TOP > マンガ新聞レビュー部 > 男性目線で「2・5次元舞台」の世界を覗いてみる―『...

人気マンガが相次ぎ舞台化されています。マンガやアニメ、ゲームのファンに徐々に舞台の世界が近づきつつあるともいえます。しかし「観たことがない」「どうやって観にいけばいいのか」と戸惑う人も少なくないよう。そんな人は『俺の推しが世界一輝いている』を(KADOKAWA)お薦めします。何かに熱中している人なら「あるある」と思える一方、観劇の仕方のガイド本としても機能しています。

 

 「ハイキュー!!」など人気のマンガ、アニメが相次ぎ舞台化されています。マンガやアニメ、ゲームのファンに徐々に舞台の世界が近づいているともいえます。しかしまだ観たことがない人、「どうやって観にいけばいいのか」と戸惑う人も少なくないよう。そんな人を助けてくれるのが、缶爪さわ先生の 『俺の推しが世界一輝いている』(KADOKAWA)。観劇のガイド本としても機能しています。

  

 主人公はマンガ好きの男子大学生、千明貴臣(ちぎらたかおみ)。姉の誘いで好きなマンガ作品の舞台を観にいき、マンガやアニメ、ゲームを原作にした「2・5次元舞台」にはまります。女性客が多く、少し居心地の悪さを感じながらも、好きな役者が出演する作品を追いかける日々。チケットをとる大変さ、一緒に見る友達が少ないつらさなどがコメディタッチで描かれています。

 

 歴史をさかのぼるとマンガにおいて「演劇」をテーマにした作品としては少女マンガを中心に、「バレエもの」が多いと思います。特に初期の少女マンガでは、西洋文化へのあこがれも相まって、バレリーナを主人公にするものが目立ちました。古典ともいえる作品としては、山岸涼子先生の『アラベスク』があります。最近では、歌舞伎や、宝塚歌劇団をモチーフにしたものも相次ぎ登場。今は、歌劇学校に通う女の子を描く志村貴子先生の『淡島百景』(太田出版)や斉木久美子先生の『かげきしょうじょ!!』(白泉社)などが連載中です。

 

アラベスク 完全版 第1部1 (MFコミックス)
著者:山岸凉子
出版社:メディアファクトリー
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淡島百景 1
著者:志村貴子
出版社:太田出版
販売日:2015-06-19
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かげきしょうじょ!! 1 (花とゆめコミックス)
著者:斉木久美子
出版社:白泉社
販売日:2016-03-18
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 これらの作品が、あくまでバレリーナや歌劇学校の生徒をはじめとする役者を主人公にし、彼らの努力や成長の過程を描いているのに対し、『俺の推し~』はあくまでファンがいかに舞台を楽しんでいるのかを描いたもの。今のところ、手に汗握るような冒険や試練はありませんが、舞台を楽しんでいる人には「あるある」という共感を生み、観たことがない人には新しい世界をみせてくれます。

 

 おもしろかったのは「推しアピールと認知の件」のエピソード。千明らが、道行く人の姿を見ながら「あの人は○○推し」と語ります。普段2・5次元を含め、舞台を観にいく人ならすごくわかると思います。私も実際舞台を観にいったとき、会場に近づくと「きっと同じものを観にいくのだろうな」と思う人が増えるなか、こっそり「この人は○○のキャラクターが好きかな」と考えます。

  

 このエピソードで、「ファンがなぜ好きな対象のに関連するグッズを身につけるのか」を千明らに語らせているのもおもしろい。ここに描かれている「オタクっていうのは、推し関連を身につけるだけでテンションが上がるんだよ」というのは真理のひとつだと思います。最近、テレビなどで特集される、「キャラクターグッズを大量に鞄などにつける人」の心にも通じるのではないでしょうか。

 

 舞台ファン目線を描くマンガとしては、はるな檸檬先生『ZUCCA ZUCCA』(講談社)や竹内佐千子先生の『2DK』(講談社)などがありました。どちらも同じ舞台ファンの行動として「わかるわかる」と楽しみました。

 

 これらに続く『俺の推し~』には、千明の友人である御崎蓮也が「2・5次元舞台を知らない人」として登場。彼が読者の代わりとでもいうように、千明らに「そんな役者知らないよ」とか「なぜそんな行動をするのか」といった素直な思いを口にします。こうした御崎の姿には、舞台を観たことがない人も感情移入できるのではないでしょうか。そして御崎の発言をきっかけに、千明らの2・5次元舞台ファンの行動の理由が説明されていくのは巧みな展開です。

 

 さらに作中では、観劇ルールの説明も。「会場で舞台を否定する発言はダメ」「公演中のおしゃべりは禁止」「通常の舞台では応援グッズは持ち込めない」など基本的なマナーを千明が教えてくれる。これは初観劇の人には助かります。そして「そこまで好きかどうかわからないのに観にいってもいいのか」と迷う人にも、千明は「最初から大好きな状態で観にくるほうがめずらしいっての 初めてはみんな半信半疑」と自分の経験を含めて、背中を押してくれます。

 

 個人的には主人公が千明という男子なのもいい。現実の2・5次元舞台の観客のほとんどは女性です。でも『俺の推し~』の中の千明は男性だとか女性だとか関係なく楽しそう。『俺の推し~』が広がって、「当たり前のことですが、舞台は男女どちらも楽しむものですよー」と声を大にして言いたいです。 

 そして、『俺の推し~』を含む各種作品で「舞台を観るもいいな」と思えたら、演劇マンガの金字塔、美内すずえ先生の『ガラスの仮面』(白泉社)へ。この作品は、伝説の舞台「紅天女」の主役を巡り、北島マヤと姫川亜弓が厳しい争いを勝ち抜こうとする成長物語であると同時に、それぞれが出演する舞台が劇中劇という形で詳細に描かれます。すると読者は作中の登場人物と一緒に舞台を観ることに。

 

 当然マンガであるため、その中で舞台のどこを観るべきか、演じている役者のどこがすごいのか、名もなき観客役のキャラクターのせりふとしてきっちり描かれます。そしてコマ割りは、役者の指先だったり表情だったりにフォーカスすることで、シーンごとに注目するべきポイントもはっきり示している。よくみると実際の観劇でも押さえるべきポイントになっています。
 

 舞台は、『俺の推し~』のように好きな役者に熱中するもよし。ストーリーに感動するもよし。セットや演出を楽しむもよし。力のある役者の略同感ある動きに心を動かされるもよし。味わいかたは人それぞれ自由です。でも、劇場に行く前に、これらの演劇マンガを読んでいけば、観劇ポイントがよりクリアになるのではないでしょうか。

 

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