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編集者がやるべき唯一のこととは!?『マンガに、編集って必要ですか?』

元マンガ編集者として、このテーマはシリアスすぎて、今、頭を抱えながら書きあぐねています。

みんなして、見ないふり気づかないふりをして、何十年もやり過ごしてきたのに、もう寝た子は起きてしまった今、マンガ関係者は自らの立ち位置を決意せざるを得なくなりました。
作家さんも編集者もうやむやにしてきた自分と闘わないといけないのです。

作家さんの立場から読むと……

主人公の佐木小次郎先生は崖っぷちのマンガ家。マンガ家さんのほとんどが、佐木先生と同じポジションにいます。
連載はギリギリで継続、なんとか単行本に漕ぎつけるクラス。週刊誌連載中でアシスタントが3名いれば良いほう。やり手の編集者が担当につくことは、まずありません。

例に漏れず、佐木先生も、女性ファッション誌出身でマンガ編集初心者である24歳の坂本に担当が変わってしまいます。


打合せと称する坂本のどうでもいいダラダラ雑談に先生はイラつくばかり。
サクッと「打ち切りです」と言う神経。

 

よくある話です。

 

作家さんたちは、この手のタイプをクソ編集と呼んでいます。
ネームを見れば、ただの感想。主観が基準の「良い」「悪い」のどちらかで、さらに良くするための議論に広がらないどころか、意見を押し付けてくる。
「そんな面白くないもの書けるかよ!」
「書いたのに結局打ち切りになったじゃないか!」
クソ編集に担当された作家さんたちの話は山ほど聞いています。

 

私は先生方にこう言っています。
「彼らは編集者じゃないんですよ、出版社の社員なんですよ。社員であることと、編集者であることはイコールじゃないんです」

先生方はこう言います。
「じゃあ、どうしようもないじゃないか。マンガ家はどうすればいいんだよ」

私はいわゆるクソ編集者に当たってしまった作家さんに返す言葉をもうずっと探しています。

マンガ編集者の立場から読むと……


マンガ編集をしていた頃、社内で私につけられた二つ名は「ポンコツ再生屋」でした。
つまらない、人気がない、焦げ付き連載、編集部とこじれてしまった、という先生方を担当するのが私に与えられたミッションです。

 

その仕事、ものすごく好きでした。

 

死んだ目をして、ろくに視線も合わせてくれない先生と、何度も打合せと称した雑談をしました。
例えば、片道2時間半かけて出向き、「先生、30分だけコーヒー飲みましょう」と毎日お茶しました。


ウザいのは百も承知。
雑談から入ります。
やがて全部読んでいる先生の作品の話をします。
そして、「先生のこういう作品が読みたい」と現状の連載についてアイデアを提案します。
そのアイデアで、先生がまっすぐこちらを見て、マンガを描き始めた時のような情熱がともっていなければ、私がいる意味はありません。



佐木先生の担当の新米編集者・坂本も、まわりくどいやり方ながら、同じことをしています。



ただ、先生のやる気スイッチをガンガン押しまくるのが仕事なのです。
私は冷静に狂いながらスイッチを押しまくりましたが、坂本はまったく別の資質を持って、佐木先生の目に輝きをもたらします。

マンガ読みのみなさんはどう思いますか?

編集者は黒子として、先生と作品を支えるのが仕事です。
「編集者は、最初の読者」と出版界では言われています。読者の目で、作品が先生のひとりよがりになっていないかを見ます。
読者の目までしか持ち合わせていない編集者は「良い」「悪い」と評価し、先導役として作品を引っ張りたがるのです。

マンガは自由で冒険ができる場所。
そこで作家さんは好きに表現をしていいのです。挑戦だってどんなにしても構わない。
それが読者のためであるならば。

「読者のため」。
これができる作家と編集者が、面白いものを作れるのです。
この「読者のため」の認識や食い違いが、どこまでも個性や人柄に依存するからこそ、マンガ家と編集者の関係性、ひいては編集そのものが必要なのかは、ずっとペンディングになってきていました。

今読んでいるマンガの裏には、こうしたマンガ家さんと編集者の緊張した糸が張り巡らされているのです。
読者のみなさんは、それをどう感じますか?
こういう生々しい事情がこの作品にはリアルに描かれています。

そして、私は思うのです。
「マンガに編集は必要なのか」について、一番の当事者であるのはじつは「読者」のみなさんなのです。
マンガ家、編集者がその在り様を問われるなか、読み手はこれからどうしていくべきなのでしょうか。

作り手を導くのは読み手の意思です。
『マンガに、編集って必要ですか?』は、マンガ編集者として考えるとともに、いちマンガ読者として、これからマンガはどうしたらいいのか?と問いかけてきました。
みなさんは答えを出せますか?

(レビュアー:西野)