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死刑制度に反対ですか?賛成ですか?を『モリのアサガオ 番外編』読んだあなたに改めて問いたい
モリのアサガオ番外編 (アクションコミックス)
無料試し読み
著者:郷田 マモラ
出版社:双葉社
販売日:2010-11-27

 

マンガ新聞の前身である「マンガHONZ」で取り上げた『モリのアサガオ』、その番外編は、改めて私たちに死刑制度の賛否を問うものだ。

 

重大な事件が起こったとき、ワイドショーなどでは時折、死刑制度についての議論が巻き起こる。それを見ても、私たちは日常の友人や知人と死刑制度の賛否について話をすることはほとんどない。

 

しかし、それでもなお死刑制度は私たちの身近な問題として考え、語られなければならないものであると、本書は訴えているのではないか。

 

前作『モリのアサガオ』のときにはこう書いた。以下。いくつか引用をしながら進めて行きたいと思う。

突然ですが、あなたは死刑制度に賛成ですか?それとも反対ですか? その回答と理由をtwitterやfacebookで周囲に伝えられますか。時々、テレビから死刑が執行されたニュースが流れますが、死刑制度の是非について多くのひとは意見を闘わせたり、議論したりすることはないでしょう。センシティブな問題ではありますが、身近な問題として捉えるにしては重いテーマでもあるからです。

 

遺族からすれば、犯人に死を持って償ってもらいたいという気持ちを持つのは想像に難くない。自分自身がその立場であれば、おそらくパニックとともに、その怒りと悲しみは同じ苦しみを与えたいというところでしか消化され得ないのではないかと思うからだ。

 

しかし、加害者および加害者家族、遺族といったある事件に無関係であった場合、死刑制度の賛否を決める観点は個々人によってかなり異なるだろう。

本書でも取り上げられるケースのなかには「冤罪」「冤罪だが誰かをかばう」「責任能力の有無」といったものもある。

 

ある日突然、何かの事件の加害者とされることが私たちにもあるかもしれない。

 

死刑制度の賛否には、この冤罪リスクをどの程度見込むのかが、その意思決定に大きな影響を与えるのではないだろうか。

 

先輩刑務官は言います。

「及川よ・・・これは組織の威信を保つために犯人を無理矢理作りあげなければならなかった警察機構と、ロクに再審のための資料も見直さず、冤罪者を何十年も死の恐怖にさらさせ続けた裁判所、つまり冤罪は司法制度そのものの犯罪なんや!!」


拘置所で勤務する及川直樹は、死刑囚と向き合い始めてから数年を迎えても、なお死刑制度に揺さぶられている。死刑が確定した当初は、罵詈雑言を吐き、ときに粗暴に振舞う人間も、罪と向き合いながら心穏やかに「その日」を迎えるようになる。

 

そんなとき、及川直樹は死刑囚の穏やかな人間らしさに触れ、自らも落ち着いた気持ちとなる。

 

しかし、死刑執行がなされた際、拘置所にいる死刑囚が心を乱し、身体を痛めつけ、他者に危害を加えようとするようになると、彼自身もまた不安定となり、涙を流す。

 

刑務官の彼にとって、最も長く心を通わせ、友人であり、メンターでもある死刑囚・渡瀬満は、死刑囚と向き合う日常において特別な存在として描かれる。

 

突然、両親を失い、野球という希望を絶たれ、事件を目の前で見た妹は失語症に。幸せな家族生活は一瞬で崩れた。渡瀬満は犯人への復讐に人生を捧げ、仇討ちを成し遂げる。

 

彼の行為を糾弾する人間と、彼をヒーローと崇める人間に世論はわかれるが、判決は死刑であった。

 

前作の本編では、及川直樹と渡瀬満の関係性がメインストーリーであるが、番外編での渡瀬満は、それぞれの死刑囚とのかかわりに戸惑い、ときに喜びを見出す及川直樹の心の振れ幅を測る定点の役割を担う部分が大きい。

 

死刑執行を前に犯した罪を認め、反省し、執行直前に穏やかな表情を見せることがあります。死刑確定囚がその境地に至ることができたもの死刑制度があったからであると、その必要性を認めます。

 

また、理不尽に命を絶たれた被害者やその遺族たちの悲しみや怒りを少しでもやわらげることや、死刑制度の存在そのものが犯罪抑止につながるため不可欠な制度であるとの結論も導かれます。

 

その一方、死刑制度への疑問や明確な反対の立場に大きく触れることもあります。例えば、死刑執行の職務にあたった刑務官の精神が破壊されてしまいました。死刑制度は執行人を必要とし、国家の命令であっても、人を処刑するということは人間を壊わることであると言っています。

 

冤罪によって何十年も拘置所に入れられていた元死刑確定囚や、本人は罪を認めていないにもかかわらず、死刑執行となってしまった話も出てきます。

 

特に、十分な証拠もなく、自供自白を根拠に死刑判決をくだされたものの、その当時では難しかったDNA検査によって無実が証明された話などは、死刑制度の存在が多くの冤罪死刑囚を出すことにつながると批判しています。

 

番外編では、死刑囚の「これまで」や心の葛藤に加え、拘置所の外側にいる遺族にもスポットがあてられている。

遺族としての苦しみ、執行されない刑罰に対してメディアを通じて悲痛な思いを告げている姿は、私たち自身がその立場になったとき、とても共感しやすい。

 

一方、死刑囚はその生活のなかで罪の意識を再確認し、贖罪の日々を送っているが、遺族にその姿は届かず、唯一それを知っている刑務官らは、悔い改めた姿が遺族に届かないことにジレンマを感じている。

 

まさに、死刑制度の賛否を考えるにあたって、現行の制度設計そのものを私たちは学ぶことができる。

及川直樹は常に死刑制度に対するポジションが不安定となり、それは私たちが死刑制度への賛否の立場に分かれて議論することを、彼自身の心の中の葛藤として、ひとり結論を導き出そうともがく姿が描かれている。

 

『モリのアサガオ』は、本作である番外編を含めて、死刑制度をさまざまな視点で描きながら、私たちに死刑制度そのものを考えるきっかけを与える。

 

刑務官、死刑確定囚、被害者と遺族、加害者家族。検察や弁護士、裁判官、そして私たちは死刑制度とともに生きている。

 

だから、改めて問いたい。

あなたは死刑制度に賛成ですか? それとも反対ですか?

 

 

 

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