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若手社員の育成に悩むあなたの虎の巻 『今どきの若いモンは』
今どきの若いモンは(1) (サイコミ)
著者:吉谷 光平
出版社:講談社

 

上司の自慢話や過去の武勇伝を聞かされ、ハラスメントに相当する言葉や態度に辟易する。

そんな辛い状況下において、誰もが「あんな上司にはならない」と決意する。 

 

しかし、自分が妙齢になってみると、自分とは異なる教育環境、社会環境、さまざまなツールとコミュニケーションスタイルのなかで育った若者が部下になる。 

 

成功体験と成長体験があればあるほど、上司から受け継いだやり方、考え方が勝ちパターンとして身に付き、それが会社の、それが自分のアイデンティティーになっていく。 

 

しかし、働き始めて10年も20年もすれば、あなたの拠り所となった方法論、その言葉を受け付けられない世代が台頭する。

うまくいかないコミュニケーションは、著しく仕事の成果とあなたの評価を落としていく。 

 

感情的になり、我を忘れてしまった瞬間に出た一言で社会的に終わる。それが怖くて、若手社員の育成に貢献できず、やはり悩む。 

 

人材不足、採用難が叫ばれるなか、せっかく入社した若手社員が離職したとなれば、マネジメント能力の欠如、という烙印を押されるかもしれない。

若者の離職理由は複合要因にあるが、それでも「人間関係がよくなかったため」は離職理由の2位(1位は「仕事が自分に合わなかったため」)だ。

 

 

内閣府/平成30年度版子供・若者白書

「特集 就労等に関する若者の意識」図表7

 

 

そんな若手社員のマネジメントに悩むあなたに、あるシチュエーションではどのように振舞うべきか。どのような声をかけるべきか。いかに見守るべきか。

そんな手取り足取りな虎の巻となる漫画が『今どきの若モンは』だ。 

 

商社での日常を舞台にした本書は、石沢一課長と新卒一年目の麦田歩を中心に展開される。

新卒らしく、さまざまな課題にあたる麦田に対して、上司としての石沢のマネジメントは神レベルでお手本。これくらいはやれるだろうと、実際にやることは違う。 

 

それをさらっとやるように見える石沢課長だが、その裏にある自らの若かりし頃、まさに今どきの若モンだった頃に学んだことが裏付けとして垣間見える。 

 

あなたは以下のようなシチュエーションの若手社員にどんな言葉をかけるだろうか。 

 

・上司も帰ってないオフィスで帰りづらそうに残業をする若手社員に 

・うまく作れたお弁当の写真をインスタにアップしようとしている若手社員に 

・大切な取引先企業でミスを犯した若手社員に 

 

どんな企業でもある風景だが、ここでかける言葉やタイミングによって部下の信頼を獲得することにも、失うことにもなりかねない。

ここぞと言うときのあなたの立ち振る舞いこそが、今どきの若いモンを人としてリスペクトしているのか、そうではないのかの分かれ道だ。 

 

・より高い職位にある上司が若手社員に酒の席で絡んでいたら 

・仕事はこなしているが、いつもとほんの少しだけ雰囲気の違う若手社員がいたら 

 

自分が上司と若手社員の間に挟まれたとき、あなたは若手社員のために体を張り、リスクを恐れない行動をとれるだろうか。 

 

こういった一つひとつの場面での行動は、周囲にも大きな影響を与えていく。

いつの間にか、自分がフォローしようとしたシチュエーションも、そっと仲間がフォローをするようになっている。もちろん、それは上司や元部下にも伝播する。 

 

年齢や性別に関係なく他者をリスペクトし、相手の自尊心を大切にする。

出世競争で他人を蹴落とそうとする人間にも、ハラスメントギリギリのラインで売り上げを最大化すべく仲間と接している元部下にも、重要な取引先で横暴に振舞うクライアントにも、こびない、逃げない。 

 

理想の上司と呼ぶこともできるが、上司や部下という関係性を越えた行為、行動は「信頼」という唯一無二のものとなって蓄積されていく。 

 

いま、上司の存在に苦しんでいる人は、きっと「あんな上司にはならない」と考えているだろう。

しかし、不都合な人間を反面教師に自己の成長を決意するよりも、「このような人になりたい」という理想像、ロールモデルに憧れ、自分自身を磨いていく方が大切だ。 

 

信頼の蓄積は会社のなかのみならず、広く社会生活のなかでも、かけがえのない大切なものだ。それをいかに構築していくのか。

それはまず石田課長という生き方に触れ、考えることから始まる。