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いちゃラブは中学生カップルのピロートークから——壁殴り代行業協会推薦図書『あまあま』

精神的童貞という言葉がある。 僕が考えた。 肉体的な童貞、つまりやったやらないでひとを判別する概念は、侮蔑とか孕んでたり男性限定だったりでめんどくさいので、あくまで精神的な傾向としてニュートラルに童貞というものを捉えるべく考えた次第である。

 

僕が考える精神的童貞の特徴は例えば以下。

・落とした鉛筆を拾ってくれる、オススメの本を教えてくれる等、何気ない好意を受けただけで相手に時めく。

・好きなひととエッチなことするより、デートしたい。

・一夜限りの関係なんて意味不明。お互いを知り合ってからそういうことするべきっしょ!

 

書いてみたものの、精神的童貞というより僕個人の感覚を書いただけかもしれない。 ともあれ、24歳にして女の子と手を繋ぐことはおろか、未だ間接キスにさえ時めくことが可能な精神を持ち合わせている健全極まりない僕は、高校生でエッチなことをするなんてマジで考えられない。

 

けれどこの漫画は、中学生のこなれたピロートークから始まってしまう

 

もうわけがわからない。 壁殴り代行業協会推薦図書と銘打たれた、志摩時緒さんの『あまあま』だ。

 

あまあま
著者:志摩 時緒 出版社:白泉社
 

熟練で妬ましい! 祐司と美咲

中学生のときに知り合い、付き合い始めた祐司美咲。 メガネをかけた真面目そうなふたり(偏見)だけど、冒頭からピロートークをかましてくれた通り、やることはしっかりやっている(しかも日常的に!)。
あと つけないでって 言ってるのに

 

え ダメだった?

こんな会話ふつーにしちゃう、爆発してほしい。

 

同じ高校に通い始めたふたりだけど、「学校でやたらと話しかけたりしないでね」と美咲は少し牽制。 優等生然として周囲に付き合っていることは隠しながら、下校でキスして、自宅でアレするふたり……えっちだと思います!

健全で微笑ましい! 高梨くんと神崎さん

祐司と美咲が進んだ関係を築いている一方、祐司のクラスメイト・高梨くんは悩んでいた。

 

高梨くんはクラスメイトの神崎さんのことが気になっている。 神崎さんも、わりと自分に気があるっぽい。

 

けれど、好きになったらそれを相手に伝えるべきものなのか? 神崎さんともっと一緒に話してみたくて……もし付き合えたら神崎さんとセックスとかするのか? 高梨くんは戸惑う。(超健全!)

 

しかしある日、高梨くんは神崎さんから告白されてしまう! やがて神崎さんに告白し直し(!?)めでたく付き合うことになったのだけど、高梨くんの悩みは加速する……。

告白して 付き合うように なれたらそれで ゴールだと思ってた

 

じゃあ 付き合うって この先は

 

どーしたら

良いんだ?

 

高梨くん、その気持ちわかるよ!

好きなひとと付き合って……その先どうする!?

祐司と美咲の熟練カップルと、高梨くんと神崎さんのプラトニックなカップル。 対照的なカップルだけど、『あまあま』で描かれるのはいずれも「付き合ったその先」

 

そう、精神的童貞が知らない“進展”を『あまあま』は見せつけてくるのだ!

 

多くのラブコメはカップルが「付き合うまで」を描くことで物語をつくる。

そんな「付き合うまで」の、初心で純情な感情の機微が僕みたいな精神的童貞は大好物だ。

そして、すでに付き合ってる人間の変わり映えしないいちゃラブなんて犬にでも食わせとけ! と嫌悪する。

 

けれど『あまあま』は、初心で純情な感情の揺れを「付き合ってから」の時空間に描いてしまう。

べつに別れの危機に瀕しているわけでなく、付き合ってからの日々が穏やかに続くのだけど、互いのことを新しく知り、互いに影響されている自分を知る、そんな瑞々しい時めきで溢れている。

 

タイトル通り激甘なカップルのいちゃラブが、パターン化された“停滞”でなく紡がれる……これは恐ろしいことです。

 

だってそれは僕の大好物なのだけど……やっぱりいちゃラブなわけで、読んでいてダメージを負わざるを得ないから(でも壁を殴りながら読む)。

はぁ〜〜いちゃいちゃしやがって、爆発しろって悶絶したい方、オススメです。

 

志摩時緒さんの別シリーズ『夜にとろける』も完結巻が発売されました。 こちらも精神的童貞である諸兄(姉)には殴る用の壁が必須なカップル満載なので、ぜひ手にとっていただきたい。

 

文=マルモ(星海社)

 
夜にとろける 3
著者:志摩時緒 出版社:白泉社