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『チェンソーマン』は新たな等身大ヒーロー像の観測気球か

ジャンプらしからぬジャンプ連載といわれて幕開けした『チェンソーマン』。

今月、待望の第2巻が発売されました。

 

手足が吹っ飛ぶわ、血しぶきが噴きあがるわで、少年読者には刺激が強いのではと大人の読者をヒヤリとさせてきました。

Twitterでは「グロすぎて打ち切りになったらどうしよう」という声も少なくありませんでした。

 

そんなファンに支えられて、藤本先生は絶好調にキャラと悪魔とお話をどんどん動かしています。

 

 

追う夢のスケールが小さすぎる主人公

主人公・デンジはジャンプでは異色のキャラといえるでしょう。

なんせ、夢のスケールがずば抜けて小さい!

パンにジャムを乗せて食べること→もう叶った。幸せ。

女の胸を揉むこと→約束取り付けた。幸せ。

 

ジャンプの主人公は、熱く、目標があり、不器用ながら努力で夢を勝ち取ろうとします。

NARUTOも火影を、ルフィーも世界一の海賊を、デクもヒーローを、と大きな夢を追ってきました。

しかし、このデンジは一味も二味も違います。

デンジの死闘を見たパートナーのパワーの言葉がそれを物語っています。

 

たかが胸を揉む為に……

こんな闘えるのか…?

 

連載、第1巻をお読みの方はデンジのことをよくご存じでしょう。

私はデンジを「新時代の脱力ヒーロー」とみています。

以下、深読みです。

 

 

深読み!「脱力ヒーロー」説

 

第2巻では、デンジはその夢について問うています。

「みんな、いい夢持ってていいなァ」と。そして自分の夢は見下されていると。

 

今までもジャンプ主人公は、説得力のある、でっかい夢がありました。

それに比べると、デンジに、誰もが

「それ夢なの? 命をかけるほどの夢なの? バカなの?」

とツッコミをせずにはいられません。

 

そこで、血みどろ悪魔バトルという、ジャンプ流とは異なる濃い箱組のお話です。

デンジが胸を揉むまでは死なないと叫ぶアホさ加減と、半端なく悲惨な戦闘は、足して2で割ってみると、ジャンプ濃度になります(とも言えませんかね?)。

 

さらに、デンジはなぜ、でっかい夢ではなく、身近な物事に夢を抱くキャラなのでしょうか。

なぜ、ジャンプはそんなデンジの物語を連載しているのでしょうか。

 

現代では、誰もが憧れて目指すポジションは、どんどんなくなってきています。

小学生が将来なりたい職業の5位として「会社員・事務員」を挙げています(日本FP協会/2018年小学生の「将来なりたい職業」ランキング)。

 

つまり、大きく強い夢は、今のこどもにはなかなか見つけられないのです。

でっかい夢を追うヒーローストーリーがある一方で、これといった夢を持てず、ヒーローストーリーに複雑な思いを抱いてしまう読者がでてきている可能性は決して低くはないのです。

 

そして、デンジです。

夢はそこらへんにある衣食住。

人並みにすぎないけど、自分にとっては今のままでは手に入らないもの。

そういうものが夢であってもいいのです。

 

力まずに自分なりの、誰からも憧れられない夢。

これを追う主人公、「脱力ヒーロー」は、これからの時代ならではの等身大のヒーロー像としてアリなのではないでしょうか。

藤本先生とジャンプ編集部はその手応えを見ているような気がしてなりません。

 

 

 

>>>『チェンソーマン』第1巻のレビューはこちら