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奇作にして歴史的名作『ウルトラヘヴン』の続きが読みたくてこのままじゃ死ねない

小池桂一という天才

 

小池桂一という漫画家を知ってますか?

 

漫画好きの、特に中年以上のオジサン達なら誰しも知ってるだろうし、今日紹介する『ウルトラヘヴン』も代表作にして稀代の名著と呼ばれる作品なので、何を今更なんて言われそうだけど、もしまだ知らない人たちのために、久しぶりに紹介してみますね。

 

小池先生は1976年に集英社手塚賞を、当時最年少の16歳で受賞して漫画家デビューしました。

緻密で繊細な高い画力も素晴らしいですが、何より彼の特徴は独特な表現方法です。

それが一番分かる作品にして最高傑作と名高いのがこちら。

 

 

 

 

小池作品はサイケデリックコミックやペーパードラッグなんて呼び方をする人もいますし、実際本作でも、誰もがアタリマエにドラッグができる世界で、主人公も完全な薬物中毒者です。

 

ただ、薬物を礼賛するとかってそんな話じゃないのでご安心を。

 

元々僕は音楽でサイケやトランス、ドゥームやポストメタルなどなどが大好きなんですが、こういう音楽って元を辿れば民族音楽に行き着くと思ってます。

 

で、民族音楽って特に原初の姿に近づけば近づくほど、音楽でトランス状態に陥って肉体から精神を開放し、神様と交信するための手段になっていくんですよね。

 

最近ではあちこちの国で合法化されてきている大麻なんかも、同じく儀式などで音楽とセットで使われて、よりトランスしやすくなるツールだったワケです。

 

僕はモチロンドラッグとかは一切やりませんが(笑)

そんなものをやらなくてもサイケデリックな映像を見たり、逆に真っ暗闇で何も見えない中で爆音で音楽を聴き続けていると、次第に身体と空間との境界が曖昧になり、やがて全くわからなくなって、不安と快楽が入り混じったトリップ状態になれるというのを良く知っております。

 

これはどんな感じなのかを言葉で説明するのは本当に難しいんですけど、それをまさかの絵で見事に表現したのがこの作品なんです。

 

 

現実と仮想、肉体と精神の境界はひどく曖昧なものだ

 

序盤はドラッグによって現実から徹底的に意識を剥ぎ取られますが、そこにさらに「ニューロ・アンプ」という意識をバーチャルの世界に持っていく機械が出てきてからは、もう何が現実なのか分からなくなります。

 

最近バーチャルゲームの世界で、まるで現実と変わらない感覚で遊んだり冒険したりといった小説や漫画も増えてます。

しかしただでさえトリップ状態にある人間が、そんな世界にダイブして瞑想なんか始めちゃったら、そりゃもう危険なんてものじゃありません。

 

読まされているこっちも物凄く不安になってきた頃に、突然恐ろしい言葉が突きつけられます。

 

「私たちが知覚する現実とは 私たちの脳によって生み出されるバーチャルである」

「ふだんあたしたちが知覚してる現実なんて 無数の錯覚の最大公約数にすぎないのよ」

「計算が止まれば世界は無限の神秘と化すの……」

 

こうなるともう漫画を読んでるだけだったはずなのに、またたく間にトリップ状態にスイッチを入れられてしまうわけですよ。

 

自分とは何か。

現実とは何か。

それを考えているのは本当に自分か。

 

もう頭の中でぐるぐるぐるぐる思考が止まらなくなる。

 

いつか完結する日は来るのか??

 

恐ろしいことにこの作品、現在3巻まで出てるんですが、まだ未完なんですよ。

しかも3巻が出たのが2009年。

1巻が出たのが2002年、2巻が2005年と元々刊行ペースはかなり遅かったのですが、3巻が出てから10年経つと、さすがにこれは本当に次の巻が出るのかな?と心配になります。

 

先生はモチロン健在で、去年フランスのアーティストのMVのシノプシスを手がけられて、久しぶりに名前を拝見しました。

でも漫画は長らく出ていないので、ぜひ先生にはこの名作の続きを僕らに届けていただきたいと切に願っております。

 

 

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ウルトラヘヴン1 (ビームコミックス)
著者:小池 桂一 出版社:KADOKAWA / エンターブレイン 販売日:2015-03-02