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極限まで追い詰められた家庭を描いた『「子供を殺してください」という親たち』

誰だって、間違いを認めるのは難しい。

 

プライドが傷つくし、そもそも世の中はテストの答え合わせみたいに、正解と違ったときにわざわざバツマークがつかないから、間違いだと分かりにくい。

 

だから大事なのは、間違ったかも……と頭によぎったとき、いかに自分で回答を検証できるかだと思う。

それは大変なことだけれど、その代わりに世の中はテストと違って、一度出した回答を、消しゴムで消して書き直せば正解になることもある。

 

では、それができなかったらどうなるのか。

そんなケーススタディが描かれているのが、コミックバンチWebで連載中の『「子供を殺してください」という親たち』だ。

 

「子供を殺してくれませんか…」親から絞り出される極限の言葉

統計を見ると日本国内の殺人事件の発生数は減少傾向にある。

ただ、その半分以上は親族間で起こるそうだ。

 

なかには京都認知症母殺害心中未遂事件(2006)のような、やむにやまれずのケースもあるかもしれない。

しかし、ほとんどの場合は、関係が冷え切って、行き詰まったことに起因していたのではないだろうか。

 

『「子供を殺してください」という親たち』に登場するのは、そんな家族と、そこに介入して子の社会復帰を助けるトキワ精神保健事務所の人たちだ。

 

トキワ精神保健事務所の所長である押川は、自分の仕事を「医療とつなげる」ことだと言う。

重度の統合失調症やうつ病などの精神疾患を持ち、精神科医療とのつながりを必要としながらも対応をとられていない子供たちを説得し、適切な医療機関などに紹介したり、連れていったりするのだ。

 

彼らに依頼してくるのは追い詰められた、極限状態の親子たちだ。

例えば、統合失調症を発症し屋外で全裸になってバットの素振りをする男性、アルコール依存症のため理性を失って父親を包丁で切りつける息子……。

 

そんな、行き着くところまで行き着いてしまった親たちから絞り出されるのは、

「子供を殺してくれませんか……」

「子供が事故にでも遭ってくれたら……」

というあってはならない言葉なのだった。

 

他人事とは言えない時代だからこそ描かれた作品

タイトルがズバリ、それを示している。

しかし、子に問題行動があったとき、まずそれを「認めて」、「どうすればいいか考える」ことをしなければならないのは、子自身ではなく親のほうなのかもしれない。

 

今、日本で精神疾患をかかえる人は400万人程度だそうだ。

人口で言えば30人に1人くらいの割合になるから、全く珍しいとは言えないし、誰もが関わりえる社会問題だ。

その現場では一体、どんな人たちが、何をしているのか。

薄皮一枚分の隣にある、知っておくべき現実を教えてくれるリアリティを持った作品だ。

 

 

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