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新しい時代の新しい戦争は日本と中国。その漫画連載は、まさに戦争のライブ、『空母 いぶき』から目を離すな!

 

あの大戦から70年…。日中は戦うことでしか未来は切り開けないのか?

 

――戦争はリアルタイムで進行する、手に汗握るライブ感覚。今、読むべき漫画。

 

日本が空母を保有することを予見した 問題作  かわぐちかいじ氏の漫画『空母 いぶき』映画として公開される。しかしその内容は恐ろしい漫画だ。日本と中国が、尖閣諸島沖で武力衝突するからだ

 

今の中国は強大な大国だ。


大国をひねり潰す! 倒したい強国、超えたい大国があるというのは鉄板ネタで、「思想」としては健常だ。その大国に戦争をして勝ちたいと思うなら、現実としては安直だが「妄想」としては大いに健全だ。

30年前のバブル期には、その大国アメリカへの鬱屈した思いを「仮想戦記」という形にして、アメリカに勝利することを表現している。

 

あの時こうしていたらとか、この兵器が完成したらとか……。「仮想戦記」は清涼飲料のようなもので、喉ごしは爽やかでスカッとし、その瞬間は気持ちいいのだ。だが、現実にはあのような都合のいい戦争はないし、そもそも戦争は救いもないし陰鬱で悲惨だ。

 

しかし男児たるもの、このような大戦(おおいくさ)は夢なのだ。最強にして、精鋭の軍隊が戦場にて一騎当千の輝きを魅せる。それを、あらゆるメディアを通して、大いに妄想し夢想する。フィクションだからこそ、面白いし、無限の可能性を秘めいている。

 

だからこそ、読者に現実に起きているかのようなリアリティーがあたえる作品は、稀であり、やもすると感動ポルノと愛国ポルノ、そして戦争ポルノが混在する危うい内容になる。

 

 

そこで読んでほしいのが『空母いぶき』だ。


感動・愛国・戦争ポルノなんて微塵を感じさせない内容で、一挙手一投足が只々リアルの一言だ。まして、リアルとフィクションの間を
漫画という媒体を用いて戦後日本のあり方を問い続けてきた漫画家<かわぐちかいじ>が描くのだから当たり前かもしれない。

 

もちろん、この漫画の内容は、近未来日本での架空の物語だ。
<空母 いぶき>が立ち向かう“敵”は何か?
これが冷戦時なら、今はなき赤い帝国『ソ連』だっただろう。
冷戦終了後の90年代なら、『米国』か『グローバル社会全体』
しかし、この2010年代後半から20年代にかけてなら、それは、一つしか無い!圧倒的なマネーの力と経済力で世界を覆う、赤き資本主義帝国「中華人民共和国」
――つまり『中国』である。

 

 

 

©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館

 

 

 

©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館

 

 

今日の延長線上にある地続きの戦い

その中国と日本は、近い未来に尖閣諸島をめぐりついに武力衝突をすることになる。この漫画だしフィクションだ。
しかし、遠い未来でもなく、遥か昔の大戦での「仮想戦記」でもない。今日、今この場所からの地続きである「日本の明日」のことを描いているのだ。故に今、起こりうるかもの戦いなのだ。

 

<空母 いぶき>は、アメリカが保有してる、所謂ゴリゴリの正規空母ではない。あくまで今の自衛隊の等身大の装備だ。だから現在海自が運用しているヘリコプター護衛艦の「いずも」型を改装し、最新鋭の垂直離陸タイプのF-35Bを10機程度搭載している軽空母仕様に過ぎない。アメリカの持つニミッツ級空母は80機だから、もう雲泥の差だ。

 

「ビックコミック」で連載中の今は、中国軍空母「広東」の攻撃を防ぎ、戦線を維持している。しかしそれは薄氷を踏むような戦いだ。そもそも、先に記したように自衛隊側は戦闘機の数から足りていない。
一進一退の攻防が繰り広げられている。

 

さてこの戦いはどうなるのだろう?
果たして、日中間だけの戦いで終わるのか?

中国軍空母「広東」を無力化し、さらなる勝利が得られるかもしれない状況下で、いぶき艦長の秋津は政府からの停戦命令を聞けるのか?

逆に<空母 いぶき>を失った日本は負けるのか?

……疑問は尽きない、連載で原作がなくオリジナル作品だからこそ、先が読めないこの感じがもどかしいと思いつつも、次の掲載が楽しみなのだ

 

 



©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館


©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館

 

 

この漫画は、「ビックコミック」にて連載されているのライブだと思っている。リアルタイムで連載を追うライブ、そして戦争自体の推移を見守るライブだ。今後の連載が、国際社会や経済の影響を受け、変化するかもしれない。

 

 

もし連載中に

・中国が民主化したら?

・朝鮮半島が統一し「核」を保有したら?

・南沙諸島をフィリピンが奪還したら?

 

 

……現実は、何でもありで、連載というリアルタイムライブだからこそ、この国際情勢が如実に、かつ臨機応変に作品に反映されることもある。

現実の戦争を望むはいない。しかしこれはフィクションであり正しい妄想なのだ。<かわぐちかいじ>という戦後日本を見つめ描き続けてきた漫画家が魅せる、今の「戦争」絵巻なのだ。
先が読めないからこそ、連載が待ち遠しいし、その緊迫感が最高に贅沢なのだ。まだ間に合う!
単行本を今すぐ読んで、大戦(おおいくさ)を見届けよう!

 

 

©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館

 

 

©かわぐちかいじ・惠谷治 / 小学館

 

■映画サイト

https://kuboibuki.jp/

■こんな人におすすめ

 

【戦う自衛隊を見たい、戦争・戦闘状態の日本を感じたい、命のやり取りをする兵士たちの緊迫感を感じたい、未来の空母の戦いが見たい】

 

【 試し読み 】

https://csbs.shogakukan.co.jp/book?book_group_id=9963

 

(レビュアー:山本)


空母いぶき (1) (ビッグコミックス)
著者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
販売日:2015-09-30
空母いぶき (2) (ビッグコミックス)
著者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
販売日:2015-09-30
空母いぶき (3) (ビッグコミックス)
著者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
販売日:2016-01-29
空母いぶき (11) (ビッグコミックス)
著者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
販売日:2018-12-27
空母いぶき (12) (ビッグコミックス)
著者:かわぐち かいじ
出版社:小学館
販売日:2019-04-26