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未来の『キングダム』を探せ!歴史漫画ベスト3『ヒストリエ』『ゴールデンカムイ』『サンチャゴ』

『ヒストリエ』(既刊10巻)

 

あの大傑作『寄生獣』を描いた、岩明均による最新作だ。

現在「アフタヌーン」で不定期連載中で、単行本は10巻まで出ている。

 

1年に1冊出るかどうかというペースだが、まだ読んでいない人は、完結まで待たずにリアルタイムで読むことをお勧めする。

『寄生獣』以上の大傑作が生まれようとしているのだから、リアルタイムで読まないともったいなすぎる。

 

僕自身も1巻だけを読んだ時は、うまくハマれなかった。主人公のエウメネスの魅力もよくわからなかったし、物語も動き出さないし。

でも、5巻が出た時にまとめて読んで、どハマりした。それ以来、新作をもっとも待ちわびている作品だ。

 

エウメネスも『寄生獣』のシンイチのように、一見、どことなく捉えどころのない性格だ。でも、よく知ってくると、すごく魅力が伝わってくる。

 

マケドニア王国のアレクサンドロス大王に仕えた書記官・エウメネス。彼を主人公にした作品の構想を岩明均さんは、デビュー前からずっと温めていたそうだ。

エウネメスはほとんど資料が残っていないというのに、とてもリアルに描かれている。周辺資料を読み込み、そこから想像力を駆使したのだろう。

 

僕は『ヒストリエ』を読んで、エウメネスがすっかり好きになり、どんな人なのか本を読んだり、ネットで検索して知ろうとしたのだけど、ほとんどまともな資料を見つけることすらできなかった。

読みながら、物語の面白さだけなく、作家の想像力のすごさに感嘆せずにはいられない。

 

司馬遼太郎や塩野七生の歴史小説が好きな人は、絶対に『ヒストリエ』にはまるだろう。

昔は「所詮、マンガだから」という言葉が、史実などがいい加減で、リアリティがないといことに使われることが多かった。

 

しかし、最近のマンガでは、小説以上に調べていることが多く、物語に奥行きがある。

『ヒストリエ』は、その最高峰にある作品だ。

 

 

 

ゴールデンカムイ(既刊16巻)

 

「週刊ヤングジャンプ」で連載中の作品。

 

日露戦争後、北海道へやってきた元兵士・杉元。網走監獄囚の隠した莫大な埋蔵金を巡って、警察、第7師団、脱獄囚らと不死身の杉元が、争い合う。

 

物語の魅力は、一攫千金を求める男たちの駆け引きだ。

不死身の杉元が、いかにして不死身なのか、どれだけ追い詰められても本当に死なないのかが、気になって読み進めるのだが、この作品に奥行きを与えているのは、アイヌ文化についての情報だ。

 

杉元を助けるアイヌの少女・アシリパを通じて、アイヌ文化が描かれている。非常によく調べられていて、どのような食文化だったかなどが伝わってくる。カワウソとか、リスとか、僕らの食文化だと絶対に食べない食材の料理も作中で描かれている。

 

 

 

『サンチャゴ』(全3巻完結)

 

「月刊!スピリッツ」で連載中の作品『SANTIAGO(サンチャゴ)』。単行本は全3巻完結。

紹介した他の2作品に比べたら、認知度は低い。でも、この作品を僕はもっとも推薦したい!!

 

本作は島原の乱を描いた作品である。それを軸にしながら、天草四郎、謎の南蛮人・ディエゴ、隠れキリシタンのサチという、3人の人生模様を描いていく作品だ。

 

作者の円城寺さんは、画力がすごい。絵から、どれだけ資料を読み込んでいるのかというのがしっかり伝わってくる。

これだけ資料を読み込む力がある人が、諸説ある島原の乱をどのように解釈してくるのか、すごく興味が湧く。

 

物語を描くとき、善悪の対立にしてしまうと、物語の構造は一気に楽になり、分かりやすい物語になる。

作品を作っていると、そのような分かりやすい二元対立として、物語を進めてしまいたい誘惑にかられるときが確実にある。

しかし、現実は決して、二元対立ではない。お互いの正義があり、その正義と正義のぶつかり合いが、現実だ。

 

物語でそれを描こうとすると、すごく難しい。しかし『サンチャゴ』は、確実にそれを描こうとしていることが伝わってくる。

天草四郎を迫害されていて、かわいそうな人としては描いていない。悪代官に見える人たちですらも、組織の中の歯車ですらしかなく、悪ではないということが伝わってくる。

 

円城寺さんという人は、どのような人生観、人間観を持っている作家なのか。

『サンチャゴ』は、それが伝わってくる傑作になるだろう。

 

やはりヒットするかどうかというと、他人の興味を惹く、キャッチーさが重要になる。

『寄生獣』の岩明均が描く!とか、アイヌ文化のグルメ情報が満載、とかと比べると、『サンチャゴ』はキャッチーなところがどこもない。

 

僕はマンガ業界に関わるものとして、このように誠実に描かれ、作家が自分と向き合っている作品にも売れてほしい。

『サンチャゴ』という作品だけなく、円城寺真己という作家自体に注目していこうと思う。

 

サンチャゴ 1 (ビッグコミックス)
著者:円城寺 真己
出版社:小学館
販売日:2014-09-30