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あのルパンの原点ここにあり!『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』で本当のルパンを知る

恋焦がれた「本当のルパン」

わたしは生粋のルパンフリークである。
小学校低学年のとき、少年少女ものでモーリス・ルブラン著、南洋一郎氏翻訳の怪盗アルセーヌ・ルパンに出会って一気にファンとなり、それ以来、ルパン作品はすべて読んだ。

 

森田崇先生の『怪盗ルパン伝アバンチュリエ』を知ったのはほぼ一年前。

最初は「へぇ、ルパンを漫画化したのか」と思ったに過ぎない。

だって、小説は全部読んでいるんだから、今さら漫画を読む必要はないってことで。

 

しかしその後、作者の森田先生の創作動機が、

「作者モーリス・ルブランの素晴らしさをもっとみんなに知ってもらいたい」

だというのを知り、興味が湧いて電子版をDLして読んでみた。

結果、紙版も買い、友人たちにも贈りつけるという伝道者になったわけだが、ここでさらに布教を試みたい。

 

 

漫画として計算されつくした写実と演出

 

もちろん原作の素晴らしさがあってこそだが、それだけでなく、媒体としての漫画ならではの、漫画でなくてはならない素晴らしさを、シリーズ中の一作『公妃の宝冠』を例にして語ってみよう。

 

 

©森田崇/エギーユ・クルーズ/大洋図書

 

物語は、ある日、成金大富豪グルネイ・マルタンのもと、怪盗アルセーヌ・ルパンから「今夜十二時までに城館に保管してある宝冠をいただく」と書かれた大胆不敵な予告状が届く、というもの。

 

 

©森田崇/エギーユ・クルーズ/大洋図書

 

 

なぜ、ルパンシリーズの中でも人気のある『奇巌城』でも『ルパン対ホームズ』でもなく『公妃の宝冠』かというと、理由は二つある。

 

ひとつはこの物語がルパンに出逢った最初の物語だから愛着があること。

もうひとつは、ルパンもの翻訳の第一人者・保篠龍緒氏によれば、もともと全三幕の戯曲として書かれたものが、小説に書き直されたというちょっと変わった経緯の作品だからだ。

 

よって、物語は演出上ほとんど屋内で進行する。『ルパン三世』のようなアクションや大追跡などはない。

つまり、ビジュアル化=実写映画であれば、ロングとアップ以外にはあまり場面のメリハリはないことになる。

 

しかし、漫画の技法を使えばロングやアップはもちろん、コマの二段抜き・三段抜き・はみ出し・見開きなどで画面は華やかかつスピーディ、サスペンスフル、スリリングな展開ができるのだ。

森田先生の筆はその技を遺憾なく発揮している。

つまり、漫画としてすごいってことだ。

 

さらに漫画ならではの醍醐味をもうひとつ付け加えよう。

ヒロインの美女ソニアが貧しい生い立ちを語るシーンなんか、めちゃ可愛くて漫画ならでは、なのだが、わたしのイチオシはここ!

 

クライマックス近く、ルパンが宿敵ガニマール警部に追い詰められ、逃げるための秘策を披露する場面。

ルパンを捕えようとするガニマール警部を警官たちが必死で止める。

「警部、いけません!」

「やつの目を見て下さい!」

その次の一コマ。

 

……これにやられました。

これが「漫画化」ってことなのだ。

小説を読んでいる人なら、皆やられること間違いなしなので、ぜひ本作を読んでみてください。小説を読んでいない人もぜひ。

 

そして、漫画からルパンワールドに入った読者さん。できればルブランの小説も読んでね。

もちろん面白いからだけど、森田先生の筆による漫画の素晴らしさがより明解にわかるから。

 

というわけで、『アバンチュリエ』シリーズでルパン熱をかきたてられたわたしは、森田先生がプロデュースする「フランス・ルパン聖地巡礼ツアー」を申し込んでしまったのだった。

 

 

 

>>>「アルセーヌ・ルパン聖地巡礼の旅」についてはこちら

 

 

 

 

 

シリーズ第一巻はこちら!

 

 

怪盗ルパン伝 アバンチュリエ 登場編 (上) 怪盗紳士 (ヒーローズコミックス)
著者:森田 崇
出版社:小学館クリエイティブ
販売日:2014-08-05

 

 

また、以前にイブニングで連載していた紙版単行本はこちら!

 

 

アバンチュリエ(1) (イブニングKC)
著者:森田 崇
出版社:講談社
販売日:2011-06-23