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もう働けない、でも辞められない。そんなあなたに読んでほしい漫画『みんなで辞めれば怖くない』

ブラック企業、加重労働、さまざまなハラスメント。私たちの「働く場」が壊れかけている。政府は働き方改革を急ぐが、本当に改革が必要な職場にまで届くには、いつまで耐え忍べばいいのだろうか。

 

入社3年目。主人公の斎藤は、長時間のデスクワークに疲れ、天井を眺めていた。

自分で人生を選択してきたつもりだったのに、“気づいたら働いていた”とふと感じていた。

 

 

 

 

上司の具体性のない根性論に疑問を持ちながら。度重なる社内飲み会に無意味さを抱きながら。

そして、業務と無関係な仕事が突然振ってくる機会に辟易しながらも、作り笑いで元気な返事と御礼を言えばいいんだということが身についてしまっていた。

 

上司が早く来るから、より早く職場に到着することにも慣れ、誰もいない夜中のオフィスでの残業に、もっとも集中できる環境なんだと思い込む。

身体は限界、心は一杯、そんな斎藤の日常に変化が生まれたのは「みんな」が多様な観点から示唆を与えてくれたからだ。

 

 

ある少女ユイは問う。

 

どうしてこんなに早くいくの?まだ始業までかなりあるのに・・・

 

斎藤は答える。

 

しょうがないよ
 そういう風になってるんだから

 

始業前の出社に遅れた斎藤に、そのままでは人間的に成長できないと説く上司を観て、ある男性タダシは憤る。

 

都合よく人間的成長なんて言いやがって
 人間が人間である限りどうなっても人間的成長だ

 

ちゃんとメールで提出した資料を業務に関係ないメールに埋もれさせ、それは斎藤の責任であり、数クリックで消える不確かなものではなく、信頼できる紙で出せと言う上司。

 

落胆する斎藤に、考古学者のスコットは示唆する。

 

でもコピー用紙なんか100年程度で劣化する・・・本当に遺したいと思うなら『石』だ

 

それ以外にも多士済々の友人が斎藤にかかわっていく。

 

それでもなかなか辞めることが決断できない斎藤も、ついに倒れる。

心身が摩耗し、身動きが取れなくなった斎藤に、友人らは改めて「辞める」ことを支える。

 

そして、決断の時が訪れる。斎藤は辞めることを選ぶ。

 

しかし、辞めることの決断を行動に移せないからこそ、辞められないままずるずると行ってしまうのは、漫画に限らずここかしこであるだろう。だからこそ、『みんなで辞めれば怖くない』のだ。

 

クライマックスに訪れる退職宣言、そして、退職後の斎藤は・・・

 

本書は、明らかにひとを破壊する職場で、そこにいる正当性を自ら作り、心身を壊していく個人、そして、それを見た周囲のかかわりによって、「おかしいこと」「このままでは死んでしまうこと」を理解させる。

 

そして退職の決断へ。

 

周囲に斎藤のようなタイプの友人がいるかもしれない。

そんなとき、周囲はどのようなかかわりをしていくことがあり得るのか。

非常に示唆に富んだ漫画である。