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どんな敵も一撃必殺!戦いの感情を失ったヒーローの孤独と苦悩を描いた物語『ワンパンマン』

「ヒーロー(英語:HERO)」

 

それは悪いヤツらから人々を守る「正義の味方」「平和の使者」「世界の救世主」。

日本が誇る特撮番組『ウルトラマン』や『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』などに登場するヒーローは、いつの時代も子どもたちの憧れです。

 

なぜならヒーローは“強い”から。

たまに強い敵が現れてピンチになることもあるけれど、そんな時は特訓とかで強くなって最後は必ずヒーローが“勝つ”から。

ヒーローと敵の“強さ”のバランスってそういうものだから。

 

でも、もしその<お約束>が崩れてしまったとしたら……?

 

 

私が今回ご紹介したいのは“強くなりすぎたヒーロー”の漫画『ワンパンマン』です。

 

ワンパンマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
著者:ONE
出版社:集英社
販売日:2016-06-03

 

こちらは「原作:ONE、漫画:村田雄介」先生方による作品で、現在「となりのヤングジャンプ」で連載中です。

このレビューを書いている時点では、コミックス<18巻>まで発売されています。

 

主人公・サイタマは就職活動中のただの一般人でしたが、怪人に襲われている子どもを助けたことがきっかけで、幼い頃の夢を思い出します。

悪役をぶっ飛ばす「ヒーロー」になりたかった夢を。

 

そして就活をやめて死に物狂いで特訓を続けた結果、念願のヒーローになれた彼でしたが、なぜか心は満たされませんでした。

 

彼はあまりにも“強くなりすぎた”のです。

 

どんな凶悪な敵も、どんな巨大な敵も「パンチ一発(ワンパン)」で倒せてしまうため、戦いが終わった後の彼の心には「虚しさ」だけが残りました。

 

ヒーローなら誰もが欲しがる「強さ」を手に入れた代償に、彼は緊張感や昂揚感といった「戦いの感情」を失ってしまったのです。(あと「髪の毛」も)

 

 

物語中、彼の心境が痛いほど伝わってくるセリフがあります。

俺はもう負けて流す悔し涙の味も、接戦の末の勝利の感動も忘れてしまった

ヒーローがこんなに孤独なものだとはな…

……なんということでしょう。

ヒーロー漫画史上、ここまで敵との力の差にガッカリしたヒーローがいたでしょうか。

 

確かにゲームとかで「主人公が最初からレベル最大の状態」だったら、ザコとの戦いはおろか中ボス戦やラスボス戦も盛り上がらないでしょう。

斬新なバトルシステムも、泣けるストーリーも「ゲームバランスが崩壊している状態」では遊んだ時の興奮やクリアした時の感動は大きく失われてしまいます。

 

そう思うと、彼が自らの境遇や将来について悲観してしまう気持ちも良く分かります。

 

 

しかし、そんな諦めムード全開だった彼の心に、仲間の言葉が突き刺さります。

強くなっただけで目的地に辿り着いたと勘違いしてるんじゃないか?

サイタマ氏は「最強のヒーロー」であっても「最高のヒーロー」にはまだなれていない

戦いの中に充実感を得ようとするのはヒーローの本質的に間違っている、と仲間は語ります。

そして「最高のヒーロー」という理想を追求することに今後の伸びしろが残されている、と。

 

……深い、そしてなんと考えさせられる言葉でしょうか。

このやりとりが行われる「第118話」は主人公・サイタマのターニングポイントであり、彼の孤独や苦悩を見続けてきた読者に一筋の光が差し込む重要な回だと思います。

 

本作は基本的にバトルシーンがメチャクチャ面白いのですが、日常シーンにも重要なメッセージが多く含まれているので、どのページも隅から隅まで目が離せません。

 

さあいよいよ、2019年4月から<TVアニメ第二期>がスタートします。

本作をまだ読んだことが無かったという方は、これを機にぜひご覧になっていただきたいです。

 

そして皆で、主人公・サイタマが『最高のヒーローとは何か?』の答えを追い求めていく姿を見守り・応援していきましょう!

 

ワンパンマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)
著者:ONE
出版社:集英社
販売日:2016-06-03