TOP > マンガ新聞レビュー部 > 『ボイスカッション』でわかる 声優を目指してはいけ...

毎年約1万2000人。
声優を目指して養成所の扉を叩く人数だ。

 

声優はいまや、人気職業だ。
生命保険会社が実施する「将来なりたい職業ランキング」ではいつも上位に位置し、13歳のハローワーク公式ページのランキングを見てみても高い関心を寄せられていることがわかる。

 

だが、多くの人はきっと、声優業界の過酷な現実を知らない。声優ほど社会的イメージが、現実とかけ離れている職業もそうはない。

 

たとえば国民的アニメの『サザエさん』。
磯野家の家長である磯野波平を演じた永井一郎さんのギャラは、年間200万足らずだったという。

 

今は多少マシになっているそうだが、日本で1番見られているアニメでもそんな状態だった。それを知っていたら、無邪気に声優を目指すことなんて絶対にありえないはずだ。

 

『ボイスカッション』は、そんな声優業界の現実と、それに立ち向かって声優を目指す少女・琴里たちの奮闘を描いている。読むと声優を目指すべきではない理由がいくらでも見つかる。本レビューではそのなかから3つを紹介する。

 

しかし、「それでも!」という方は必ず全編読んでほしい作品だ。なぜなら、原作者の小金丸大和さんは劇作家でもあり、声優の指導も行うお方。声優を目指す人、あるいは声優を目指す人が周囲にいるなら、一読しておいて損はないからだ。

 

『サザエさん』の声優でも報酬200万円以下

声優の報酬は、日本俳優連合が規定する「ランク制」によって算出される。ランクは声優のキャリアや人気によって変動する。最初は30分の出演で1万5000円の「ジュニア」クラスから始まり、その後少しずつ上がっていく。

 

30分1万5000円だったら、時給換算すると3万円!高給じゃないか! と思われるかもしれない。

しかし、この30分には収録ごとに発生する待機時間や練習時間は含まれない。そして一言のセリフでも、一人劇場みたいな喋り倒しでも、報酬は変わらない。

©棚橋なもしろ・小金丸大和/ヒーローズ
©棚橋なもしろ・小金丸大和/ヒーローズ

 

先に挙げた永井一郎さんは声優としてトップクラスに位置していたため、一回の出演当たりの報酬が約4万3000円。『サザエさん』は年間52回+αで、そこに報酬をかけると230万円ほどになるが、源泉徴収や事務所への支払いをすると200万円を下回ることになる。

毎週1000万人以上が観る国民的アニメでも、視聴率1%台の深夜アニメでも、同じルールだ。

 

こうした報酬体系はアニメーションの安定供給のためには大いに貢献しているだろう。永井さんも『サザエさん』だけで食っていたわけではないはずだ。しかし業界トップの現場の現実としては、夢がない。

 

アスリート並みの過酷なトレーニング

声優は「声だけ」でいいから、俳優より楽だ。という誤解がある。

 

『ボイスカッション』を読むと分かるのは「声だけ」で伝えなくてはいけないという過酷さだ。それはつまり、「声だけ」で評価されるということ。容姿(最近は一概には言えないかもしれないが)、表情、仕草がいくら魅力的でも、それらをマイクに吹き込むことはできない。

 

そこでプロとしての演技をするために、声優たちは何をしているのか。

 

筋トレだ。

 

©棚橋なもしろ・小金丸大和/ヒーローズ
©棚橋なもしろ・小金丸大和/ヒーローズ


普通の生活では使わない筋肉を稼働させ、並外れた発声を可能にする身体を作るのだ。体力も必要だ。たとえば2時間の洋画の吹き替えの仕事であれば、それ以上の時間ずっと立ちっぱなしで喋りっぱなしになることもある。

 

自分の身体をいじめるのが得意ではない人は、やめたほうがよさそうだ。

 

ハイリスク・ローリターンな世界

声優はかつて、舞台や映画の役者と比べてランクの低い仕事としてとらえられていたそうだ。

 

実際、最初期の声優の仕事は、仕事のない役者が片手間にやるものという側面もあった。

 

しかし今ではまごう事なき専門職で、人気職。声優業界は、マイクをめぐって天才たちがしのぎを削る世界になっている。しかもライバルが毎年1万人以上増えていく。だがデビューできるのはその中で1%程度だ。

 

養成所に通うのもタダではない。チャンスはいつまでも回ってこない。収入は雀の涙。そして多くの声優志望者が、マイクの前に立つことなく業界を去っていくそうだ。

 

人気声優の大塚明夫さんは著書などで、こうした状況を「ハイリスク・ローリターン」と表現している。

 

それでもなぜ、声優を目指すのか

『ボイスカッション』の琴里たちはそれでもなぜ、声優を目指すのか。彼女たちの動機は様々だが、共通しているのは「人の心に残るような演技をしたい」という強い気持ちだ。
 

©棚橋なもしろ・小金丸大和/ヒーローズ


たとえばアニメーションであれば、声優の仕事は作品の製造最終工程にあたる。原作、脚本、監督、音響といった制作者たちの想いはもちろん、数多くのファンの期待を一手に受けて、キャラクターに魂を吹き込む役割だ。

 

その重圧は想像を絶する。「なんか声が違う…」なんて思われようものなら、どんなに映像が良くても駄作扱いになってしまう。しかし、逆にピッタリハマれば、その声はきっと、観た人の心に永遠に残る。

 

個人的な話で恐縮だが、ドラえもんの声優が水田わさびさんになってからも、僕にとって「ドラえもんの声」といえば大山のぶ代さんであるのもそういうことだと思う。もう変わってから10年以上も経っているけど、たぶんずっと忘れない。知り合いでもなんでもない人の声なのに、これはとんでもないことだ。

 

琴里たちにもこうした原体験があるからこそ、過酷な声優業界で歯を食いしばって生き残り、声優を目指すのだ。

 

そんな声優を目指す彼女たちの『ボイスカッション』だが、実は残念なことに、琴里たちが本格的に声優デビューする前の、研修生編でいったん幕を閉じている。

 

しかし現在、漫画アプリ「マンガトリガ―」の「マンガ続編制作プロジェクト」にて、続編の製作が進行中だという。成功すれば、連載時には詳しく描かれなかったプロ声優の本当の世界や、より本格的なトレーニング方法が読める(かもしれない)。

 

プロジェクトは昨日から始まっていて、期間中はアプリで1巻分が無料で読めるようになっている。
詳細と第1話は下記バナーから読めるのでぜひ。

 

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人気職業「声優」の真実と、文字通りの”舞台裏”を描いた名作です

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