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※この記事は2014年07月18日にマンガHONZ(運営:株式会社マンガ新聞)にて掲載した記事の転載になります。
レビュアー:永田 希

かわいい闇
作者:マリー ポムピュイ
出版社:河出書房新社
発売日:2014-06-23
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最近、一部で話題の本書。いちおうフランス語圏のマンガというカテゴリーに入るのですが、絵本として認識されていたり、「マンガ絵本」と呼ばれていたり、位置付けは折衷的と言うべきでしょう。判型も大きく、フルカラーなので、たしかにマンガというよりも絵本に近いといえるかも知れません。

ともあれ、例によって重要なのはカテゴリー分けではありません。内容です。本書が話題になっているのは、作品名にある「かわいい闇」という看板が嘘いつわり無いという点に尽きるでしょう。どこかの森の四季が美しく移ろうなか、主に子供たちからなる小人たちが森の動物たちと賑やかに暮らす… とこう書けばあらすじは牧歌的です。

そして、このあらすじの雰囲気にたがわず、小人たちは実に可愛らしく無邪気に見えますし、リアルに描かれた森の美しさは、まるで木の葉や花の香りが漂う中を森林浴するような気持ちよさを読者に与えてくれるでしょう。

これだけで良かったんじゃないかという気もするのですが、しかし作者たちは容赦しません。子供向け、あるいは怖いものを見たくない全ての人々に向けて、死も恐怖も裏切りも描かないで過ごすことも出来たんじゃないかと思うのです。しかし作者は描いてしまうのです。

「闇」。

そう、本作では徹頭徹尾、「死」や「恐怖」や「裏切り」が描かれます。絶妙のバランスで。小人たちが暮らしているすぐ横には、謎の少女の死体があり、森の動物たちと小人たちは最後まで心を通わせることはなく、少女を殺したかも知れない謎の成人男性が無言で現れる。小人たち同士のコミュニケーションも、常に残酷さに満ちています。この側面を強調し過ぎたら、今度は本作はただ「闇」を描いた作品ということになるでしょう。

でも「かわいい」。

本作を味わおうとすればするほど、つくづくこのタイトルの絶妙さにうならされます。本作から受ける印象はまさに「かわいい闇」。単なる「闇」でも、単なる「かわいらしさ」でもありません。

本書の巻末に収録された作者インタビューで、作者のひとりが「死んでいる少女のモデルは、自分の姪。私の姉(姪の母)は、この作品を読めないっていうの」みたいなことを語っているのですが、そりゃそうですよ!自分の娘が死んだことにされて描かれてる作品なんて読みたくないですよ!

でも、僕はその死体のモデルになったという姪っ子さんには、実はできるだけ早くこの作品を読んで欲しいとも思うんです。自分が死んだことにされている作品なんて、我が子には読んで欲しくないと思う親御さんがほとんどかも知れませんが、でもこの作品には、人間の愚かしさや身勝手さ、世界の不気味さや暴力の恐ろしさが克明に描かれています。読み方を間違えれば、単に残酷な人間を育ててしまうかもしれませんが、それでも同時に世界の美しさ、愛らしさも描かれている。この両面性が世界に存在していること、そしてそれを人間が描き出して作品化できるということを、幼いうちに体験してしまうのは、悪いことじゃないような気がするんです。

まあ、実際問題として本作を本当に幼児が見て害が無いという保証はありませんし、自己責任と言ったところで幼児に悪影響があった場合には責任のとりようもありませんので、飽くまでそんな気がするというところに留めておきたいと思いますが。そういうわけで本作は「知り合いの小さい子に薦めたらヤバそうな作品」ということでご理解ください。ヤバいというのは、もちろん単に危険というだけではなくて、非常に面白そうだというニュアンスも含んでおります。

かわいい闇
作者:マリー ポムピュイ
出版社:河出書房新社
発売日:2014-06-23
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