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今日勝つために負け続けた、大人達の執念の群像劇『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』

『涙って こんなに熱いのかよ…』

 

我々が普段何気なく読んでいる漫画。

たかが漫画。そう思われるかもしれませんが、その裏にはやはり、僕達が知らなかった熱い想いと戦いの日々が隠されていました。

 

今回ご紹介する作品は、日本の漫画史に残る雑誌の”創刊までの熱い物語”を描いた『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』です。

 

 

 

『ルーザーズ(=敗者達)』の作品名が示すとおり、本作の主人公達はみな夢に破れ挫折を繰り返し、いつの間にか埋没した日々を送っていた人達です。

 

いつから胸の高鳴りを忘れてしまったんだろう?

いつから夢を見なくなってしまったんだろう?

いつから冒険しなくなってしまったんだろう?

 

時はまさに高度成長時代真っ只中の昭和40年代、日本という国に漫画という文化が根付き始めた頃。

大人が漫画を読むなんて事が当たり前になるもっとずっと昔の時代のことです。

 

子どもと大人の中間、「青年」という言葉が生まれ、戦争を知らない子どもたちが大人になりつつあるようなそんな時代。

 

双葉社で『漫画ストーリー』編集長を務めていた清水文人(しみずぶんじん)は、現状にそれなりの満足はしながらも、いつクビになるか先の事を憂いながらの毎日を送っていました。

 

周りの人間も、大手出版社では採用されず最後の最後に双葉社にたどり着いたような、まさにルーザーズの集まりの中。

それでも彼は、常に新しい可能性を探していました。

 

そんな大人達の前に、ひとつの才能が現れます。

その男の名前は加藤一彦(かとうかずひこ)。

 

え?誰だよそいつ?ですって?

じゃあこっちの名前で言えば分かってもらえるかな?

 

その男のペンネームは

モンキー・パンチ

 

そう、あの今なお続く国民的作品『ルパン三世』を生み出した作者です。 

加藤一彦もまた、新しい可能性に挑戦しながら自身の行く末を模索していました。

 

当時の漫画は、当たり前ですがメインターゲットは「少年少女」。

大人が楽しむようなものは、ひとコマでの風刺漫画のような時代でした。

 

 

そんな中で、加藤一彦の画風は今までにない新しいものでした。

ストーリーもハードボイルドでビターなもの。

 

これだ」清水は直感的にそう思います。

 

この勝負に負ければ敗戦の責任を負い、会社には居られなくなる。

しかし胸に燻り続けている「革命の時」に必要な「新しい何か」が目の前にある

悩みに悩み続けた清水は、ある決断をします。

 

大人のためのストーリー漫画を中心とした雑誌を作る。

俺が革命を起こすんだ!

 

周りからは反対の声しかありませんでした。

先程も述べたように、この当時漫画は大人の読むものだったからです。

大人にストーリー漫画は向かない、もっとハッキリいえばそんな雑誌が売れるわけがない。

 

しかし清水は、加藤一彦にモンキー・パンチという新しい名前を与え、自分の直感を信じました。

そして探し求めていたもう一人の天才「バロン吉元」を迎え入れ、変わりゆく時代に対して革命を起こします。

 

大人は漫画を読めない?

大人漫画はあっさりとした絵じゃないと読まれない?

 

本当に?

それが常識?じゃあ常識ってなんなんだよ!?

 

時代は変わりつつあるそんな世界に俺が、革命を起こすんだ!

 

清水の熱意は「増刊漫画ストーリーアクション特集号」という形になって世の中に現れる。

そしてその好評を追い風に、いよいよ本格的な漫画雑誌の創刊に取り掛かる。

 

動き出した物語。

熱い男達の物語に涙腺は決壊しっぱなしです。

 

最新刊2巻が発売されたばかりの本作は、その勢いのまま、マンガ賞の多くにもノミネートされました。

皆さんも今一度バック・トゥ・ベーシック。あの頃へタイムスリップしてみませんか?