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『進撃の巨人』以来となる「社会的大ヒット」の予感!『SPY×FAMILY』を解説

こんにちは!東京ネームタンク代表のごとう隼平と申します。
最近はマンガスクリプトDr.ごとうとしてYoutubeチャンネルも始めました。
マンガ家視点、マンガの制作側から見てオススメの漫画をご紹介して参ります。

今回のオススメ作品は……

 

 

 


『SPY×FAMILY』です!

少年ジャンプ編集部で敏腕として有名な林士平(りんしへい)さんの担当作品でもありますね。発売22日にして30万部を超える大注目作品です。

この作品、表現手法としてマンガでしか作れない作品となっていて、そのことに技術的に感嘆しました。

詳しく解説していきます。

 

 

ハリウッド映画的企画感に日本マンガ的な遊びを加えている

本作は疑似家族を演じる3人の話なのですが、主人公はスパイ、奥さん役は殺し屋です。お互い素性は知りません。
『Mr.&Mrs. スミス』という夫婦の殺し屋を描く映画作品がありましたね。

『SPY×FAMILY』もまるでハリウッドの映画のような、夫婦だけでも十分面白くなりそうな状況です。

本作はそれに止まらず、夫婦の子供にも特徴を持たせています。

この夫婦にして、みなさんならどんな子供にするでしょうか。

 

 

©遠藤達哉/集英社

 

 

「心が読めるエスパー!」(……しかも可愛い!)

このバランス感覚は見事だと思います。下手したら作品を崩しかねないですよね。


2人の子供役となるアーニャちゃんが、主張しすぎずも良いアクセントとなり、この作品の魅力を引き立てます。

 

 

映画的な雰囲気、小説的な語り、そして漫画だけの要素…!

現代の映画は、主人公の心の声というものがあまり入らないのではないかと思います(アニメ映画を除く)。


映画では主人公の感情を心の声ではなく、出来事や演技、相手の反応によって、観客に「想像させて」伝えます。

 

小説はどうでしょうか。

小説では映画とは逆に、一人称視点の書き方であれば、ほとんど主人公の心の声、独白かもしれません。

 

では、マンガはどうか。

マンガでは、映画のように間接的に感情を伝える手法と、小説的のように直接的に感情を書く手法の両方を取ることができます。

 

 

©遠藤達哉/集英社

 

 


こうやってマンガは心の声を直接読者に届けることができますよね。

『SPY×FAMILY』ではどうかというと、映画的な雰囲気でありながら、実は主人公が常に心の声で語るタイプの、ここでいう小説的な描き方となっています。これは特筆せずとも今の少年マンガに多い手法です。

 

僕が今回、これはマンガならではの手法だなと思ったのが、主人公の心の声だけでなく、相手のキャラクターの心の声を、インスタントに読者に伝えていくこと。

ここでは殺し屋の奥さんやアーニャちゃんの心の声ですね。

これがちょくちょく効果的に楽しく入ってきます。

 

 

 

©遠藤達哉/集英社

 

 
主人公以外の心の声を多用するというのは、とてもマンガ的な手法で、僕の予想では映画や小説では難しいのではないかと思っています。

 

先に書いたように映画ではそもそも心の声を入れませんし、小説ではここまで細々と心情を切り替えられないのでは、と思います。

一人称小説はあくまで主人公視点で語られるので、その視点から急に「彼女はこう思った」と、彼女の心情を描くことはできないのではないか……という予想です。

(小説は専門外なので誤っていたらすみません。)

 

 

©遠藤達哉/集英社

 

 

 
この表現は実はマンガならでは……!!

映画的で骨太なストーリーとマンガならではの感情表現が、見事に合わさっている!

 

 

鋭く現代感覚を掴み作られている…!

冒頭で『Mr.&Mrs. スミス』の話をしましたが、お互いの殺しの標的になってしまう、というのは今の日本の感覚からすると少しストレス過多かもしれません。

本作のように、むしろお互いが素性を隠しながらも助け合い、共通の敵に挑む、というほうが今っぽく感じます。

 

新たな時代に立ち向かう機運がある今の日本では、「癒し」「応援」「仲間」が求められるからです。

 

そして挑んでいく共通の敵とは何か。
第1巻では伝統校への入学試験を受けにいきます。

敵は伝統校の先生たちです。

 

現代の我々は、どこかで常に過去の価値観に苦しんでいるのではないでしょうか。

多様な価値観が当たり前になりつつも、まだ社会がそれを許容できていない。

古い家族観など、過去での当たり前を強いてくる社会に、現代の人々は少なからずストレスを受けており、その現代感覚こそを、この作品はしっかりと捉えていると思います。

 

主人公たち家族は、考え方が最先端の現代人です。
特技を生かす女性と、子持ちのバツイチと、一体何が悪いんだと。

古い人間たちよ、真に大事なものが見えてないのかと。

 

またその過去側の人間を完全な敵としてでなく、味方にしていく演出もニクいですね!

 

 

©遠藤達哉/集英社

 

大ヒットから、さらに社会的なヒットとまでなる作品は、その社会の空気を掴んだものである必要があると思います。

その意味で『SPY×FAMILY』は次の社会的ヒット作品の可能性が十分にある、今から注目しておいて損のない作品ではないでしょうか!

 

 

SPY×FAMILY 1 (ジャンプコミックス)
無料試し読み
著者:遠藤 達哉
出版社:集英社
販売日:2019-07-04

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