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過度な競争社会に一石を投ず!寿命よりも仕事を優先するアイドルに待ち受ける末路とは SFヒューマンドラマ『絶対零度アイドル』
レビュー執筆者:たまごまご

 

SFヒューマンドラマ『絶対零度アイドル』

 

彼女たちは命を削って、アイドルとしての賞味期限を長くする

 

少女が大人になる前の一瞬は、儚くて美しい。だからこそ、アイドルは人間の心を掴んで離さない。

 

同時にこの感覚は、時を経ていけばアイドルの賞味期限が来てしまう、という現実をも突きつけてくる。一瞬だから輝くとはいえ、収束して大人になっていく時間は、夢にあふれる少女たちには残酷すぎる。

 

人気グループ「ブライアローズ」は、冷凍アイドル。アイドルの活動時は普通に動いているが、それ以外の時はコールドスリープに入る。こうすることにより、歳を取るのが遅くなり、通常より長く、若く美しい姿を保つことができる

 

メンバーはコールドスリープについて、とてもポジティブな見方をしている。

 

すず音「アイドルの賞味期限って知ってます? 短いんですよ だいたい25歳までって言われてます 10年ちょっとしかできないんです でもね 私たちは1年の2/3眠っているので……3倍長くアイドルできるんですよ!」

 

究極の美少女を求める世間の「アイドル像」の消費と、アイドルとしての青春を送るため全てをかけて頑張る女の子たち。そこにどうしても生まれる加齢と成熟の問題を、科学の力で解決しようとするSF作品。

 

ブライアローズの子たちは常にはつらつとしており、コールドスリープアイドルの活動が、自分たちにとって正しいと信じて疑わない。特にリーダーのすず音は、今アイドルを続けられる状況をとても大切にしており、できることならなんでもしようと、「普通じゃ考えられない」ほどの努力をしてきた。

 

とはいえメンバーの中から、不安を持つ子も当然出てくる。ある少女は加齢恐怖症になっていた。起きている時はどんどん歳を取る。冷凍されていないと心配で仕方ない、という冷凍依存。彼女はコールドスリープをやめる、という決断を取った。

 

一巻ではまだすず音が強力にポジティブなため、ブライアローズの活動は華やかで美しく、彼女たちの頑張りも応援できる、ように見える。しかしコールドスリープは若い期間を延ばしはするものの、寿命は短くしてしまう。彼女たちはアイドルの活動期間を伸ばすために、命のろうそくを削っているのだ。

 

コールドスリープ反対派も世間には数多くいるようだ。現段階では、命を摩耗するブライアローズが正しいのか、異議を唱える人が正しいのか、全くわからない状態だ。

 

ファンの前に立ち、全力でパフォーマンスを終え、笑顔で見つめ合う5人のアイドル。この笑顔、素直に喜んでいいんだろうか。彼女たちを狙う謀略も含め、目が離せない作品だ。

 

 

絶対零度アイドル 1 (1巻) (ヤングキングコミックス)
無料試し読み
著者:ハナツカシオリ
出版社:少年画報社
販売日:2019-06-17

 

 

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