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『「ネット時代の近未来に向けたマンガ作り」架神恭介×佐渡島 庸平 対談イベント』

ネット漫画界の先駆者、架神恭介さんをゲストに『「ネット時代の近未来に向けたマンガ作り」架神 恭介×佐渡島 庸平 対談イベント』が10月15日にメディアドゥ社内で開催されました。

「戦闘破壊学園ダンゲロス」など漫画原作者として活動するクリエイターとしての顔を持ちながら、高い考察力・分析力を活かしてマンガ新連載研究会にも携わり、様々な挑戦をなさっている架神さん。

今回の対談では、架神さんの様々な挑戦に切り込みながら、近未来のネット漫画づくりを考えていきます。

先駆者に聞く!版権元が二次利用を賢く活用する方法

―――架神さんは創作者でありながら、ご自身で創作された作品の版権をフリーにしてらっしゃると伺いました。

架神 正確には、二次創作をフリーにしています。

―――ということはTシャツの発売も自由で、特に監修されていないということですよね?

架神 逆に自由にやってくれる方が困らないですね(笑)

佐渡島 「版権フリー」は一つの戦法としてはありですよね。ただ最高にIPが大きくなったときに結構困るから、どこをゴールにするかだと思います。

※IP…ここでは主に「漫画・アニメ・ゲームの版権」の意味で使われています。

架神 そうですね。ダンゲロスに関してはある意味成功して、ある意味失敗したなと感じています。

まず精神性が横田先生に響いたことで、横田先生がコミカライズしてくれたという点では成功だと思っています。ただ、二次創作がフリーということはグッズが誰でもつくれることを意味します。

そうするとアニメの製作会社が独占販売できないから、アニメ化はできないと言われてしまったんです。それで講談社の方も横田先生も僕もがっかりしたということがありました。

佐渡島 海外にも持っていけなくなっちゃいますよね。例えばハリウッドでの映画化や、Netflixでのドラマ化だと今の架神さんの方法では出来ないと思います。

「二次創作フリー」にするとしても、そういった公式でのメディア展開が担保できるような方法にすると、将来的にさらに大きくしていける気がします。

架神 そういう意味では当時よく分かっていなかったので、皆で困っていましたね。

佐渡島 でもこういった挑戦はすごくいいと思う。

架神 やっぱり作るときに世間を騒がせないと、情報が広まらないですよね。だから「何かしらやらないと」と思いました。講談社の担当さんも当時とても一生懸命に取り組んでくれて、弁護士のところへも確認しに行ってくれました。

佐渡島 版権元がフリーにする分にはいくらでも自由ですからね。

架神 法的にはただ宣言してるだけという感じなので、文面的にどう書くかについて講談社さんも相当頑張っていた感じでしたね。この作品はコピーは禁止だけど、翻訳して英語版などを勝手に作ったり売ったりして構わないとしました。

佐渡島 書き方次第ですけど、勝手にコピーして発売してもいいんですか?

架神 デッドコピーでなければ。

デッドコピーとは、許可なく他者の製品や商品を模倣した物のこと。

佐渡島 ファンは勝手にコピーして発売したりしないから、実際は大丈夫なんでしょうね。

架神 悲しい誤算としては、みんなが思ったほどこのIPを使ってお金儲けをしてくれないというのがありましたね。

佐渡島 そうですね。架神さんのように二次創作フリーにはしていないのですが、宇宙兄弟もいくつかの画像を無料で使えるようにしています。

一度『宇宙兄弟』×「メルカリ」でコラボしたことがありました。無料で使用できる画像などを使って制作した『宇宙兄弟』関連のグッズを、メルカリ上で売ったら出品者にももちろん売上が入るし、版権元であるうちの会社(コルク)にも一部ロイヤリティが入るという仕組みだったのですが、そんなに多くは作られませんでした(笑)

架神 佐藤秀峰さんのような二次利用フリー化はもう難しいのでしょうか。インパクトが薄いんですかね?

※佐藤秀峰先生は『ブラックジャックによろしく』の二次利用フリー化を実行されています。

佐渡島 佐藤さんの場合は、商品化というよりも広告利用が盛り上がった印象ですね。

漫画などを広告で利用する場合「その絵をもう知っている」ということが重要なので、『宇宙兄弟』も広告利用であれば、画像使用フリーにすると多くの企業に使われて、広告した商品の売上に貢献できると思います。

でもそこ自体は作家の権限があるため、コルクは広告利用では画像使用フリーにしておらず、ファンアートとして何かを作るときだけフリーとしています。

この会場にいる人の中で、Tシャツを自分でデザインして出したことある人はどれくらいいますか?(3人が挙手)

そういうことをやっていておかしくなさそうな業界でも30人中4人ということは、世間だと興味を持ってTシャツを作る人って、多分もっと少ないと思うんですよ。

それをさらに作品の読者の方に絞っていくと、もっと少なくなってしまいます。  

架神 Tシャツはそれを着て人前に出なきゃいけないという前提があるので、デザインセンスに自信のある人じゃないと作れないという背景があるらしいです。どんな商品を作ればいいかというところがハードル高いですよね。

―――架神さんの『ダンゲロス』シリーズはボードゲームも作ってらっしゃるんですよね?

佐渡島 ボードゲームから始まったんですか?

架神 違います。インターネット上で、エクセルなどを使って遊ぶゲームがスタートですね。そこから小説になって、漫画になって、ボードゲームにしたという感じです。

佐渡島 ボードゲームが最後なんですね。

―――これは人狼みたいにファンが集まって楽しむものだから、そういう意味で面白いと思いました。ボードゲームのイベントを開催したんですよね?

架神 イベントというか、毎週金曜日にボードゲーム大会を開催してます。

―――毎週金曜日!?すごいですね。

架神 前提として、自分が作りたくてやっていたんです。

―――なるほど。自分でゲームを作りたい人だったんですね。

架神 自分にとって最高に面白いゲームを作りたいんです。作って、一緒に遊んでるという感じですね。

ぶっ飛んだ世界観の漫画はどのようにしてできていくのか?

―――架神さんは今「マンガ新連載研究会」をごとう隼平さんと運営されているんですね。ご自身でも『完全教祖マニュアル』を出版されていますし、とてもユニークだと思います。

佐渡島 架神さんはどのようにして作家になったのですか?大学時代から文筆活動をやっていたとか?

架神 文筆活動はやっていなかったですね。当時はミュージシャンになろうと思っていました。バンドをやっていたんですが、インディーズならライブに100人くらい来てくれれば食べていけるなと思っていました。

その当時から音楽を作っている中で文章を書くことが少しあって、そっちのほうが評価が高かったんです。あるときリアルパンクロッカーを目指すみたいな内容のライブをやって、そのサイトを作ったら書籍化したという流れですね。

佐渡島 それで一冊目の『完全パンクマニュアル』を書いたんですね。

架神 そうです。ライブ中に「お前はベースが上手すぎるから、限界まで下げろ」とか「左利きでやれ」とか指示されて、どんどん演奏を下手にしていくという内容をサイトにして、あちこちに持ち込んだら本になりました。

佐渡島 それでいきなり書籍化したんですね。就職はしなかったんですか?

架神 僕は早稲田大学第一文学部にいたんですけど、そこは就職率約50%ぐらいで、周りが誰も就職の話をしていなかったんです。大学4年生の秋くらいに就職という概念を知った感じでした。

佐渡島 じゃあ、その後普通に働き出したんですか?

架神 フリーターとして働いていました。

佐渡島 そのあと小説を書いたんですか?持ち込みは講談社ボックス?

架神 そうですね。しばらくこういうノンフィクションを書いてました。さっきも言いましたがもともと『ダンゲロス』はゲームとして作っていたので、それをノベライズ化しようかなと思って小説を書き始めました。

佐渡島 ボードゲームではなく、ネットゲームをノベライズ化したんですね。

架神 その小説が長くなったので、賞に出してみたら受賞したという感じです。

佐渡島 作家になる道としてはトントン拍子じゃないですか。苦労せずに作家になった感じがしますね。

架神 でも、3回くらい書き直してます。最近は「少年ジャンプ+」で『終極エンゲージ』という漫画を描いていた友達に見せたら、すごいダメ出しされて「あと3回くらい書き直したら賞取れるよ」って言われたんで必死に書き直しました。

佐渡島 すごい素直ですね。それでその小説が漫画化されたんですね。『ダンゲロス1969』は小説がもともとあるんですか?

架神 これまでの漫画の仕事でいうと『ダンゲロス』シリーズは先に小説がありました。『放課後ウィザード倶楽部』という週刊少年チャンピオンで連載していたシリーズは、毎週書いていた小説を作画の人が漫画化するという感じでしたね。『こころ・オブ・ザ・デッド』は小説を書いた上で自分でネームも書きました。

佐渡島 ネームまでやったんですか。すごい!

架神 少しやってみたらすごい大変でした。

佐渡島 クリエイターとして15、6年生活してるってことですか?

架神 12、3年ですかね。

佐渡島 すごい。『完全教祖マニュアル』はもともと知っていたんですけど、『ダンゲロス』を読んでみると世界観がかなりぶっ飛んでいますよね。面白い作家だなと思って読んだんですけど、どんな作家に憧れて書いたんですか?

架神 山田風太郎先生ですね。

※『山田風太郎』1922年兵庫県生まれ。伝奇小説、推理小説、時代小説など幅広いジャンルの作品を手がけた、戦後日本を代表する作家。古典伝奇文学に造詣が深く、独自の視点を加えた大衆小説で人気を得る。

戦時中から書き記していた日記は記録文学の傑作との呼び声も高く、著者の再評価にもつながった。

47年東京医学専門学校在学中に『達磨峠の事件』で作家デビュー。49年に『眼中の悪魔』『虚像淫楽』で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第4回日本ミステリー文学大賞をそれぞれ受賞。

主な著書に『甲賀忍法帖』に始まる忍法帖シリーズをはじめ、『警視庁草紙』『戦中派不戦日記』『人間臨終図巻』など多数。2001年没。

佐渡島 やっぱりそっちの方向なんだ。基本はゲームが好きなんですか?

架神 そうですね。

佐渡島 普段どんなふうにして物語を書き出すんですか?

架神 なにか見て真似る感じですね。

佐渡島 具体的にはどういう感じですか。例えば『ダンゲロス1969』はどんなふうにして考え出したんですか。

架神 『ダンゲロス1969』は学生運動系の本を読んで参考にしました。あとは涼宮ハルヒにも影響を受けました。

佐渡島 それはどういう風に影響を受けたんですか?

架神 恥ずかしいんですけど、涼宮ハルヒがすごく可愛いなと思ったのがきっかけです(笑)

涼宮ハルヒの物語のテーマはどこまでキチガイを愛せるかということだと思っているんですが、涼宮ハルヒの場合ファッションキチガイなので、なら本物のキチガイの話を書こうと思ったんです。

そういう感じで「これすごくいいけど、なんかちょっと足りない」とか、「俺もこれやってみたい」と思うことから始まりますね。

佐渡島 架神さんの作品って、相当世界観ぶっ飛んでいるじゃないですか。

架神 どこらへんがですか?

佐渡島 「設定」ですね。「2丁拳銃の人が下半身が露出していて」とか、どうやって思いつくのかなと思いました。

架神 あれはまず単純に精液がネバネバしてる人を思いつくんですよ。次にその人はプロだから、常に戦えるように下半身を露出してなくちゃいけないと考えるんです。でも警官だからそんなこと許されない。だから「ボディペイントかな」という結論に行き着く。以上のような僕のロジカルな流れがあるんですよ(笑)

佐渡島 それで物語が成立しちゃっている出力というか、設定力がすごいなと思いました。山田風太郎さんもそういうところありますよね。

架神 あと山田風太郎先生の作品は戦ってるけど、どっちもむなしいみたいな話が多いじゃないですか。ああいうのにかなり影響受けてますね。

佐渡島 なるほど。『ダンゲロス1969』を書くときに他に考えていることって何かありますか?例えばキャラを作るときとか。

架神さんの作品の登場人物って、絶対覚えられない名前じゃないですか?僕はすごく変わった名前ばかりだなぁと思いました。

架神 あの精液の人は清水一物(しみずいちもつ)って名前です。忠臣蔵に出て来る清水一学が良いなと思って、そこからとりました。

佐渡島 持っているパワーや魔神の特殊能力と関係してる名前だけど、一癖あるすごく不思議な名前をつけていますよね。

架神 『ダンゲロス1969』のキャラクターはそもそも、色んなプレイヤーがゲームに持ち寄ったキャラクターなんですよ。

佐渡島 そうなんですか。その作り方を教えてもらっていいですか?

架神 ゲームに参加する人は1人1キャラクターをつくって来ます。

佐渡島 ゲームに参加する人は友達なんですか?

架神 ネット上で公募しています。その人たちが持ち寄ったキャラクターは、ほかの人も自由に使っていいとしています。そうしたら、結果的におもしろい人たちが集まるという感じになりました。

佐渡島 そもそもが二次創作なんですね。

架神 そうです。僕がつくって、僕が二次創作してます。

佐渡島 そういう成り立ちなんですね。

ネット時代における新しい創作のかたち

佐渡島 架神さんは、ほかの作家の方と創作の仕方がずいぶん違う感じがします。

架神 それは絶対ありますね。

佐渡島 どう違いますか?

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