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天然ボケ呼ばわりされる繊細な少女の痛みが生々しくも新しい『ひとりぼっちで恋をしてみた』

はじめましての人ははじめまして! そうでない人はこんにちは!
東京ネームタンクでマンガの持ち込み先・進路相談をやっています、
漫画ソムリエの東西サキです。
今回からマンガ新聞さんでレビューを書かせていただくことになりました。
以後お見知りおき頂けましたら幸いです。

さて、今回は
『ひとりぼっちで恋をしてみた』という作品の魅力について
お話させていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします。

あらすじ

北海道を舞台に
不器用で鈍臭い自分のことが好きになれない16歳の女子高生が
ある一件から誰にも迷惑をかけない様に生きていこうと決め旅をする…

この作品は主人公の精神的成長を追う物語となっています
では、この作品のどこに魅力を感じたのかつらつらと書いていきたいと思います。

あえて萌えキャラのマイナス面にフォーカスする

©田川とまた/講談社/2019



マンガやアニメには天然ドジっ子属性キャラがよく登場します。
この天然ドジっ子という属性は
「守ってあげたい」「教えてあげたい」という読者の優越心理をくすぐったり
抜けた行動で場をほのぼのとさせるなどマスコット的役割として人気が高いです。

しかし、本作ではあえてこの天然ドジっ子という
類型的な萌え属性の負の面に光を当てることで
それを作品の魅力としています。
そしてこの作品が上手いのは
『負の側面をもった主人公の成長を読者が見守る』企画としたところにあります。
では、負の側面とはいったい何なのか

思考と行動が一致しない苦しみが生む負の感情のリアリティー

主人公は家族や友人達とのやりとりで見せる外面的な天然ドジっ子面と、
思慮深く、繊細、……という真逆な精神性を併せ持っています。

周囲の状況を正しく理解しているのに
思うように行動ができない苛立ちと苦しみ、
この二面性が主人公の核であり
類型的な萌えキャラにないオリジナリティーです。
そして作品は彼女がどのように成長していくのか
読者が『見守りたくなる』という構造により
『悩める主人公の成長を読者が見守る』という面白みとなっているのです。

読者と主人公の感情を意図的に遮断する工夫とその意図

 

©田川とまた/講談社/2019

 

主人公にはマロンという空想上の友達がいます。
この友達は主人公の脳内にしか存在しないので
精神が不安定である事を演出するとともに
主人公に対する読者のツッコミを代弁する役割を担っています。

つまりこのマロンが現れる度に読者の感情は
目線キャラクターである主人公から引き離され
この空想上の友達へ感情が同期します。
視点や感情を移動させることで読者は
主人公達の行動を見守る第三者として作品を楽しむことが可能となるという訳です。
この視点の移動がとてもユニーク!

感情が読みたくなる表情

©田川とまた/講談社/2019


また作中ではどんな感情を抱いているのか知りたくなるような表情が
効果的に入れられています。
これも客観で作品を楽しませるための工夫といえます。
すべて『成長する主人公を読者が見守る』をみせるための技術と言ってよいでしょう。


以上、
今回は『ひとりぼっちで恋をしてみた』の魅力についてつらつらと書いてみました。
興味ある人はぜひ読んでみてください!

試し読みはこちら!

ひとりぼっちで恋をしてみた(1) (ヤンマガKCスペシャル)
著者:田川 とまた
出版社:講談社
販売日:2019-04-05