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あなたには「信頼」できる相手がいますか?少年漫画に求めていたものに気付けた漫画『彼方のアストラ』

 

「信頼」――…すなわち「信じて」「頼る」ことです。

 

そろそろ25歳、社会人生活4年目になって気づいたことは、信頼できる人間というものはそう居ないと言うことです。

 

心のどこかで「人は所詮自分勝手で、他人のことなんかどうでもいいんだ」と考えてきたこともあり、私は人とのつながりを蔑ろにしてきました。

 

定期的に連絡を取らない人、取る必要がない人、私が一度でも非常識だと感じた人との関係は切り捨ててきました。
今思うとひどい人間だったと思います。一方で「まあ、とは言っても私が連絡を取らなくなったからと言って悲しむ人はいないだろう」と思う自分もいます。

 

他人から興味関心を向けられていると思っていないから、平気でひどいことができる人間でした。
狭すぎる自分の視野だけで物事を考え、他人の気持ちを考えようとしなかったのです。

 

今となってはとても後悔していますが、それでも、社会の波に揉まれると友人関係だけではない人間関係が始まり、「信頼とは何か」「誠実とは何か」と考える機会が多くあります。

 

最近の自分は昔と比べて考えが変わってきたし、もっと変わっていきたい。

でも世の中は冷たいこと、ひどいこと、悲しいこと、納得いかないこと、仕方のないことであふれていて、自分も多少は”そう”でなければ耐えられない。

 

変わるべきか、変わらないべきか――。

 

そんな自問自答に苦しみ、心が病んでいた時に出会った漫画がありました。
それが『彼方のアストラ』です。

 

 

 

少年漫画に求めていたもの、それは「信頼」

 

『彼方のアストラ』は、2019年夏にアニメ化を控えており、数ある漫画賞の中でも最も有名な賞のひとつ「マンガ大賞2019」大賞を受賞した、今一番の話題作です。

 

週刊少年ジャンプで長期連載していた大人気作『SKET DANCE』の篠原健太先生が、少年ジャンプ+で連載を開始し、全5巻で完結したSFサバイバルストーリー。

 

SF要素のみならず、ミステリー好きの間でも話題になるほど、全5巻の中には大きな謎のカギとなる伏線がいくつも散りばめられており、何度読み返しても面白い作品として漫画好きの間では話題になっていました。

 

私も紹介したいと思い、「どのおすすめポイントを前面に押し出そうか…」と悩んでいたのですが、ふとこの漫画を読んで、毎回同じところで涙があふれることに気づきました。

 

 

本作は、宇宙旅行が当たり前になった近未来で9人の少年少女が惑星キャンプへと旅立ち、そこで突如9人全員が宇宙空間に放り出され、死にかけます。

 

そんな状況下で、たまたま近くにあった宇宙船に乗り込んだ少年少女たちは、様々な惑星でサバイバルをしながら自分の故郷への帰還を目指す――…という物語なのですが、その9人の中にひとり、自分たちの命を狙う刺客がいるかもしれない、といった作品です。

 

その刺客が誰なのか、なぜ命の危機にさらされるのかは最大のネタバレなので言いませんが、
この9人が繰り広げるサバイバル生活の中で、キャプテンとしてみんなを引っ張っていく存在がいます。

 

彼の名はカナタ。
運動神経抜群で、決断力に優れ、いついかなる時も体を張って仲間の命を救う、信頼できる男です。

 

普段は少しバカでおもしろくて、笑える一面もあるのですが、とにかく格好いい。

彼のまっすぐさを表すかのような台詞が作中にあります。

 

カナタさん
あなたはいつも走ってる
まっすぐに 迷わずに
初めて会ったあの時から

 

とある感動的なシーンで、仲間を救うために危険を顧みず走り出したカナタの背中を見ながら、アリエスという少女が心に思い浮かべる言葉です。

 

この言葉の通り、カナタはいつだって正直で、誠実で、仲間のひとりひとりに向き合い、多くを許し、みんなの心を救ってきました。

そして仲間に「生きる理由」を作り出し、率先して人を「信用することの大切さ」を自ら体現していくのです。

 

そんな彼だからこそ、常に命の危機が隣り合わせの宇宙サバイバルでも、みんなはカナタを尊敬し、信頼してキャプテンだと認めています。

 

 

何度か本作を読み返して、面白い、感動する、なんでこんなに泣けるんだ、どうしてこんなにこの作品のこのシーンは心に刺さるんだ…と自問自答していたのですが、ようやく気付きました。

 

わたしはカナタのような、信頼できる人間に憧れているんだ、と。

 

少年漫画は、裏表のない主人公が多く、まっすぐで自分にウソをつかない人たちが多いです。
だからこそ、周りからすればバカだと思われるような行動でも、言動に矛盾がなく、そういったところが仲間からの信頼につながっているのではないでしょうか。

 

わたしは今の生活の中で、心から信頼できる人が少ないと感じています。

でもカナタの一言一句に胸を打たれて涙し、憧れている自分は、きっと現実世界でもそんな人物を求めているのだろうな、と気づいたのです。

 

 

少年漫画を好きな理由は、もしかすると「信頼できる人物」に触れたかったからかもしれない――…。

 

 

わたしのような思いを少しでも抱えている人には、『彼方のアストラ』は絶対にずっと読み返したい大事な一作品になると思います。

 

そして人を信用し、信頼し、同時に自分がそうされる人物になるためにがんばろう、と前向きになれる、学びの多い作品でもあります。

 

ぜひ気になった方は読んでみてください。
最高の漫画です。

 

(文:こまちゃん

 

 

彼方のアストラ 全巻合本版 (ジャンプコミックスDIGITAL)
著者:篠原健太
出版社:集英社
販売日:2018-12-11