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小学館に畑中雅美という編集者がいる。

この前、彼女に池袋コミュニティカレッジで僕が持っている講座にゲストとしてきてもらって対談した。僕が「ちょっと敵わないな」そんな気持ちを抱かされる編集者だ。

 

マンガだと簡単にヒットする、なんてことはない。マンガでも10万部に到達する作品はあまりない。マンガは一度ヒットすると、巻数が出るためにビジネスとして大きくなるだけで、10万部の作品を企画するのはすごく難しい。
僕も14年かけて、片手は超えるけど、両手はいかないぐらいのタイトル数しか、10万部には到達していない。

 

畑中さんの手がけてきた作品を紹介すると、こんな感じだ。
10万部以上出ていて、畑中さんが立ち上げただけで、こんなにたくさんのタイトルがある。

 

『夜まで待てない。』(太田早紀)
『禁断』(刑部真芯) 
『むちゃくちゃ大好き。』(嶋木あこ) 
『私の…メガネ君』(すもと亜夢) 
『キス、絶交、キス』(藤原よしこ)  
『僕は妹に恋をする』『僕の初恋をキミに捧ぐ』(青木琴美) 
『うわさの翠くん!!』(池山田剛)  
『放課後オレンジ』(くまがい杏子) 
『そんな声出しちゃイヤ!』(しがの夷織) 
『だから俺にしなよ』(水瀬藍) 
『カノジョは嘘を愛しすぎてる』(青木琴美) 
『ぴんとこな』(嶋木あこ) 
『5時から9時まで』(相原実貴) 
『黎明のアルカナ』(藤間麗)  
『後にも先にもキミだけ』(川上ちひろ) 
『ペン先にシロップ』(七尾美緒)

 

17作品も10万部以上があるなんて、すごすぎる。

 

ただ、僕の中で、ちょっとした偏見があったのも事実だ。
僕が手に取りたくなるようなタイトルの作品はない。きっと女子が大好きっぽい、恋愛ものばっかりだから、僕が読んでも楽しめないだろう、と。

 

僕は部数という数字のみで、畑中さんのすごさを認識していた。
でも、その対談の中で『キス、絶交、キス』を企画した時の経緯を聞いて、僕の中で彼女を尊敬する気持ちは増した。

 

『キス、絶交、キス』は、『赤毛のアン』から発想したという。

しかし、アンみたいな、女子が主人公の成長物語ではない。

 

アンは、学校初日にギルバートという男の子に、赤毛をにんじんとからかわれる。

そのことにカッとなったアンは、石板でギルバートの頭をたたいて、絶交してしまう。

それ以来、お互いを意識するアンとギルバートだが、口をきくこともなく、仲良くなれない。仲直りをする機会がうまれても、すれ違ってばかり。

そんな二人は、まったく交流をしないのだけど、相手への想いをひそかに募らせていてーー。

 

 

赤毛のアンの恋愛部分だけをきりとると、こんなあらすじになるだろう。

作者の藤原さんと畑中さんは、『赤毛のアン』の話で盛り上がって、絶交しているのに、想いを募らす二人を描こうといって、『キス、絶交、キス』の読み切りとして、第1話目を生み出したのだという。

 

その発想の仕方だけで、面白そうで、読みたくなった。

 

その読み切りは、雑誌でアンケートが良くて、そのまま連載になったとのことだけど、読み切りでいきなりアンケートがいいというのが、納得できる内容だった。

少女マンガの恋愛は、男にはついていけない、という僕の偏見は、見事に打ち砕かれた。普遍的な物語がそこにはあった。 

 


単行本は、『キス、絶交、キス』と『キス、絶交、キス –ボクらの場合—』の2種類が存在するが、まずは読み切りが掲載されている『キス、絶交、キス』から読むほうがいい。

 

その日は、対談で他の作品の話も聞いた。

どれも、その説明だけで面白そうで、読みたくなった。

面白い作品を作るよりも、面白そうで本当に面白い作品を作る方がずっと難しい。

畑中さんが編集する作品は、どれも「面白そう」もしっかり実現していた。

 

これだけ内容が充実している作品を、それほど媒体として強くない女性マンガ誌で生み出し続けている畑中さんのような存在は、出版界で他に見つけられない。

作家を気に入って、まとめて読むことがあると思う。普段、少女マンガを読まない人も、「畑中雅美」というプレイリストで少女マンガを手に取ってみるといいだろう。

 

キス、絶交、キスボクらの場合(1) (フラワーコミックス)
著者:藤原よしこ
出版社:小学館
販売日:2013-01-01

 

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人気のコメント

10万部超えのヒット連発!敏腕女性編集者が『赤毛のアン』と出会ったらこうなった『キス、絶好、キス』
少女マンガの恋愛は、男にはついていけない、って偏見は自分も持っていた。でも、ちゃんと読んでみるとすごく理解できて、男性にとっても良い作品はけっこうある。

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