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大英博物館でも「こうの史代さん」が大活躍!『ギガタウン 漫符図譜』は超強力マンガ伝道師だった!!

2019年大英博物館で開催されたマンガ展。

数々の日本のマンガが展示される中、個人的に影の功労者と思ったのが、こうの史代さんの『ギガタウン 漫符図鑑』。

主に日本のマンガでよく使われる表現を辞書のように紹介しながら、実例を4コマで示したもの。

 

マンガ表現のセオリーを知りたい人、マンガを含めイラストを描く人はすごく勉強になるのではないでしょうか。

 

マンガ特有の表現を4コマで紹介

私がマンガが好きな理由のひとつに、その情報量の多さがあります。

ひとつのコマにキャラクターと背景とセリフがきれいに詰め込まれ、作者の伝えたいことがまとまっています(なお、語学の勉強にも使いやすいため、現在、私は英語で週刊少年ジャンプを読んでいます)。

なぜ私たちはこんなにキャラクターに共感したり、描かれた情景を理解したりできるのかと考えると、今のマンガのスタイルが長い間で築き上げてきた表現のスタイルみたいなものがあり、そのスタイルが作者と読者の共通言語になって物語の世界に入り込むのを手助けしてくれているのです(そしてそれを使わない、あえてスタイルから外れるのも作者の力量です)。

そのスタイルのひとつが、「?」「ガーン」「ジャーン」「どよっ」「ざわっ」「ZZZ」 といった、情景や感情を表す「漫符」とよばれる表現です。

もしかしたら白黒表現だからかもしれないですが、日本のマンガは特に多用します。

『ギガタウン』は、そんな「漫符」を平安時代の絵巻物である「 鳥獣人物戯画」のキャラクターを使いながら、「漫符」とよばれるマンガの表現を紹介したものです。

漫符ひとつひとつを、まるで辞書のように、その定義と用例で説明

用例は4コママンガ仕立てになっていて、どれを読んでもクスリと笑わせてくれる。昭和・平成とマンガを読んできた人なら、いちいちが納得の内容です。

今のマンガを読むための表現と、平安時代の絵巻物の組み合わせは、ある種の現代と古典の巧みなハイブリッドともいえます。

 

ヘビーなマンガ読みにとって当たり前の表現であっても、マンガを読みなれていない人にとっては、それこそ「?」マークが飛んでしまうもの。

「おしまい」として、こうの先生ご自身の経験としてまとめられているように、日本のマンガの表現はコマ割りも漫符も自由だからこそ、読みなれていない人にとっては「読む順番や読み方がわからない」となるのだと思います。

 

その意味で、『ギガタウン』はいい辞書であるとともに、これからマンガを描こうという人にとっては、これまでの共通言語を手に入れる方法になりうると思います。

 

大英博物館マンガ展、みみちゃんが案内

2019年に大英博物館で開催されたマンガ展では、もちろん、こうの先生の『ギガタウン』も展示されていました。マンガに取り上げられた漫符の一覧とともに、一部作品の原画が、来場者たちを楽しませてました。

 

しかし、なんといってもすごいのは、『ギガタウン』に登場するうさぎのキャラクター、みみちゃんの活躍です。

 

入り口から途中の解説、最後の来場者の写真撮影まで会場全体を案内するのはみみちゃん。私たちはみみちゃんに迎えられ、彼女から説明を受け、そして見送られるのです。

 

というのも大英博物館がある英国は『不思議の国のアリス』を生んだ国。

マンガ展の図録によると、『不思議の国のアリス』でアリスが穴に入ったように、来場者がうさぎの穴に入り込んで6つのテーマを旅することをイメージしたそうです。

原作では時計をもったうさぎがアリスを先導しましたが、今回の展示会の先導役はみみちゃんというわけです。

 

今回のマンガ展を彩った作品は数多くありましたが、全体をまとめあげかつ英国という地とのつなぎ役になったのはみみちゃんなのだと私は思います。

 

 

(大英博物館「マンガ展」の展示より。)

 

次の漫符にも期待

『ギガタウン』で描かれた漫符は主に平成までに生み出された記号です。

もちろんそれぞれすばらしいですし、私自身もマンガを読むときにすごく助けられてきました。

しかし日々進化するマンガ表現。

もしかしたら今や将来のマンガ家が、令和の漫符を生み出すかもしれません。

『ギガタウン』の続きが出るとしたら、そうした新たな漫符をまとめてもらわないと、昭和・平成のマンガ読み(含む私)は追い付けないかもしれません。

 

 

ギガタウン 漫符図譜
著者:こうの史代
出版社:朝日新聞出版
販売日:2018-01-19