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「荒川区になぜ荒川が流れていないか」を知る『ブラガール』

 

 

 

東京は東側がおもしろい。

 

そんなことが語られるようになって久しい。東京の東側についてのエッセイ、都築響一『東京右半分』の序文にこんな言葉がある。

 

なるべく都心から近いこと。

なるべく家賃や物価が安いこと。

エネルギッシュな町が生まれる要素は、

このふたつしかない。

いま東京の若者たちがみずから見つけつつある

新たなプレイグラウンド、

それが「東京の右半分」だ。

この都市の

クリエイティブなパワー・バランスが

いま確実に東、

つまり右半分に移動しつつあることを、

君はもう知っているか。

 

この右半分を歩き回るマンガがこの『ブラガール』である。『大東京トイボックス』や『スティーブズ』のうめ先生の作品で、無料でサンズハウスという不動産仲介のサイトに掲載されている。

 

舞台は谷中から始まり、『解体新書』とカール・ゴッチの墓のある南千住でうなぎを食べ、大火災の延焼を防ぐ巨大防壁団地を発見し、阿部定事件の尾久であらかわ遊園に遊び、駄菓子ともんじゃでビールを飲む、など東側ならではの楽しみに溢れている。

 

第4話では押上でスカイツリーに登り、老舗の親子丼を食べ、『ブラガール』たちが歩いてきた荒川と隅田川を眺める。そして「荒川が荒川区に流れていない理由」を発見する。

 

主人公のふたりは、こうやって歩きながら、街のなかで目的地を目指して歩くときには見逃してしまう、小さなおもしろさを見つけていく。

 

次に住む街を探すという重要タスクがあるにもかかわらず、ブラブラがエスカレートしてしまうアンビバレントな気持ちがリアルで引き込まれる。

 

地図アプリで見ると、谷中から南千住までは歩いて約45分、南千住から尾久までは約1時間、尾久から押上までは1時間40分、1日時間があればぜひ『ブラガール』の足跡をたどってみるのも面白い。

このエリアは銭湯もたくさんあるので、歩いてひとっ風呂という最高の楽しみも付いてくる。

 

ブラガール サンズハウス

 サンズハウスの店舗には『ブラガール』のキャラが飾られておりマンガ好きが足を止めて店内の撮影をしている

 

『ブラガール』が掲載されているこちらのサイトでは、『ブラガール』だけでなく、新連載も始まっていて、街情報だけでなくマンガいろいろも楽しめる。西日暮里駅前には主人公のふたりもいるので、「ブラつく」ついでに覗いてみてはどうだろうか。

 

著者のうめ先生(小沢高広)からコメントをいただきました。ありがとうございました。

 

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この作品を描くまで、自分が街歩きが好きって自覚が、まったくありませんでした。いや、好きは好きだったんだけど、みんな、同じくらい好きだと思ってたんですよ。打ち合わせ先まで、2〜30分くらいだと平気で歩いっちゃって、打ち合わせ先で「タクシーで来たんじゃないんですか!?」と驚かれたりしたのだけれど、そういうことだったのかー。

 

なので、この作品は、ウチの作品の中では、いちばん「好き」だけで描いている作品になります。強いてツラかった点を挙げると、もっともっと盛り込みたいネタがあったのに、ページの都合で入らなかったことくらい。

この2人の物語は、このあといくらでも、街の数だけ描ける自信があるので、いつかまた続きを描きたいです。

うめ(小沢高広)

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うめ短編集 うめあわせ (スタジオG3)
著者:うめ(小沢高広・妹尾朝子)
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-06-26

※うめ先生の短編集、こちらには『ブラガール』は掲載されておりません。

スティーブズ 1 (ビッグコミックス)
無料試し読み
著者:うめ
出版社:小学館
販売日:2014-11-28