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中年男性必読書。『今日が地獄になるかは君次第だけど救ってくれるのも君だから』
今日が地獄になるかは君次第だけど救ってくれるのも君だから
著者:ふせでぃ
出版社:KADOKAWA / メディアファクトリー
販売日:2018-11-08

20代半ばの友人におススメの漫画を教えてもらった。それが『今日が地獄になるかは君次第だけど救ってくれるのも君だから』だった。

 

まだ読んだことがないと言ったところ、じゃあ、「ふせでぃ」は知ってますよね、当然。そういわれて慌ててスマホで「ふせでぃ」と入力する。

 

Twitterのフォロアーが37,000人もいるすごいひとなんだね。知らなくてごめん」

 

そう僕は伝えた。

 

インスタも見てくださいよ」

 

彼は言った。

 

普段、ほとんどInstagramを使わず、ときおり男児四人の子どもたち、双子のことをあげるくらい。フォロー中0人、フォロワー432人、という状態だ。

 

そこで「ふせでぃ」を検索してみる。

 

「えっ、198,000人・・・すごい」

 

フォロアーが男性なのか女性なのか。どのような年代や属性なのかはわからないが、これだけの支持を集めるひとが描く世界はどんなものなんだろう。

 

そう思って『今日が地獄になるかは君次第だけど救ってくれるのも君だから』と『君の腕の中は世界一あたたかい場所』をポチる。

 

中野駅からの帰り道、中央線でiPadを取り出し、いつものようにスクリーンをフリックしいていく。

 

大学生を舞台にした幸せそうな男女の話。

 

一人暮らしの女性のもとに通う彼氏。彼女は日常のささやかな、しかしながら二人だから作れる空間と時間、その一つ一つに感謝する。

 

キャンパスを一緒に歩く。アルバイト先に顔を出す。記念日にケーキを食べる。朝起きると横にいて、大学の授業をちょっとさぼったりする。

 

そしてこんな時間が永遠に続くよう願う。

 

そこにもう一人、同じ大学に通う女の子が現れる。偶然出会った彼のことが気になり、小さく芽吹いた彼への感情。彼との時間を重ね、友人に話したりするなかで、その気持ちは大きくなっていく。

 

そして、それは本物となり彼に少しずつ迫っていく。

 

その彼はどうか。顔立ちがよく優しいかれは、付き合っている彼女も、付き合ってない彼女にも時間と気持ちを分けていく。彼の気持ちは最後の最後に明かされる。

 

小さな世界における、大切な人間関係が崩れるのは一瞬だ。ちょっとした疑念が大きく膨らみ、メッセージをすること、それぞれのSNSを見てしまうこと、そしてスマホをのぞいてしまうこと。

 

それをしたところで疑念が真実に変わるか、何もなくても心のもやもやが晴れるわけでもない。そんなことはわかっているけれど、抑えきれない感情はその一線を越えさせる。

 

この漫画の特徴であり、共感であり、中年男性となった僕にとって大きな学びとなるのは、漫画そのもののストーリに加え、すべてのページの欄外に小さく添えらえた「彼女」の言葉。

 

これが「彼女」の声なのか、「ふせでぃ」さんの声なのか。きっとそんなことはどうでもいいのだろう。作者が多くのひとたちから支持されるのは、この心の声、言えない/言わない気持ちを優しく添えてくれるからではないだろうか。

 

もう少し早く、この漫画に出会っていたら、あの当時にもう少しうまく恋愛ができたかもしれない。少なくとも女性の気持ちがちょっとはわかったかもしれない。

 

でも、まだ遅くはない。中年になった男性だって、他者の気持ちをもう少し理解できたら、いまよりものごとがうまくできたりするんじゃないだろうか。

 

描かれた漫画と欄外の言葉。新たな視線と視点を僕らにもたらしてくれる一冊だ。

 

 

君の腕の中は世界一あたたかい場所
著者:ふせでぃ
出版社:KADOKAWA
販売日:2018-02-02