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金獅子賞の映画『ジョーカー』を鑑賞する前に読んでおきたい『バットマン:キリングジョーク』がとても恐ろしい

 

 

映画『ジョーカー』がベネチア国際映画祭で最優秀賞である金獅子賞に輝いた。アメコミ映画としては史上初の快挙となる。

 

主演のホアキン・フェニックスの怪演やロバート・デ・ニーロの出方など気になる部分だらけのこの作品。
ひとりの男がいかにしてジョーカーとなっていったかが語られる。

 

ジョーカーといえば、映画『ダークナイト』のヒース・レジャーや映画『バットマン』のジャック・ニコルソンの狂気がたっぷりの伝説的演技が語り草だが、今回も伝説を目の当たりにすることができる機会となるであろう。
日本では10月4日公開。
そんな新作を鑑賞する前に読んでおきたいのがこちら。

 

『バットマン:キリングジョーク 完全版』

 

はっきり言ってこのコミックは魔書である。

 

正しきものがガツンと勝利して、輪になってたたえあうようなストーリーを好む方には気分がよろしくないものとなるであろうし、なにがしかの野心を持っていて人をあっと言わせたい方には甘美な毒物となるものがありまして。

 

妻が妊娠中の売れないコメディアンがいかにしてジョーカーとなったのかが語られる本作。

 

ジョーカーになる前のその男は、化学工場の研究所で助手をつとめていたが職にあぶれてしまい、コメディアンとなる。
子供が生まれる前にもっとマシな場所に引っ越したいがどうにもうまくいかない。

 

そこで持ちかけられたのが、奇妙な赤いマスクをかぶっての強盗計画だった。

この作品の恐ろしいところは、慈悲も容赦もない狂気の結晶体であるジョーカーがいわゆる家庭人であったという原点にある。
そして、そのジョーカーが語りかけてくる。

 

「世界が絶望に埋もれちまって、あたりじゅう悲鳴ばっかりの時も……起こる事件は飢餓に戦争、汚職に強姦……何もかもイヤになる時も……自分だけはニッコリ笑って楽しく過ごせる秘訣があるぜ!」とジョーカーワールドに誘ってくるのだ。

 

まるで作者がジョーカーの力を借りて誘い込んでくるように。

 

 

ジョーカーほどではないにしろ、「自分(たち)だけは楽しくやろうよ」という向きの話は、犯罪だけでなくエンタメやビジネス、レジャーからショッピング、フード産業にいたるまであらゆる分野に通じる部分が存在する。

 

また、ビジネスやクリエイティブ分野にいたってはこのジョーカー的なセンスや才能を持った人物がいい意味で世界中をあっといわせて周囲をけん引している部分もあったりする。

 

そういった意味で単純な善悪の話だけではない恐ろしい輝きを持った話がこの『バットマン:キリングジョーク』の中に詰め込まれている。
お読みになる際は、くれぐれもご注意を。

 

また、映画『ジョーカー』はこういったコミック版とはまた別にストーリー構築されているとのことなので、比較の意味で鑑賞前に読んでおく一冊としておすすめしたい。

 

ちなみに「一度だけ、ムチャクチャ悪い事をしたい」と市民が読者に語りかけてくるもうひとつの話も入っているのだが、なんだかジョーカーよりこえーな、と私は震えあがってしまった。伏兵もいいところで。
このコミック、もうヤバすぎです……。

 

 

バットマン:キリングジョーク 完全版 (ShoPro books)
著者:アラン・ムーア(作)
出版社:小学館集英社プロダクション

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