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こんな時代だからこそ、命の尊さを見てほしい。『コウノドリ』

TVドラマでは描ききれなかった本当の『コウノドリ』

 

久しぶりに漫画を読んで泣いてしまった。家で読んでいてよかった。本当に泣いてしまった。

 

悲しいから?

感動したから?

怖いから?

 

それとは違う涙だ。そう、私はこの漫画の持つ包み込むような優しさに涙を流してしまったのだ。

 

私は、この漫画を読み終わったあとにテレビをつけた。

その時、ちょうど中東の難民たちがトルコ海岸で船が沈み、その遺体を回収したというニュースが流れていた。

 

何度もテレビに流れる痛ましい事件に、命の価値が下がっていくような感覚さえある。そんな世の中に対して、「ちょっと待って」と警鐘をならすのがこの漫画だ。

 

私は想像してしまう。この亡くなったひとりひとりにはお母さんとお父さんがいる。その両親はいったいどんな気持ちで子供たちを産んだのだろうか。

 

そんなニュースを「ふーん」と受け流すことだってできたのかもしれない。

 

だけど『コウノドリ』を読んだあと、どうしても亡くなった子供たちとの関係が、「ふーん」で終わるものとして考えられなかった。

私は、母親というゆりかごを通して、すべての人間がつながっているように感じていた。

 

 

決して「お母さんのための、女性のための漫画」ではないテーマ性

 

©鈴ノ木ユウ/講談社

 

©鈴ノ木ユウ/講談社

 

 

産科医の鴻鳥サクラは、毎日いろんな妊婦を診察している。
生活保護を受けながら自分で子供を育てていく自信がない妊婦、タバコをやめられない妊婦、未熟児のまま産まれて障害が残った子供を持つお母さん。



すべての子供が、祝福されて産まれてきているわけではないことを『コウノドリ』ではとてもうまく表現している。



『コウノドリ』は、これからお母さんになる人、もうすでに出産を終えて子供が独立しているお母さんにだけ向けられて漫画ではない。

 

出産という場面だけでなく、人生のあらゆる場面で、「幸せになるためには、自分の意志で選択をして、ベストをつくすことが大事」というメッセージを送ってくる。

そういう漫画だ。

 

 

(レビュアー:鈴木かんな)

 

 

コウノドリ(1) (モーニングコミックス)
著者:鈴ノ木ユウ
出版社:講談社
販売日:2013-09-20