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【漫画 温故知新③】半世紀前の本格派ミステリ!少女マンガ家・丘けい子『わたしはだれ?』が現代でも面白い理由

丘けい子先生の大ファンである。1960年代、「週刊マーガレット」誌で作品を発表されて初めてその名を知り、ファンになってそれ以前の貸本時代の作品も追い求めた。

 

バーサンなわたしが若かった時代、まだ貸本屋が結構あって、子供でも10円で借りられたのである(あ、借りるには100円を払い、1泊2日で返すと、90円が返却される、なんてシステムだったと記憶している)。

 

実はこのわたし、丘先生の作品の電子版配信に一役買ったのである、とちょっと自慢しておこう。

 

丘先生の作品が好きだ、また読みたい、他の人にも読んでほしい。

その一念で、電子配信をしてくださいと某サイト管理者に頼み込み、ごく一部であるが丘先生の作品は今、多くの電子書籍書店で読めるようになっている。

 

電子書籍化されているものは歴史物が多いのだが、どれもかなりマニアックな内容で、さすが、丘けい子先生と思わせる。

とくに『黒いプリンセス』は百合&まるで宝塚で、わたしのドツボだ(笑)

 

 

黒いプリンセス
著者:丘けい子
出版社:メディアチューンズ
販売日:2014-05-27

 

『黒いプリンセス』©丘けい子/メディアチューンズ

 

 

『黒いプリンセス』©丘けい子/メディアチューンズ

 

 

 

丘先生の好きな作品はいっぱいあるのだが、なにを一押しにしようかと迷った末、異色作の『わたしはだれ?』にした。

 

この『わたしはだれ?』、中村うさぎ先生もTOKYO MX『五時に夢中』で褒めていらした。

残念ながらまだ電子書籍化していないが、丘先生の個人サイトで読めるので、是非読んでほしい。

 

 

『わたしはだれ?』は当時の少女漫画誌には珍しい、本格派サスペンスだ。

連載当時、あの伝説の雑誌「月刊COM」誌上では、当時大人気であった手練れの推理小説家であるセバスチャン・ジャプリゾの『シンデレラの罠』に匹敵すると絶賛されている。

わたしは『シンデレラの罠』も読んだが、まさにそれ。まったく負けていない。

 

 

物語はこう始まる。

とある養護施設に仲のよい二人の少女がいる。

ある日、アメリカから美しい女性がやってきて、二人のうち一人の少女に、アメリカには金持ちの伯父がいて、彼があなたに会いたがっている、と告げる。

 

ほら、もう、何かが起こるしかないでしょう?

 

もちろん、事件は起こる。

養護施設はその晩、大火事になり、二人の少女は逃げ遅れるが、ひとりがもう片方の少女を抱きかかえて飛び降りる。

ひとりは焼死、もうひとりは大火傷の重傷だ。

どちらの少女が助かったのかはその時点ではわからない。

しかし、キーパーソンとなるアメリカから来た女性は、生き残った少女こそが自分の依頼主の本当の姪だと主張する。

 

 

大金持ちの伯父さんが現れて……といった、昔からよくある少女漫画のシンデレラストーリーかと思ったら、大間違い!

ここから本格ミステリ&サスペンスになるのだ。

 

大火傷をおった少女は、顔を含めて何度も手術を受ける。

そして意識を取り戻したときには、記憶を失っていた。

 

 

鏡に映る自分の顔は初めて見る顔だ。私を特定するための過去の記憶もない。

 

「わたしはだれ?」

 

彼女は鏡に問いかける。

そして亡くなった少女は、二人のうちどちらなのいか?

やがて謎の人間たちが彼女の周りをうろつくようになり……。

 

当時の少女漫画にもサスペンスやミステリはあったが、おおむね世界観は少女の視点に限られていることが多かった。

少女探偵とかね。

 

丘先生のストーリーのすばらしさは、少女漫画であるにもかかわらず、世界観が少女たちだけでなく、大人を含めた複雑な階層になっているところだ。

 

この『わたしはだれ?』で言えば、アメリカから来た女性をはじめとする「金のために動く大人たち」、また事件を別の観点からアプローチする警察関係者、などがそうだ。

 

よって、読者はいろいろな視点から事件を見ることになり、真実はいったいどこにあるのかと、ハラハラどきどき感が倍増する。

あの時代、すでに何年も貸本で大活躍されていたベテラン丘先生ならではの手腕である。

今でも十分に通用するストーリーテリングの妙を是非味わってほしい。

 

そして……

超名作の『カリブの女海賊』とともに早く電子配信してください! 

『カリブの女海賊』は、『パイレーツ・オブ・カリビアン』よりずっとおもしろいから、宝塚でミュージカル化を激しく希望だっ!

みなさまもぜひ作品の電子化熱望の声を届けてね!