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この世は不公平でいつも孤独だった。いっそあの子になってしまいたい『ぼくは麻理のなか』(全9巻)

世の中不公平ですよね。特に見た目の優劣で人生って大きく変わると思うんです!

よく言われるんですよ、私の顔は”中の中”って。

 

私だってミランダ・カーみたいにかわいくてスタイル抜群に生まれたかった!

そしたら学生時代も楽しく、今だって自信をもって海に行けたのに……。

 

 誰しも一度は「生まれ変わったら何になりたい?」とか
「一日からだが入れ替わるとしたら誰になりたい?」とかって想像したことありますよね。

 

もしみなさんが、ある朝目が覚めると自分じゃない誰かになっていたとしたら、どうしますか?

 

 

 

 

主人公は小森功(こもりいさお)、大学2年生の男性です。

 

 

©押見修造/双葉社
©押見修造/双葉社

 

 

上京したらきっと新しい友達がたくさんできて、色んな出会いがあって恋なんかもして……。

当初抱いていた彼の淡い想像はその通りにはいかず、友達すらもできないまま気付けば大学に行けなくなっていました。

 

そんな彼の唯一の楽しみといえば、夜のコンビニに行き、いつも同じ時間にやってくる可愛い女子高生を待ち伏せること。

そして彼女の後を、家までつけていくのが日課です。

 

……完全にただのストーカーです。

 

この日もいつものようにコンビニに行き、女子高生の後をつけていると、突然彼女が振り返り目が合ってしまいました。

 

次の瞬間意識が遠のき、目が覚めると知らない部屋で寝ていました。

 

眼鏡がないのに、なぜか周りがよく見える。

というかここはどこだろう……? 置いてあった鏡を見てみると、

 

 

©押見修造/双葉社

 

 

なんとストーカーまでしてしまうほど想いを寄せている”女子高生本人”に自分がなっていたのです!

 

こちらがコンビニの天使こと、吉崎麻理(よしざきまり)さん。

確かにかわいいです。

 

 

ここまで読んでいただくと「あ、身体が入れ替わる系の漫画ねw」

と思われるかもしれませんが、それは違うのです!!

「君の名は。」ではないのです!笑

 

入れ替わりストーリーの醍醐味は、入れ替わった者同士がお互いどうやったら元に戻れるかを模索しながら、絆が深まっていったり、考え方が変わったり、恋愛に発展したりするところだと思います。

 

しかし、麻理さんになってしまった小森が、自分の体(小森)に会いに行くと、その中に麻理さんはいなかったのです!!!

いったい麻理さんの精神はどこに行ってしまったのか。
自分はいったいなんなのか…。

 

最初に申し上げた通り、誰しも一度は考えたことがありますよね。

好きな子に入れ替わってみたいとか、一日芸能人になって生活してみたいとか。

 

でももし入れ替わった後、元に戻れなかったらどうしますか?

 

自分がなってみたいと願うような、望んだ相手だったらいいこともあるかもしれないけど、

入れ替わった先が誰だかわからない人だったら、この先どうしていけばいいのか正直考えただけで怖くなります。

 

小森も最初は自分のつまらない人生から抜け出せた!

しかも天使とまで崇拝していた麻理さんになれた! と喜びます。

 

しかし、本物の麻理がどこかに消えてしまった……。

入れ替わってしまったことを、共有できないことがどれほど孤独であるかを思い知ります。

 

小森自身の孤独、麻理さん自身の孤独。

独特の世界観と現実味のあるキャラクターで描き上げる、押見修造ワールドの虜になる作品です。

 

誰かとつながりを感じられなくなった時、自分を見失った時、そんな世界でもあなたは生き抜くことができますか?

 

 

 

押見さんの作品が大好きで毎回新巻を楽しみにしている私。

とにかく発想が素敵で、作品ひとつひとつのテーマが凄いなと感心させられます。

 

しかし取り扱う題材があまりにも斬新かつ壮大なので、話がまとまりきらずに終わってしまった作品があったと感じることもありました。

もちろんdisではありません! もっと読んでいたい! もっと描いてほしかった! と思わせてくれる作品ばかりなのです。

 

『ぼくは麻理のなか』も、巻数が進むごとにどんどん引き込まれると同時に、終わってほしくない! っていうかこんな面白いところから終われるの!? というワクワクが止まりませんでした!

 

しかし、そこはさすが押見先生です!

最終巻を読み終わった時、押見ファンは誰もがこう思ったでしょう。

 

”そうキタかーーーーー!!!!!(納得)”

 

しっくりくる終わりを迎えるって、こんなにも気持ちいいんですね!

 

いい意味で読者の期待を裏切りつつ、しっかりとまとめらた内容に拍手しかありませんでした。

欲を言えば、麻理の生い立ち編などの別冊があったらもっと嬉しいです!

 

完結作品なので、ぜひ読んでみてください。