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ドラゴンVS近接格闘術!某国大統領風の男が異世界を乗りまわす『ライドンキング』

はじめまして!東京ネームタンク代表のごとう隼平と申します。

東京ネームタンクは、漫画のストーリー制作を専門とした教室と研究室です。
これまで一子相伝の秘匿であったストーリー制作の要点を整理し、すべての商業漫画作品に共通の要素、構造からお伝えしているのが特徴です。

さて、物語作りというものは、人の心を動かす、ということに他なりません。
どのようなお仕事やライフスタイルにも、応用できることが多いのではないかと思います。

ここでは漫画の技術的側面から見た傑作を、みなさまにご紹介していきたいと思います。

ライドンキング、ライドオン! 

お話のあらすじとしては、「一国の主である某国大統領風の男(強い)が異世界に転生して活躍する」というものです。
 

©馬場康誌/講談社
強い…

 
2018年は非常に異世界転生系作品が多く…弊社運営の研究会調べでは年間1500以上の新連載の中で約120作品が異世界関係でした。新連載の主人公の約12人に1人は異世界に行っていた計算になります。それだけ異世界に転送されていれば…大統領の1人や2人紛れ込んでてもおかしくはありませんね。

異世界に行った作品で記憶にあるのは、異世界の温泉になってしまう作品異世界に日本国が行ってしまう作品異世界にSF宇宙船員が辿り着く話などでしょうか。異世界ものが多くなるにつれ、工夫を凝らされた作品が多くなった印象でした。

基本的に異世界転生は、主人公が転生の際にチート能力を授かっていたりして、この主人公なら異世界ですごい活躍をするに違いない…という期待感で作る作品が多いです。

そんな中、圧倒的な期待感を放っていたのが今作「ライドンキング」です。

武器は拳、脚、CQC(近接格闘)


異世界で目が覚めるプルチノフですが、とくにチート能力を授かる訳ではなく、これまでの己の鍛錬で培った体躯で活躍します。まず見所はその見事な技でしょうか。

見事な一本背負い…!!

©馬場康誌/講談社

©馬場康誌/講談社
技のリアリティがすごい。

 

僕は元柔道部だったこともあり、技を掛ける際の力の入れ具合が追体験できるかのようでした。引きつけ沈みながら回り込み、相手の体重を腰に乗せ、膝のバネで投げ飛ばす、その力の動きがしっかり伝わる、格闘漫画としての気持ち良さ。こうすればトラック投げられるんだ…

すべての打撃にプルチノフの鍛錬の歴史が感じられます。それだけで一コマずつが非常に楽しい。こんなにゆっくり読み進めた漫画は久しぶりです。

 

 ©馬場康誌/講談社


さらにはドラゴンにドラゴンスクリューかけちゃうんですよ。これはぜひ本編で見てください。

異世界ファンタジー作品としても上質!

異世界転生系漫画では、ゲームの世界に入ってしまう、という作品も多いですが、今作においては剣と魔法の世界そのものが作り込まれており、世界観にも非常にリアリティがあります。

そのため異世界転生というジャンルに詳しくなくても楽しめるのではないでしょうか。
 

 ©馬場康誌/講談社


細かいディティールまで破綻がなくよく考えられていること、また絵柄のリアルさがあいまって、本当にその世界が存在し、空が広がっているような…、始めてRPGゲームをやったときのようなワクワク感があります。

王道の異世界ファンタジーを楽しみたいという方にもおすすめです。

騎乗欲、という感情のオリジナリティ

この主人公のプルチノフはとにかくなんでも「乗りこなす」のが大好き

物語は基本的に、ワイバーンやケンタウロスや、異世界の魔獣の背に乗りたい、という欲求で進みます。
 

 ©馬場康誌/講談社


人はなぜ、漫画を読んだり映画を観たり、物語を求めるのかというと、そこにまだ知らぬ感情があるから、というのは一つの答えだと思います。

そのまだ知らぬ感情として「騎乗欲」というものを生み出したのが、まず今作の何よりすごい発明だと思います。たしかに車でもバイクでも、操る楽しさってありますよね。その欲に気づき注目した作品が他にあったでしょうか。


今作はそのまだ知らぬ感情を存分に楽しむことができます。

「私は”乗りこなす”という行為が好きだ」
「跨り 操った時の征服感と愛おしさ…それは えも言われぬ高揚で私の心を満たしてくれる」

「騎乗欲」から溢れる多幸感

またこの主人公の「乗りこなしたい」という「動機・したいこと」は物語の構造としてもとても大事なものです。

どんな漫画も、読者は主人公の「動機やしたいこと」に共感したり想像したり、その感情に寄り添って読んでいきます。


さてここで今作を最初のおすすめ作品として取り上げた理由なのですが、その読者ともっとも距離の近い感情である「主人公の動機」、今作で言えば「乗りこなしたい」…

これが何より「愛に溢れている」というのが注目ポイントです。
 

©馬場康誌/講談社 


プルチノフも冒頭で言っていますが…「征服感と愛おしさ」

彼にとって「乗りこなす」とは、征服感や支配欲だけではないんですね。その対象に深い愛がある。騎乗欲は「愛したい」と同一です。

たくさんの作品を読んでいますが、こんなに動機に愛を感じ続ける作品はとても稀有です。恋愛漫画などもあるじゃないか、と思うかもしれませんが、恋愛漫画に多い動機は「愛されたい」です。

一方的に強く愛し続ける動機というのは読者の支持を得られず、成立させにくいのだと思います。普通にやろうとするとストーカー漫画になってしまう。

これを成立させている珍しい作品なのだ、ということにぜひ着目しながら読んで欲しいです。

愛を持つ男は、格好いい。

©馬場康誌/講談社

 
なぜこんなにプルチノフという男に惹かれるのだろう…
と考えていくと、やはりこのたくさんの漫画と主人公の中で、これほど強く、かつ愛を持ったキャラクターがいない、ということに尽きると思います。真の英雄譚が今作にはある。

「ライドンキング」おすすめです!!

『ライドンキング』ためし読みはこちら>>

 

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著者:馬場康誌
出版社:講談社
販売日:2019-01-09
ライドンキング(2) (シリウスKC)
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