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アラサー女のグダグダの恋愛劇と思いきや、 全世代にオススメしたい最高の人間観察漫画『A子さんの恋人』

主人公のA子さんは29歳、
ニューヨーク帰りの漫画家だ。

 

私もA子さんと同じ29歳。 A子さんと同じ歳だからか、 気持ちがめっちゃわかったので、この同じ歳のうちにレビューを書きたいと思った。

 

このA子さん、
ニューヨーク帰りという一見華々しい感じかと思いきやと、じみーな印象の女。

どうも容姿はそこそこらしく、

愛想もないくせに、人気者で道で人が振り返るほどの男前のA太郎
インテリで甘やかし上手の優しいアメリカ人A君

なぜか2人の男から求愛されている、罪な女である。

 

 

2人のアプローチをぬらりくらりとかわす?いや翻弄されているA子さん。

一見、このシチュエーションの場合
2人ともが好きで迷ってて決められないのか?と思うが、そういうわけではないらしい。

 

A子さんの中で、現恋人はA君、A太郎は元カレという位置づけだ。
A君にプロポーズをされたのだが、まだ考え中ということで保留している。

 

しかしどうもA子さんは、A太郎のことが嫌いでA君のことは好きそうである。
A君のことが好きなのに
国際結婚という決断をズルズル先延ばししてるうちに、また腐れ縁のA太郎と再会してしまったのが運のつき。

 

 

なんでA子さんは決断できないんだろう。
わたしが思うに、それは2つの理由があると思う。

1つめは、A子さんは自分の人生で波風立てたくない人だからだ。
たとえいいことであっても、大きな決断をしたくない。変化したくない。ずっと今のままでいたいという人。

 

もし歳をとらないのなら、
今の周りの友達たちもずっとこのまま変わらないのなら、ずっとこのままでも楽しいな、身を固めたくない。

好きなことをして自由に人生を漂っていたい。

 

けど、周りに取り残される前によくよく考えなきゃという心理である。

 

ほんとは、周りが結婚しようが、転職しようが、子供がいようが、
自分の人生なのだから、取り残されるなんてことは何一つないのだけれども。

 

未来の孤独を考えてしまう。
分かっていれども、アラサー女が陥りがちな感情なのかもしれない。

 

 

もう1つは、
元彼のA太郎のことが、 ”まだ”嫌いだということ。

 

まだ嫌いというのがポイントで、
嫌いならば、それまでと思いがちだが、人間の感情は難しい。

 

一度好きになって、色々なことがあって、そののちに、もう嫌い!
といっているうちは、まだその人のことが好きなんだと思う。
(最初から嫌いで近寄らない人は別として)

 

好きの反対は嫌いではなく、無関心とよくいうが、ほんとにそうだなと、30を手前にして思う。

 

一度好きだった人を嫌いになり

(この時点では、まだ心の多くを占めている)

忘れて無関心になるというところまでの心の作業は、その人がいないところで、新しい好きな人と長時間過ごさないことには、達成できない。

 

 

A子さんは、A君とのなりゆき遠距離恋愛のせいで、
またもう嫌いなはずのA太郎のことを意識するはめになってしまった。

 

近くにいて、ちょっかいをだせるA太郎は有利である。

 

A太郎とA君。

 

人間がなんでも合理的に判断をくだせる生き物であるのであれば、
A子はさっさとA君を選べばいいのだろうが・・・

 

なんでA子さんが決断を先延ばしにするのか、なんとなく私が共感したのは上記である。

さらに『A子さんの恋人』には、脇を固めるA子さんの友達の会話も楽しい。 

 

K子、U子も、うわぁーこういう人いそう!という感じのちょっと性格が悪い人。

そしてみんなが思ってそうなことを、

的確に言語化してくれてるなあと感じるセリフが多々あり。

 

 -なんでこんな女がそこそこモテてんの?許せないんだけど
 とか
 -誰か心の薄汚れた人で中和しないと、自己嫌悪で死んでしまいそう! 
 とか 

 

 

A子さんのグダグダ恋愛劇を中心としつつ、
登場人物が全員ちょっとひねくれてて、実際にいそうな人物ばかりなので、人間観察が好きな人には最高。

 

この恋愛劇をおめめパッチリキャラでやられると暑苦しいが、
力が抜けたゆるーいタッチの絵も、ちょうどいい。

全世代にオススメしたい。

 

普通の恋愛漫画だったら、
こっちとくっついちゃえよとかすぐ考えてしまうところだが、
A子さんがどっちかに決めてしまう、ドラマチックな展開はどうしても予想できない。

 

一生迷って、2人の間でグズグズしててほしい。

 

 

A子さんの恋人 1巻 (HARTA COMIX)
著者:近藤 聡乃
出版社:KADOKAWA / エンターブレイン
販売日:2018-09-15