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学校のトイレでしたことありますか?最低なタイトルの最高の青春物語『オナマス』

この世には聞いた人が思わず顔をしかめるような最低なタイトルでありながら、それを理由に読まないのが勿体なさすぎる感動的な超傑作が二つあります。

 

一つは『東京喰種』の石田スイさんが描いた『THE PENISMAN』

そしてもう一つは今回紹介するオナニーマスター黒沢です!

 

オナニーマスター黒沢(1)
著者:伊瀬カツラ・YOKO
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-13

 

どちらの作品も「新都社」というWebサイトで発表された作品です。

そして、どちらの作者もその後「ヤングジャンプ」と「週刊少年ジャンプ」という超メジャー誌での連載に至っているという面白い共通点があります(ちなみに「となりのヤングジャンプ」連載の『ワンパンマン』も新都社ですね)。

 

 

これらは才気溢れる若き原石が、普通のマンガ雑誌ではできない、Webという自由なフィールド上だからこそできることをやってのけた意欲作と言えます。

 

『オナニーマスター黒沢』は2006年頃に公開されて大きな話題になりました。

私も噂を聞いて物は試しにと読み始めたその瞬間から、『オナマス』ワールドに引き込まれてしまいました。そして貪るようにマウスをクリックし続けたのをよく覚えています。それはもう圧倒的に、暴力的なまでに面白かったのです。

 

当時のWebマンガと言えば、有名作であっても「話は面白いけれど絵はいかにも素人」という物が多数を占めていました。

しかし、『オナマス』は話もおもしろければ一目見て「絵が上手いな」と思わせられるものでした。

 

後にジャンプで二本の連載作を発表することになる、横田卓馬さんの若かりし頃から光る画力。

そこに、伊瀬カツラさんによるぶっ飛びながらも叙情的な物語が乗せられて行きます。

 

『オナマス』の開幕は強烈です。1ページ目から主人公の男子中学生・黒沢が、学校の女子トイレでクラスメイトをオカズに自慰に耽る姿が描かれます。

 

©伊瀬カツラ・YOKO/ナンバーナイン

 

皆さんは学校で性的な行為に及んだことがあるでしょうか。とある統計によれば、職場や学校のトイレで一度でも自慰をしたことがある人は23.5%にも及ぶとのこと。

背徳感が快感を高め、黒沢は時に危険な状況に陥りながらもその趣味をやめられずにいるのですが、そんな彼の気持ちを真の意味で共感できる人は意外と少なくないのではないでしょうか。

 

とはいえ、そのスタートで早くも躓いてしまう方も多いかもしれません。少し読み進めると、女子を容姿で採点したりオタクを見下したりする黒沢の性格に虫酸が走るかもしれません。

しかし、そこはぐっとこらえてその先にある極上のドラマを体感して欲しいのです。

 

まだスクールカーストという言葉が一般的でない時代に描かれた、中学校内の緊張感溢れる人間関係の模様。その最下層に位置する少年と少女を中心に物語は進んで行きます。

 

いじめや恋愛、あるいは復讐といった、いつの時代のどこの誰にでも身近であり得るテーマ。

それらが豊かな表現力で料理されて行き、読んでいると胸が抉られるような、ひりつくような感覚に陥ります。

 

©伊瀬カツラ・YOKO/ナンバーナイン

 

個人的に一番印象に残っているのは、ヒロインの一人である滝川マギステル絡みのエピソードです。

 

雨の日には黒沢と暗黙の了解で図書室で会い、読書を通じて会話に花を咲かせる二人。

ある種の美しさすら感じさせるその時間を黒沢は徐々に心地良く、大事なものと感じ始めるのですが……

 

©伊瀬カツラ・YOKO/ナンバーナイン

 

それがまさかあんなことになるなんて! 読む者の心強くを揺さぶる主人公たちに訪れる深い葛藤は、タイトルからは想像もつかない文学性を感じさせてくれます。

 

12年経った今、改めて読み直してみて、当時のネットスラングや涼宮ハルヒのダンスなどには時代を感じさせられました。

しかし、作品の本質的な部分や疾走感のあるおもしろさは全く色褪せることはありませんでした。

これから10年20年経っても変わらないであろう普遍的な少年少女の悩みや苦しみ、そしてそれらを経験しての成長がこの作品には宿っています。

 

『オナニーマスター黒沢』は清濁併せ持った最高の青春物語であり、ビルドゥングスロマンなのです。

 

……とはいえ、書店で店員さんに「『オナニーマスター黒沢』はありますか?」と言うのも抵抗を感じる方が多いかと思います。

しかし、そこはご安心下さい!『オナニーマスター黒沢』は現在電子書籍のみの頒布となっております。こっそりダウンロードして、思う存分お楽しみ下さい。

 

 

そして、現在「平成最後の冬に読んでおきたい特集」として『オナニーマスター黒沢』を含む下記の作品群が、Kindleをはじめ複数のストアで2019年1月8日までセール価格なっております。

ぜひこの機会に触れてみてはいかがでしょうか。

 

 

オナニーマスター黒沢(1)
著者:伊瀬カツラ・YOKO
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-13
オナニーマスター黒沢(2)
著者:伊瀬カツラ・YOKO
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-13
オナニーマスター黒沢(3)
著者:伊瀬カツラ・YOKO
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-13
オナニーマスター黒沢(4)
著者:伊瀬カツラ・YOKO
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-13

 

 

Kindleセール中作品一覧(2019年1月8日まで)

マイナス 完全版(1)
著者:山崎紗也夏
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-06-26
南国トムソーヤ (1)
著者:うめ(小沢高広・妹尾朝子)
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-05-11
さよなら、ハイスクール (1)
著者:森もり子
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-20
アイとアイザワ(1)
著者:かっぴー
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-09-14
彼女のいる彼氏(完全版) 矢島光・著作集 1
著者:矢島光
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-07-27
やしろあず記 僕と家族のクソみたいな日常
著者:やしろあずき
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-08-03
原作版 左ききのエレン(1): 横浜のバスキア
著者:かっぴー
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-08-31
僕はお姫様になれない(1) (電撃コミックスNEXT)
著者:若林 稔弥
出版社:KADOKAWA / アスキー・メディアワークス
販売日:2014-09-27
幽子さんは見られたい
著者:若林稔弥
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-08-03
徒然チルドレン+総集編
著者:若林稔弥
出版社:ナンバーナイン
販売日:2018-08-03

 

 

【その他ラインナップ】

  • 『うめ短編集 うめあわせ』
  • 『川底幻燈』
  • 『マンガでわかる本気で売れるためのヒロユキ流マンガ術』
  • 『林檎の樹の下で -アップルコンピュータジャパン物語- ×スティーブズ外伝』
  • 『ギ野望の野望』
  • 『サボろう系女子まとめ』
  • 『東京ネームタンク ホラー選集(うしぼとけ/掃除屋の清子さん/悪食の鯛次/ほんとにあった怖いお正月/暴力退魔師ド外道菩薩丸)』
  • 『村岡恵短編集』
  • 『19XX昭和の旅』
  • 『西園寺薫子と使用人椿の一生』
  • 『濃爆おたく先生』
  • 『みかにハラスメント』
  • 『みかにハラスメント 同人総集編』
  • 『わたし♂とお嬢様』
  • 『イグルー追っかけ日記』
  • 『ドリームキャストファン烈伝』
  • 『うみと人魚ヒメ』
  • 『鮭夫短編集』
  • 『最狂超プロレスファン烈伝』
  • 『シャムロック』
  • 『プロレスのコトバ』

 

 

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