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アニメ『ギヴン』のライブシーンが衝撃的すぎてマンガを全巻読んだら魂が揺さぶられるほど強い恋だった

 

そろそろ秋アニメの情報が出始める今日この頃。

夏クールのアニメ、どれがよかったですか?

私は間違いなく『ギヴン』でした。

 

 

ノイタミナ」初のBLアニメとうたわれて始まったアニメ『ギヴン』

ギターがうまくて、ライブハウス界隈ではちょっとした有名人の上ノ山立夏が、同級生の佐藤真冬の歌と出会って、立夏がそれまでバンドを一緒にやっていた大学生の春樹秋彦と、それまでとはちょっと違う音楽をやりはじめる、という青春バンド群像劇です。

 

アニメが始まった当初からOPがすごく好きで、毎週欠かさず楽しみに見ていたのですが、BL云々以前に、スタジオでのセッションのシーンとか、とにかく音がいいな、と思っていました。

(そういえばノイタミナは『のだめ』に始まって、『坂道のアポロン』『四月は君の嘘』など、音楽アニメに強いような気がします。)

 

 

そんななかでの第9話の初のライブシーン。

私は、ギターではありませんが、学生時代に弦楽器のオーケストラに入っていたことがあります。初めて仲間の舞台を観客として見に行ったとき、心臓にダイレクトで響いてきたあの感じを覚えて、見ながらはらはらと泣いてしまいました。

 

毎週欠かさず見ているアニメを深夜に見て泣いたのは『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』以来だったような気がします。

 

原作の話をしたいので深くは掘り下げませんが、男の人が楽器を演奏するかっこ良さを余すことなく描ききったアニメーションと、2コーラス目からの真冬の心の叫びは、歴史に残る名シーンだったと思います。

 

 

そんなふうに心臓を鷲掴みにされたまま、私はいそいそと原作既刊5巻を買いにいったのでした。

 

 

音楽のはなし

『ギヴン』はBLマンガですが、それ以前にバンドマンガです。

人が楽器を弾いているときって、最低でも普段の3割増しでかっこよく見えるんですけど、作中で楽器を弾いている彼らがめちゃくちゃかっこいいんですよね。

 

彼らはほんとにみんな音楽が好きで、いい曲を作りたい、演奏したいと思ってやっているし、だからぶつかることがある。

 

そこに恋愛感情が絡むのが、面倒くさいといえば面倒くさいんですが、バンドとか、一緒に音楽をやる仲間って、そもそも自己の我があってとても面倒な、それでいて大切な仲間だってことを思い出させられました。

 

学生時代に音楽をやっていたときも、本当にいろんな面倒なことや、うまくいかないことがたくさんありました。

煮詰まったり、嫌になったりすることもあったんですけど、コンサートになると雲が晴れるみたいに全部が報われたみたいな解放感がありました。

そういう尊い瞬間が、とてもきれいに描かれています。

 

そういったところで、『ギヴン』はとても真剣に音楽と向き合っている作品です。

学生生活を音楽にかける熱量を感じました。

 

 

恋のはなし

BLマンガってエロ枠になることが結構多いような気がするんです。実際そういうシーンがあるものも多いですし。

 

ただ、『ギヴン』についていえば、主人公の上ノ山が「これは認めていい感情なのか」と悩む瞬間以外、あまりそのことについて深く良いとも悪いとも出てこなくて、とても自然な恋の話になっているんです。

 

「気づいたら好きになっていた」をこんなに自然に、こんなにきれいで切なく描けるもんなんだなと思わされました。

もはや少女マンガ、いや、少女マンガでもこんなに叙情的なものはそう多くないと思います。

 

人を好きになることで、ちょっとしたことで嬉しくなったり、苦しくなったり……。

そういったことをものすごく自然に、それでいて痛烈に描いてくれています。

 

「この人を好きになれたらいいのに」

「この人を嫌いになれたらいいのに」

そういう替えのきかない感情の苦しみに、登場人物全員が真っ向から向き合っていて、読んでいて何度も泣きそうになってしまいました。

 

 

喪失のはなし

真冬は、過去に大切な人を失っていて、それが真冬の歌や音楽を形作る大きな要素になっています。

米津玄師「Lemon」が亡くした祖父を思って書かれているように、大きな喪失から生まれるものは得てして人の心を揺さぶります

 

きっと、私たちは日々いろんな選択をして生活をしていくなかで、大小は様々でも、何かを取りこぼしたような気持ちで生きているだろうな、と思います。

そういった喪失感を大きな喪失の物語がすくい取ってくれるんだと感じました。

 

この喪失は『ギヴン』というタイトル、そして4人が結成するバンドの由来のひとつにもなっています。

『Given』は、「与えられた」という意味ですが、失ったことで与えられたものだったり、生まれながらにして与えられたものだったり、いろんなところでキーになる言葉になっていると思います。

 

マンガ『ギヴン』とアニメ『ギヴン』

私は先にアニメを見て、あとからマンガを読んだのですが、マンガを読んで、正直「これがこうアニメになるのか」とびっくりしてしまいました。

もちろん話は同じなんですが、こことここをこう組み合わせたり、順番を変えたりして、あのライブシーンに持って行ったんだ、と思う場面がたくさんあって、これは両方見ないとだめだと思いました。

 

マンガだけでもアニメだけでももちろんいいんですが、これは両方見るともっと生きるし、私はマンガを読んだ今最初から全部見たくなっています。

 

マンガを読んだことがある人にアニメを見てほしいし、アニメから入った人にはぜひマンガを読んでほしいです。

「ここがこうなるのか」「ここはこういうことだったのか」と、きっとなると思うし、そのどっちらもが『ギヴン』です。

 

アニメのほうがいい、マンガのほうがいい、ではないんです。

ここをこう繋げるとこういうふうに見えてくるんだな、というのがたくさんあって、いろんな角度から4人や周りにキャラクターの心の動きが見えるようになっています。

 

『ギヴン』は音楽マンガとしても、恋愛マンガとしても魂が揺さぶられる作品です。

 

大切な人がいる人、大切な人と離ればなれになってしまった人、音楽を愛している人、BLに触れたことがない人、本当にいろんな人に触れてほしい、そんな作品です。

 

 

ギヴン(1) (ディアプラス・コミックス)
著者:キヅ ナツキ
出版社:新書館
販売日:2014-11-29

 

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