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『Bread&Butter』婚活に疲れたアラサー女子は「あたたかいパン」でもかじってみたらどうです?

誰かと美味しいものを食べた後、それは「幸福の記憶」として私たちの中に長く残ります。

 

私は両親が共働きで小さい頃、子守りに来てくれていたおばあちゃんの作るおはぎを、こたつで一緒に頬張った記憶があります。

同時に鮮明に思い出すのは、あずきを煮るでっかいお鍋がコトコトいう音や、もち米が炊飯器で炊ける時の匂い、おはぎを一口かじった時のあのもっちり感です。

 

両親がいない昼間の寂しい記憶はもちろんないわけではないですが、今振り返ってみても、私の幼少期が比較的幸せな感情が多いのは、おばあちゃんと笑い合っておはぎを食べた「幸福の記憶」のおかげであると思います。

 

Bread&Butter 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)
著者:芦原妃名子
出版社:集英社
販売日:2014-06-25

 

この漫画の主人公の柚季も、誰かと美味しいものを食べる事が幸せだと感じ、それは後に「幸福の記憶」となって自分の中に積み重なっていき、それが人生を紡いでいく一つの力になると信じている1人です。

柚季が作品中で好んで食べるのはおはぎではなく専らパンなのですが…。

 

柚季は12年間続けてきた小学校教師の職をある事件をきっかけにやめ、34歳という自身の年齢もあって無職で婚活に勤しみ、惨敗していました。

そんなある日、近所の文房具屋に立ち寄ると、そこではパン屋も営まれているということで、そこで焼かれた美味しいコッペパンを食べ、柚季は思わず笑顔になります。

 

そして美味しいパンに魅了され、そこでパンを焼く原という店主に出会って2度目で勢い余ってプロポーズしてしまいます。

しかし、原の返事は「いいですよ、結婚しても」となんとOKだったの です。

 

 

美味しい美味しい焼き立てのパンを食べるとき、あなたは何を思い浮かべますか?

私は「美味しいなあ、このパン」と思いながら、「誰かとこの美味しいパンを一緒に食べたい」と思います。

 

「一緒に美味しいパンを食べたい」と思うその人は、間違いなく私にとっての大切な人のうちの1人です。

 

柚季も会って2度目の原田に勢い余ってプロポーズをしてしまったのは「この人となら美味しくご飯を食べられるから」と直感的に思ったからではないでしょうか。

 

 

美味しいご飯は、今のこの瞬間の幸せを生み出します。そのたった一瞬一瞬の幸せが積み重なって、後に振り返った時に、それが「幸せな食事の記憶」として自分の中に残っている事に気付くのです。

 

どうせ人生を長い時間過ごすなら、「幸福な食事の記憶」が積み重なった方が幸せです。

主人公たちも「美味しいパ ン」の力で少しづつ「幸福な記憶」を増やしていきます。

 

今までが「不幸な食事の記憶しかない人」も、そもそも「幸福な記憶」の存在なんて信じていない人も大丈夫、この漫画を読んでこれからいくらでも自分だけの「幸福の記憶」を紡いでいけばいいのです。

 

「美味しい食事があればそれだけで幸せ。」というわけにはいかないことも多いかもしれません。

だけど、美味しいごはんが、人に幸せな思い出を増やすことは間違いありません。

 

それで世界が明日100%変わることは難しいけれど、毎日の会社に向かう満員電車や、タスク書類の山が雪崩を起こしたり、上司に理不尽に怒られたり、そんな現実に立ち向かうのに1つのきっかけをくれます。柚季の日常を見ているとそう思えます。

 

 

「美味しいパンがあれば、明日はほんのちょっとだけ幸せ。」そう思いながら今日も『Bread&Butter』の柚季のようにパンを買いに出かけます。

 

今日は三軒茶屋のパン屋さん「シニシアンシニフィエ」の黒糖とくるみのチャバタかな。

焼きたてのパンの香りとふかふかのパンを頬張れば、今日もちょっとだけ幸せです。

 

Bread&Butter 8 (マーガレットコミックスDIGITAL)
著者:芦原妃名子
出版社:集英社
販売日:2018-12-25