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大英博物館がマンガをアートと見る為に大切にしたこととは?

8月26日、3か月に渡って開催された大英博物館「マンガ展」がフィナーレを迎えました。
この話題の展示会を家族とともに、ギリギリで観に行くことができました。

漫画の歴史や文化的系譜から、現代のデジタルのコンテンツとしての漫画、アニメ・ゲームへのメディアミックス的な展開まで、縦横無尽に拡がる漫画の世界が素晴らしくまとめられていました。

感動はいくつもありましたが、あえて自分が最も気になった「アナログな紙媒体としての漫画」について書くことにします。

アナログを語るためのデジタルについて

現在、世界中でデジタルコンテンツとしての漫画マーケットは毎年広がりを見せています。

その理由は明確です。手軽に何冊でも持ち運べて、漫画の保管場所に頭を悩ませることなく、漫画読者として、とても便利だからです。
自分もKindleとkoboを各3台持っておりまして、iPad、iPhone、MacBookのアプリでも年間相当な量の電子書籍を買い込んでいて、どこでもいつでも読める幸せを享受できています。

 

デジタルでぐっと便利になった漫画では、ストーリーの消化の仕方、情報のインプット方法として最高だと思っています。
しかし、渡英して面会した大英博物館「マンガ展」のキュレーターのお二人がフォーカスされていたのは「アナログな漫画」のほうでした。

 

 

キュレーター的視線の先には

マンガ展のキュレーター、ニコル・ルーマニエールさんと内田ひろみさんにお話を伺う機会に恵まれました。
お二人が「アナログな漫画」に注目された理由は「漫画家さんは見開き前提で紙面を計算して作画、コマ割り構成をしています。その表現の意図を汲むことが大切だと思っています」とのことで、作者により近いアナログな紙の漫画が大好きなようでした。

漫画家さんのコマの割り方や原画の線のニュアンスなど、「人が描いたことを鮮明にイメージできるアナログ性だから、作者との対話が可能になる」という点を重要視されていました。

 

特にニコルさんが重視していたのは「原画」です。著者の描いた線一本一本のデジタルでは表現できない筆跡が、人間が描いたものであることを一目で感じさせてくれるアートである、と。
これは抽象的なお話になってしまいますが、アートであるがゆえに言葉で説明が難しいところです。是非実物の原画をご覧になってみなさんの目でインスピレーションを受けて見てください。

 

また、キュレーターのお二人は渉外として、展示物のバランスで尽力されていました。大英博物館は国営博物館であるため、出版社も公平に選ばないといけないですし、国境を越えて世界中からいらっしゃるお客様の政治観や宗教観などへの配慮も必要になります。そこにネガティブな感情を抱かれないように細心の注意をされたそうです。

 

 

キュレーターとの対話:漫画に言葉や文化の壁はあるか

MANGA ART HOTELでは、外国人のお客様が多いです。英訳版の漫画の入手が大変なことがあります。
日本語版しかない時、海外のお客様は日本語の漫画を楽しむことができるのだろうかと思っていました。
キュレーターのお二人と意見交換をしていて理解しました。

 

作品によって翻訳されていたとしても、日本の文化の基本的な知識がないと理解しにくいものもあります。
しかし、漫画とは、文字以上に絵の情報量が多く、ノンバーバルな特徴があります。言葉以外の絵やコマ割りや集中線などの効果で、作者が伝えようとしていることが文化や言語、国境を越えて伝わることは十分にあるのだと思うに至りました。

 

大英博物館のキーヴィジュアルである『ゴールデンカムイ』のアシリパさんの衣装、持っている弓、変顔で、言葉がわからなくても、キャラクターの感情はしっかりと受け取ることができるように、話の展開を追うこともできるのです。

 

MANGA ART HOTELにロシア人の女性が宿泊された時のことです。
『冒険エレキテ島』という日本語の漫画を購入したいと言うので、「日本語版しかないけど、いいですか? これは他の言語のものがなくて……」とお伝えしたところ、「絵が透き通っていて美しいので言葉はわからなくても欲しいの」と、絵本やビジュアルブックのように漫画を鑑賞されているのだなと知ったものです。

 

海外を旅すると、美術館が観光名所である都市は多いことに気が付きます。
大英博物館やニューヨークの美術館・博物館もそうですが、常設展は無料で鑑賞できます。そうした環境にあるからでしょうか、欧米の方はアートに対する可処分時間がそもそも多いような気もします。

「漫画はアートである」というコンセプトを持っている我々MANGA ART HOTELでは、漫画を画とストーリーの生み出すエンタテイメントとして楽しむのももちろん素晴らしいことと思いますが、漫画の持つ「アートとしての側面」を楽しむ事も素晴らしい事だと皆さんに知っていただきたく活動しています。

 

収容人数の都合で1日1000枚限定、1枚3000円近いチケットが当日では入手できないマンガ展の盛況ぶりでした。ここには漫画の娯楽的な面だけでなく、「アート性が高く、日本の王道たる文化のひとつである」という強いメッセージがありました。

 

 

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