TOP > マンガ新聞レビュー部 > 「精霊の守り人」「西の善き魔女」ファンにおススメ!痛快中華風後宮ミステリー『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』

「精霊の守り人」「西の善き魔女」ファンにおススメ!痛快中華風後宮ミステリー『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』

 

 マンガをよく読むようになるのが人より少し遅かった私は、それまで小説ばかりを読んでいました。なかでも好きだったのが上橋菜穂子の『精霊の守り人』や、荻原規子の『西の善き魔女』のような、異世界だけどどこかリアルな国家を舞台にした歴史大河ファンタジーでした。

 

 

 そんな世界を思い出させてくれるのが『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』です。

 もともと「小説家になろう」に連載されたライトノベルを原作としています。原作はまだ途中までしか読んでいないのですが、マンガの方がテンポがよくなっている、という人もいるようです。

 

 冒頭で私が挙げた2作品ほどファンタジー色は強くなく、正当な中華風王宮ライトノベルの系譜を引き継いでいるような作品です。

 

 ちなみに私が読んでいるのはマンガワンにも掲載されているサンデーGX版で、『薬屋のひとりごと』はビッグガンガンでも連載されています。キャラクター原案は同じ文庫版ものをどちらも採用しているので、キャラメイクはほぼ同じようですが、読み比べてみても面白いかもしれません。

 

 私は毎週マンガワンで読んでいるのですが、マンガワンの中ではいま一番更新を楽しみにしています。そしてそれは私だけではなく、ここ最近はかなりの割合で更新直後の女子向けデイリーランキングで首位をとっています。

 

 

 薬師として花街で働く少女、猫猫(マオマオ)は、攫われて後宮の下女として働くことになるのですが、生来の好奇心の強さと頭の良さから美形の宦官・壬氏(ジンシ)に見出され、妃たちのいる後宮の中央で働くようになります。

 

 

 巻き込まれ型主人公、と言ってしまえばそれまでですが、猫猫が事件に巻き込まれてしまうのはその持ち前の好奇心の強さに由来しています。

 

 猫猫は薬師として働いていましたが、特に毒に興味が強く、自らで人体実験もするような物好きです。おかげで妃の毒味役として重宝されるわけですが、その毒好きは目を見張るものがあります。

 

 

 毎回猫猫が事件を鮮やかに解決する様は、一話完結の解決ミステリーとしてすっきりしますし、ワクワクさせられます。

 

美形の宦官・壬氏

 

 この毒好きが遺憾なく発揮されるのは美形の宦官・壬氏に対しても変わりません。

 壬氏はその美貌から、男性が少なく、いても宦官ばかりの後宮のなかで絶大な女性人気を誇っています。そんな壬氏に対しても猫猫は「美形だな」と思うだけで顔色ひとつ変えません。

 

 それどころかその美貌を苦手とすら感じているほどです。花街で育ったことと関係があるのでしょうか……。

 

 

 いわゆる「面白い女だな」とイケメンに言わしめる鈍感主人公か、というとそういうわけでもなく、ただただ美しい顔の壬氏よりも冬虫夏草が好きなただの薬オタクなのです。

 鈍感愛され主人公って、ちょっと見ていてイラッとする場合が間々あるのですが、猫猫に関しては色恋沙汰の多い花街が日常ななか、薬に没頭していたせいで鈍ってしまった、という感じがしてとても好感が持てます。

 

 

 壬氏も「面白い女だな」というところから猫猫に興味を持ち、その能力や頭の良さを知るうちに惹かれていくわけですが、その好意が強まるにつれ猫猫への対応が子供っぽくなっていくのがとてもかわいいです。

 

 いままで女にはちやほやされてきて、大抵の女は自分をそれなりに好きだったであろう壬氏が、猫猫で初めて自分の好意に気づいてもらえずやきもきしているんだな、と思うだけで微笑ましくなってしまいます。

 

 

 しかしこの壬氏、当然といえば当然なのですが、ただの宦官ではありません。なんとなく『彩雲国物語』のような匂いがするな、とマンガの方で私は感じております。

訳ありの頭のキレるイケメンに時折あどけない表情を見せられたらふつうやられてしまうところなんですが、そこで冬虫夏草を優先するのが猫猫のいいところです。

 

 

後宮物語として

 

 大河ファンタジーによくある後宮での権力争いに巻き込まれる主人公、という構図はこの作品でも大いに登場します。

 猫猫の父親が関係してきたとことでは思わず「『守り人』だ!」と叫んでしまいました。

 

 そういった「あの作品ぽいな」というエッセンスはありつつも、やっぱり猫猫の痛快な事件解決や、じれったい壬氏とのかけあいのテンポがよくて、どんどん読み進めてしまいます。

 

 また、後宮の物語にほぼほぼある女同士の権力争いはもちろんこの作品にもありますが、猫猫がうまいこと中和してくれているな、と感じます。

 結局後宮の女の争いは主上である皇帝や帝の寵愛を巡るものであって、女同士が直接的にいがみ合っていることはそんな多くはないんだろうな、ということを思わされます。

 

 

 それぞれのエピソードがミステリーとしてすっきり楽しく読める作品でありつつ、少しずつ伏線が大きな物語になっていく予感がする『薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~』、マンガワン、裏サンデーほかで絶賛連載中です。

 マンガの続きが気になって仕方がない方はぜひ「小説家になろう」の連載も読んでみてください!私も取り急ぎ小説の続きを読もうと思います。

 

薬屋のひとりごと (ヒーロー文庫)
著者:日向 夏
出版社:主婦の友社