのです。
 
このままでは、連載を続けるどころか、『ミリオンジョー』の作品に泥を塗ってしまう――。
果たして、呉井たちは、正体不明の違和感を解消し、無事に連載を続けることができるのでしょうか……?
 
 
この作品は、「担当編集が作家の死を隠蔽して連載を続ける」というトリッキーな設定ですが、だからこそ絵柄やストーリーだけでは説明できない「漫画のおもしろさとは何か」のという命題の核心に触れているように感じました。
漫画好きを自負する方には、ぜひ一度読んでいただきたい作品です。
 
 
♪コヤマの勝手にテーマソング♪
THE YELLOW MONKEY――天道虫
 
 
 
ミリオンジョー(1) (モーニング KC)
無料試し読み
著者:市丸 いろは
出版社:講談社
販売日:2013-07-23

TVドラマは2019年10月9日(水)深夜1時35分スタート!(テレ東系)

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