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誰かに必要とされることは仕事の一番のモチベーションだからこそ、『ボス、俺を使ってくれないか』

どんな仕事でも、自分の向こうには相手がいます。

一番わかりやすいのは“お客様”だったりしますね。

人はえてして自分のためより誰かのために働いているときにこそその仕事に

喜びとか、楽しみとかを見いだせるものだと思います。

 

例えばこのレビューを書くという作業もPVがあがったとかよりは

作者さんに届いたり、実際にレビューを読んで買ってもらえたりとかした時の方が嬉しさが強いものです。

 

さて、そんな中でも世の中には“人気商売”というのがあります。存在自体に価値がそんな選ばれた人たちが就くお仕事です。

 

例えば芸能人だったり、マンガ家だったりですし、そうです、スポーツ選手もです。しかしこの人たちは人気商売であるが故の苦悩がありますし、なにより、実力が伴わないと人気すら出ないですよね。

 

前置きが長くなってしまいましたが、本日紹介するのはそんな人気と実力が無いと生き残れない世界で戦う男を描いたこの作品です。

ボス、俺を使ってくれないか? (ヤングアニマルコミックス)
著者:富士屋カツヒト
出版社:白泉社
販売日:2019-04-26

腐ってばかりもいられないけれど

主人公の石原は大卒ドラフト5位で入団した一軍登板なしの3年目若手ピッチャー。先発とかクローザーではなくて言われたところで投げる“便利屋”と呼ばれる中継ぎ投手です。

二軍での成績は“そこそこ”ネットの評判もイマイチでなんとなく先行きに不安が出てきたころ。

付き合ってる彼女ともなんとなく結婚の話やセカンドキャリアのお話しをするような緩い倦怠期。

要するに特に誰かから期待されることもない宙ぶらりんな状況。登板前にはトレーニングではなくてトランプに精を出しています。

 

そんなある日進退をかけたマウンドでの活躍が認められたのと、チーム状況が重なり一軍へあげられてあれよあれよという間に一軍に定着する活躍を見せた石原はその年のシーズンオフには年棒も倍増。

いよいよこの世の春が来たかと思った先に待っていたのは、なんとFA移籍選手の人的補償による自身の移籍でした。

 

移籍したチームは前のチーム以上に投手陣の台所事情の悪さが深刻で、便利屋稼業をしていた石原にも“先発”のお鉢が回ってきました。

 

物事が変わるのは一瞬

シチュエーションはGW真っ只中のホームゲーム。しかしながら愛しの彼女も興味なしの上に特に誰にも期待されていません。そうこれまでのようになんとなく回ってきた機会。のはずでした

 

試合が進むにつれてなんとなく変わっていく雰囲気。石原に用意されていたのは、“完全試合達成”という物語でした。

 

それからはガラッと生活は一変しました。正に“大ブレイク”というやつです。

道行く人たちからはサインを求められ、テレビをはじめとした取材攻勢にスキャンダルも初体験、選手としてもオールスターに選出されるなど順風満帆のはずでしたが、その結果酷使による登板過多。石原の肘は限界に近づいていました。

 

もちろん本人もそれに気づかないわけではありません。だけど、自分の野球人生のなかで今が一番調子がいい、自分の活躍でチームの調子もいいし、彼女のおなかの中には新しい命もデキちゃった石原はいつしか誰よりも頼りにされる

選手へと成長していたのでした。

 

誰かに必要とされるからこそ力が出せるし、力にもなる。誰かに必要とされる

人になることは実はとっても難しい。そんな石原の野球人生のこの先はみなさんの目でご確認ください。

 

プロ野球死亡遊戯 (文春文庫)
著者:中溝 康隆
出版社:文藝春秋
販売日:2018-07-10

本作の原作は『プロ野球死亡遊戯』というブログを書いていた中溝康隆氏の同名小説をコミカライズした作品で、作画は『ラブドールズ』の富士屋カツヒト センセイが担当しています。

ラブドールズ : 1 (アクションコミックス)
著者:富士屋カツヒト
出版社:双葉社
販売日:2018-06-28

本作は一巻完結の作品で非常に読みやすい作品ですので、みなさん読んで見てください。