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「普通」じゃない『ダルちゃん』は「普通の女の子」に「擬態」して幸せだったのか?

ダルちゃんとは

 

本作の主人公・丸山成美は、見た目は普通の24歳の派遣社員ですが、実はちょっと「普通」ではありません。

その実、ダルちゃんことダル山ダル美、ダルダル星人なのです。

 

「普通」ではないダルちゃんは、「外」でそのままの姿でいると気持ち悪がられることを知り、成長する中で「擬態」する術を一生懸命習得しました

まわりの女の子を観察して、その空気に溶け込むにはどうすればいいか考えて、自分の居場所を作っていったのです。

 

 

なんでもないように書かれていますが、これは本当にすごいことだと思うんです。

 

「擬態」はつまり「周りに合わせること」と言い換えることもできますが、これが自然とできる人、頑張ればできる人、それをするのが苦痛でできない人、いろんな人がいます。

 

 

「頑張ればできる」も一様ではなく、グラデーションのように頑張る度、があると思いますが、ダルちゃんはこの頑張る度が比較的高めな人なんだと思います。

 

 

こういった「擬態」をしなくてはならない、もしくはしなくてはならないと思わされてしまうような「生きづらさ」が、いい意味で少し曖昧に描かれているのがこの漫画『ダルちゃん』です。

 

 

 

「擬態」は悪か?

 

「普通じゃない」ことが自分にとってのふつうだと「普通」でいるのが大変なのと同じように、そもそもの「普通」をある程度自然に受け入れられている人にとって「普通じゃない」ことは受け入れがたいことです。

 

自分のふつうと相手のふつうが違う以上、お互いの間を取らないとコミュニケーションは難しくなります。

その「間を取る」ことが「擬態」だと思います。

 

 

ただこの「擬態」にもいくつかの種類があって、『ダルちゃん』で一番私が苦しかったのは「女の子」でいるための「擬態」でした。

 

「女の子らしく」いることが、本来の自分の姿ではないように思えて苦しいと感じたことは、私も一度や二度ではありません。

そうはいってもダルちゃんはちゃんと「擬態」できてるじゃない、と思ってしまいます。

 

 

「女の子らしく」いることで守られたり、得をしたりすることがあるかもしれませんが、少しでもそういうことがあるたびにすごく消耗するので、そういうところは私もダルダル星人なんだろうと思います。

 

 

ダルダル星人と居場所

 

ダルちゃんはいつも誰かに認めてほしいと思っていました。

母親にあまり気にかけてもらえなかったこともあるかもしれません。

 

そしてダルちゃんは「ほどほどに頑張って認めてもらえる」居場所を見つけていきました。 

 

ダルダル星人だからといって、四六時中ダルダルしていることが居心地がいいとは限りません。

擬態せずいつでもありのままの姿でいることだけがすなわちハッピーなのではなく、もっといろんなものが重なり合ってハッピーになるんだと思います。

 

これはダルダル星人じゃない人にとってもそうですし、むしろ人はそれぞれ、多かれ少なかれ心の中にダルダル星人を住まわせていると思います。

 

 

ダルちゃんは最終的に「擬態」をしている自分も、自分の一部として認められるようになっていきます

サトウさんやヒロセさん、そしてスギヤマさんとの出会いを通して、誰かに認めてもらうこと以上に自分で自分を認められるようになり始めたんだと思います。

 

 

私のなかの「ダルちゃん」を認めてあげること、そして「ちゃんと『擬態』する」自分も、これは自分じゃない、気持ち悪い、と思わずに「頑張ってんな!」と認めてあげること。

「女の子らしさ」の呪縛が消えたらいいな、という願いを捨てることなくほどほどに頑張って、自分を褒めていきたいな、と思えました。

 

「擬態」してるな、と思う女性たちはもちろん、男性の方にたくさん読んでほしいな、と思います。

もちろん「擬態」している男性もたくさんいるでしょうし、「擬態」させている男性もたくさんいます。男性女性で分けるのもナンセンスかもしれません。

 

すべてのダルダル星人のみなさん、ダルダル星人の周りにいるみなさんに読んでほしいです。

 

『ダルちゃん』は、今月全2巻完結で発売されました。

さらに、連載されていた花椿というサイトで6話まで読むことができるので、ぜひ一度読んでみてください。

 

 

ダルちゃん(1) (コミックス単行本)
著者:はるな檸檬
出版社:小学館
販売日:2018-12-07
ダルちゃん(2) (コミックス単行本)
著者:はるな檸檬
出版社:小学館
販売日:2018-12-07