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【イベントレポート】「漫画家のための人生設計講座 ~結婚・子育て・保険・資産運用……収入が不安定すぎる俺たちのためのお金の話」

今や世界中から、愛されている「漫画」。

 

一方で、それを生み出してきた漫画家たちの実情というのは、ごく一部の売れっ子漫画家を除いて、これまであまり注目されてきませんでした。

 

紙の雑誌の売り上げは下がり続け、熾烈な競争を経て雑誌で連載を獲ったからといって”安泰”、とは言えなくなってきています。

一方でウェブ系の漫画の仕事が増えてきていますが、紙の原稿料よりも相場が安い事が多いのが現状。

そんな将来の見通しが立ちにくい中で2019年4月27日に行われたのが、こちらのセミナーです。

「漫画家のための人生設計講座 ~結婚・子育て・保険・資産運用……収入が不安定すぎる俺たちのためのお金の話」  主催:オンラインサロン「マンガ技術研究会」  講師:後藤先生(ファイナンシャルプランナー)

*イベントは終了しています

 

当日は40人弱の漫画家が集まり、現在各々が直面しているお金の問題について、熱心にファイナンシャルプランナー後藤先生の話に耳を傾けました。

 

漫画家の戸城イチロ(広告・学習漫画家、及び専門学校講師)が、

そのレポートを質疑応答形式でお届けします!

 




「Q.連載前の漫画家志望だけど結婚しても大丈夫なの?」

A.

『今後どういう事にお金がかかるか?』を把握しましょう。

これぐらい収入があればできるんだな、というイメージを持つ事が大切です。

そこから逆算的に考えていくのがポイントです!

 

具体的に、モデルケースを2つ見て考えていきましょう。

 

モデルケース1

  • 独身
  • 30歳
  • 年収300万円
  • 生活費:11万円/月(家賃以外)
  • 家賃:6万円/月(ずっと賃貸)

年間204万円かかる。

→90歳まで生きるとすると、1億2,240万円(老齢年金1,950万2,400円を考慮前)かかる。

個人事業主は定年が無いので30~70歳まで働くとすると、306万円/年稼げばいい、という計算になります。

 

モデルケース2

  • 夫婦
  • 夫30歳 妻30歳
  • 生活費:17.4万円/月
  • 家賃(1LDK):10.5万円/月

合計で334万8,000円/年かかる。

→ 90歳まで生きるとすると、1億7,818万円((老齢年金1,950万2,400円×2を考慮前)かかる。

30~70歳まで働くとすると、445万円/年稼いでいれば大丈夫=つまり、一人223万円/年稼いでいれば大丈夫という計算になります。

 

上記を見てわかる通り、独身よりも二人の方が経済的にはかなり効率がいいことがわかります。

 

<独身と夫婦の違い>

収入面

  • 独身で600万の場合は、手取りで460万円
  • 夫婦で一人300万円×2(夫婦で600万円)の場合は、一人当たりの手取り239万×2=合計手取り478万円(累進課税の影響)

 

このように、同じ年収でも二人で協力した方が手取りが多くなります。

 

支出面 

一人が二人になっても、家賃は2倍にはなりません。光熱費も同じです。

 

「お金がないから結婚できない」、は先入観と言えます。

数字で計算すると圧倒的に、経済的にはいいという事がわかります。

そういう意味ではお金がないから結婚できないという事はありません。



「Q.子供を産むためにはどのくらい貯金が必要なの?」

A.

こちらもモデルケースを使って考えてみましょう

  • 夫婦と子供
  • 夫婦30歳
  • 生活費:17.4万円/月
  • 家賃:12.6万円/月

合計30万/月(年間360万)かかる。

  • 学費で1200万円(保育園、小~高校は公立《習い事二つ。部活動・およびお小遣い》。大学が私立の場合)
  • 学費外で1200万円

つまり、子供一人につき2,400万円必要。それを22年間で割ると109万円/年、子供二人で218万円/年かかる。

生活費・家賃360万円+子供二人の場合218万円=578万円/年となり、夫婦で一人289万円/年稼げばいい、という計算になります。

まとめると、90歳までにかかる家賃と生活費が、1億7,818万円+子供二人で4,800万円=2億2,618万円(老齢年金1950万2400円×2を考慮前)かかります。

70歳まで、40年間働くとすると、夫婦合わせて565万4500円/年稼いでいればいい、という計算になります。

ちなみに出産には50万円程かかりますが、出産一時金が42万円支給されるので、実質は10万以下の負担で済みます。


「Q.年金て、得なの損なの?(※払うのが義務です)』

A.

まずは年金制度についておさらいしましょう。

いわゆる企業に勤めるサラリーマン(正社員)には、「国民年金+厚生年金+企業年金」の3つの年金の積み立てが存在します。

一方で自営業者である漫画家には、「国民年金」しかありません。

これが、自営業者は老後が大変だ、といわれるゆえんです。

それでは、年金が、損なのか得なのかを見ていこうと思います。

1, 『老齢年金』(老後にもらえる年金)

  • 支払い金額 年金月額16,410円×12か月×40年=787万6800円
  • 支給金額 「65,008円」 /月(満額)=78万96円/年
  • これを割ると、10.1年

つまり(現在の)65歳支給年齢よりも、10年1か月以上生きると得。=75歳と2か月以上生きれば得(早く死んだら損)、という計算になります。

(2017年の日本人の平均寿命は女性が87・26歳、男性が81・09歳 )

 

国民年金には、老齢年金以外に、こういう保障もついています。


2, 『遺族年金』

遺族年金とは国民年金(または厚生年金保険)の被保険者または被保険者であった方が、亡くなったときに、その方によって生計を維持されていた遺族(「子のある配偶者」または「子(18歳以下)」が受けることができる年金のことです。

 

3, 『障害年金』

障害年金とは病気やケガで障害(一級、二級)を負った場合に支給される年金のことです。

1級 100円万弱/年

2級 78万円弱/年

(子供が居れば+22万円)

 

しかし、考えるべきこともあります。

それは年金制度が維持されるのか?、という問題です。

社会構造のパラダイムシフトにより、生産年齢人口(現役世代)が減って、年金受給世代が増えます。将来の現役世代となる未就学児も徐々に減ります。

現在は3:1の比率で支えていますが、年金制度が1960年代にできた当時は10:1でした

これが2050年だと1.5:1になると想定されています。

つまり、老齢年金を65,000円/月もらうためには、現役世代が4万3300円/月、払わないといけないのだが、それは無理ではないかと言われています。

 

とは言え、国民年金の支払いは義務ですし、『障害年金』のような保障もついてきます。できる限り納めましょう。できない場合でも免除申請はしておきましょう。



「Q.連載中に貯まった貯金はどう活用するべき?」

A.

連載終了後(無収入)に備え、生活費6か月分は預貯金で持っておきましょう。

次に、お金の価値を保つことを考えましょう

お金の価値が相対的に下がる、インフレについて

  • 1970年 80円
  • 1989年 180円
  • 1997年 210円
  • 2017年 260円

こちらは、少年ジャンプの価格の推移です(ページ数は同じ。40年で約3倍)。

 

御覧の通り物価は、ほぼ上がり続けています。

だいたい10数年で10数%は上がっています。つまり1年で1%弱は物価が上がっているということです。

 

インフレによるお金の価値の変化

例:タンス預金で100万円保管していた場合

  • 10年後 実質82万円相当
  • 20年後 実質67万円相当
  • 30年後 実質55万円相当

 

低金利時代なので、銀行に預けていてもお金の価値が目減りしてしまいます。

これは困ってしまいますよね。

そこでインフレ対策で考えることとして、少額から投資するのであればオススメは「投資信託」です。

 

投資のポイントは「資産分散」と「時間分散」と「長期運用」です。

このポイントを押さえながら投資信託をするのであれば、「つみたてNISA」という制度がオススメです。



「Q.確定拠出年金(iDeCo)ってした方がいいの? そもそも何?」

A.

iDeCo とは?

私的年金制度

iDeCoは、60歳までに定期的に長期で一定の掛金を支払い(拠出し)ながら、金融商品で運用して、貯まった資産を60~70歳までの間に一括または分割で受け取るという仕組みになっています。いくらの掛金で積み立てるか、どんな金融商品で運用するか、資産をどうやって受け取るかは、自分自身で決めます。 以下のような金融商品があります。

  • 定期預金
  • 保険商品(個人年金保険)
  • 投資信託(オススメ)

 ➡投資信託(ファンド)→運用(株式、債券など)

メリット

  • かけ金が全額所得控除
  • 運用益が非課税で再投資
  • 受け取るときの退職所得控除

 

デメリット

  • 手数料がかかる
  • 課税所得のない方は掛け金の所得控除の恩恵がない
  • 60歳までは何があっても引き出せない(病気などでも。※これが一番のネック)

 

また、iDeCo以外に、他にも

  • 小規模企業共済
  • 国民年金基金

といった制度があります。それぞれ微妙に性質が異なりますので、それぞれの特徴を見てみましょう。

 

収入が不安定な漫画家にとって、重要なのは節税効果と換金可能性ですよね。節税効果という点で考えると、毎月の掛け金限度額が一番高い小規模企業共済がもっとも適しています。

節税の必要性に応じて、前納するかどうかを決める事も出来ますしね。

換金可能性について考えてみると、iDeCoや国民年金基金は最大のデメリットである、「一度加入すると60歳になるまで支払った掛け金を引き出すことが出来ない」という点がネックとなります。一方の小規模企業共済は、解約自体はいつでも可能ですし、必要となれば融資を受ける事も出来ます。

従って、これら3つの制度で加入を考えるのであれば、まずは小規模企業共済に加入するのが良いでしょうね。その上で、余裕があればiDeCoと国民年金基金のどちらかに加入すると良いでしょう。

では、余裕がある場合に、iDeCoと国民年金基金のどちらに加入すれば良いのでしょうか?

iDeCoと国民年金基金の最大の違いは、将来もらえる年金額が決まっているかどうかですよね。iDeCoは運用成果次第では年金額が一気に増える可能性があるし、場合によっては支払った掛け金よりも減ってしまう事もあります。

一方で、国民年金基金は加入時に将来もらえる年金額が決まっているので減る可能性を気にする必要は特にないですが、予定利率が1.5%なのでそれほどたくさん増えることも期待できません。しかも、今加入した方は予定利率が1.5%固定なので、将来のインフレリスクにも対応出来ないです。

iDeCoでもらえる年金額が掛け金総額を下回るのが嫌だと思う方もいるでしょうが、実際問題1.5%を下回る利回りになることは通常はありません。それに、将来インフレになった場合は運用商品の利回りも上がるので、インフレリスクへの対応も比較的出来ると言えます。従って、国民年金基金よりiDeCoに入った方が良いでしょうね。

結論的には、加入の優先順位は「小規模企業共済>iDeCo>国民年金基金」という感じですね。



A.

漫画家の方が入った方がいい保険は→「就労不能保険」です。

手作業の仕事なので、不慮の事故や脳疾患により腕の障害が残ってしまうと仕事が出来なくなり収入がなくなってしまうという高いリスクを抱えています。

身体障害者の6%は疾病が原因でなっており、事故原因は30%なので、約1.4倍の数が疾病が原因で身体障害になっています。(原因不明、不詳は除く)

漫画家の方に限らず、歯医者や外科医など手作業で仕事をしている方は身体障害になった際のリスクが高いので、入っておいた方が良いと言えます。

また、一生涯におけるガン罹患率は二人に一人、と言われています。

しかし皆さんがイメージする、「がんで入院したら1日○○円もらえる」、というがん保険は入らないほうが良い保険です、

その理由は、

1, 国の高額医療費制度というものがあります(治療費が月額9万円を超える場合は、国から費用が支払われる)。(※収入に応じて変わります)

2, もし、ガンと診断された場合、5年ぐらい治療期間がかかります。つまり、自費9万円×12か月×5年で590万円かかる計算になります。

(※上記の場合でも、3か月連続で自費による治療費が9万円を超えた場合、4か月目以降の、自費上限が44,500円に減額されます)

ようするにそれだけの貯蓄があればガン保険に入らなくても、自分で何とかなる、という事です。

(むしろ貯蓄が無い時の方が、保険に入っておいた方がいいと言えます)

現在では大きな病気でも、多くの方が2週間程度で退院します。その為、入院保障はあまり意味がありません。

(※検査→治療方針の決定→『入院1日目→入院2日目:手術→入院3日目以降:術後の経過観察(~14日)』→退院、という流れ)

がんの保障に関しては、 がん保険という名前でない生前給付保険でカバーしましょう。

生前給付保険とは、あらかじめ定めた特定の疾病になった時に、死亡保険金と同額の保険金が生存中に支払われる保険です。(掛け捨てが多いですが3,000円/月ぐらいからあります)

「就労不能保険」「生前給付保険」この2つは入ることを検討していいかと思います。



「Q.ヒット作が出た場合、家を買うべき?」

A.

住宅ローンを組む際は3年連続で事業所得が400万円以上必要なので、一発当たって急に大金が入ったのであれば、現金一括購入しかありません。

その場合は、おそらく中古マンションなどになると思います。仮に築25年ぐらいの中古マンションを3,000万円で買った場合で、そこに35年住んだとします。(合計で60年。これぐらいまでしか持たない)

    • 管理費、修繕費、固定資産税が35年で1,200万円程
    • 35年=420か月で分割すると毎月10万円程

こう考えると、トータルは買っても、賃貸でもあまり変わらないと言えます。

持ち家の場合、将来的に売れるから得、とは言いますが、空き家が増え続ている中で、この先、築年数が古い物件が売れるとは思わない方が無難でしょう。

(もし家を買うにしても、しばらく様子を見て10年20年後に買った方がいいかもしれません)


 

このような感じで、基本的な話から、具体的な金融商品にまで、ファイナンシャルプランナーの後藤先生のお話は多岐にわたりました。

ここまでで漫画家やフリーランスって大変だなぁ~と思われた方もいるかもしれません。

確かに、フリーランスに対する国の制度が欧米各国に比べ遅れているので、不利な面はありますが、逆に、積極的に活用していけば、お得になる制度もあります。

例えば確定申告の際に、「青色申告」の申請をしておけば、家賃のうち作業スペース分を経費計上できたりします。

また所得が一定以上であれば、国民健康保険よりも、保険料が安い『文芸美術国民健康保険』に加入することもできます。

そういったことを漫画で学べるのがこちら!

 

 

難しい内容を分かりやすく伝えることが出来るのが、学習系漫画の良いところですが、まさにそれを体現したような漫画になっています。



「終わりに」

今回のレポートを書いてる、戸城イチロ自身も漫画家だからわかるのですが、

漫画家の皆さんって、ホントに頑張ってるんですよね。

 

皆さん、日々黙々と原稿用紙と向かい合い、1枚1枚積み重ねて、物語を創り上げています。

そんな現場で頑張っている漫画家の皆さんに、今回のレポートが少しでもお役に立てば幸いです!

 

文章・画像:戸城イチロ web

 


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