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バトル×学園×ホームコメディ×ラブコメ!『サンデー』史に残る傑作『こわしや我聞』(全9巻)の魅力は“程よい長さ”!?

 

読書会に参加すると、よくオススメの本について情報交換をする。

そこでマンガの紹介をすると、こんな声を聞くことがある。

 

「読んだことがない作品は、連載が終わってから読むようにしてるんです」

「できれば、長すぎる作品はちょっと……」

 

何を世迷い言を……とその時は思った。

だが、後日振り返ってみると、その考えは聞き流してはいけないんじゃないか、と思い直す。

 

確かに、連載中の作品と途中から併走するのは意外に勇気がいる。

 

読者は他にも色々な作品を読んでいる(応援している)身だ。

だから、新しい作品を読む時に、気にしてしまうのだ。

 

いつまで続く予定なのか。

いつ区切りがつく見込みなのか。

 

先が見えない作品を年間購読リストに入れると、負担になるし、時間も割かれる。

長期連載作品ならなおさらだ。

何より、それで飽きがきたり、つまらないと思っても止めづらいし、止めたくないという意識が働いてしまう。

 

多分、それが怖いのだ。

 

完結していたら、マイペースで買うことも読むこともできる。

そして、できるなら、集めやすく、「“程よい”長さ」の作品が望ましいのは言うまでもない。

 

さて、ここでもうひとつ考えてみようと思う。

 

「”程よい”長さ」の作品とは何だろうか?

 

言ってしまえば個々の感覚次第なので、基準を設けること自体が野暮ではある。

それを百も承知で考えてみると、下記のような要素が思い浮かぶ。

 

・中だるみが少ないこと。

・変な(妙な)引き延ばしがないこと。

 

そして何より、

作品としてのゴールにきちんと達していること。

 

これをまとめてみると、

“程よい”長さ= 内容の達成度(もしくは満足度)の高さ 

ということになるような気がする。

 

 

もし、この定義が正しければ、これに最も当てはまる作品がある。

 

というわけで、前置きが長くなったが、今回は『こわしや我聞』をご紹介。

少年サンデー史に残る、至玉の傑作だ。

 

 

こわしや我聞(1) (少年サンデーコミックス)
著者:藤木俊
出版社:小学館
販売日:2012-09-25

 

 

主人公・工具楽我聞(くぐらがもん)。

 

昼は普通の学生。

学校を出れば、解体業者の若き社長。

 

そして、彼にはもうひとつの「本業」がある。

ひとたび依頼を受ければ、特殊な力・仙術を使って何でも壊す“こわし屋”だ。

 

会社のため、家族を養うため、依頼人のため。

忙しい日々を過ごす彼の元に寄せられる「本業」依頼の数々。

それは、次第に行方不明の父と、父の開発した悪の兵器との対決へとつながっていくことになる……。

 

 

こう書くと、かなりハードな展開を想像されると思うが、そこはサンデー作品(笑)。

実際は笑いあり、涙あり、友情あり、感動ありの“ザ・少年マンガ”だ。

 

 

©藤木俊/小学館

 

 

メインは「本業」の仙術を用いて悪と戦うバトルもの。

(中盤以降は全国に散らばる「こわし屋」が登場するという胸熱展開も待っている)

 

「本業」がない時はクラスメートと楽しみながら日々を過ごす学園ものへ。

(アホなクラスメートとの熾烈な卓球対決が面白すぎて、毎回お腹が痛い!)

 

授業が終われば会社を潰さないために奮闘するお仕事もの。

(バカ正直で力業しか知らない我聞を支える社員たちの働きぶりが頼もしい……?)

 

その一方で、両親がいないなか、工具楽家の家族が、お互いを思いながら力を合わせるという家族もの。

(弟や妹を守ることを誓った我聞の奮闘と、いつも茶化しながら誰よりも兄を心配する姉弟の姿が泣かせるのです)

 

そして、我聞と秘書・国生さんが次第にお互いを信頼し、心から想い合うラブコメ展開。

(じつは物語後半で我聞の弱点が発覚。彼をとらえるのは公私ともに国生さん、という流れが、そこまで張られてきた伏線と重なって最高のラストへつながっていく)

 

先代(我聞らの父)に育てられた国生さんが、我聞たち家族へのあこがれを告白した時の、「国生さんだって家族だ」のシーンは、この作品屈指の名シーン。

 

©藤木俊/小学館

 

 

 

©藤木俊/小学館

 

 

『こわしや我聞』はこれだけ膨大な要素を持ちながら、大きく破綻することはなかった。

最後まで絶妙なバランスを保ち続け、万感のハッピーエンドへたどり着いた稀有な存在。

 

しかも、これだけ盛り込んで、全9巻。

二桁にギリギリ達しないところが、集めやすく「”程よい”長さ」だと思うのだが、いかがだろうか?