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双子出産・妻の死・ブラック企業勤務・・・デス・スターに暮らす父子家庭の日常をつづるカートゥーン。

※この記事は2017年7月20日にマンガHONZ(運営:株式会社マンガ新聞)にて掲載した記事の転載になります。
レビュアー:今村 亮

ひとり親の育児は困難と言われます。


筆者は共働き世帯で3歳の男児を育てる父親ですが、へとへとに体力勝負の日々を送っています。

世界一有名なひとり親といえばダース・ヴェイダーです。彼はルークとレイアという双子を出産した直後に妻パドメを失い父子家庭となりました。

フォースを使いこなすダース・ヴェイダーでさえ、ひとり親育児の困難を乗り越えることはできませんでした。ほどなく双子はジェダイの手によって里子に出されます。 ルークは農村へ、レイアは王室へ。そして父子が悲しい末路を辿ることは世界中が知るとおりです。

しかし、もしも。もしもです。

里子に出されるまでの間、ダース・ヴェイダーがデス・スターで懸命に育児を行っていたとは考えられませんでしょうか?

そんな想像を元に、宇宙世紀に訪れた束の間の日常について描いたアメコミが『ダースヴェイダーとルーク(4歳)』です 。  

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)
作者:ジェフリー・ブラウン 翻訳:富永 晶子
出版社:辰巳出版
発売日:2012-05-28
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この作品はパロディですが、れっきとしたルーカスフィルム公認作品として「3.5部」と位置づけられています。かわいらしい表紙を開くと、銀河系をバックにした例のスター・ウォーズ調のあらすじが現れます。

シスの暗黒卿ダース・ヴェイダーは、反乱同盟軍の英雄たちと戦うべく、銀河帝国軍を率いる。だが、そのまえに、まず4歳の息子、ルーク・スカイウォーカーと 遊んでやる必要がある・・・


おおお。とってもほほえましい!

ダース・ヴェイダーはいったいどんな育児を繰り広げているのでしょう?

たとえばルークを悪の枢軸として育てるシーンがあります。

そして父と息子としてともに銀河を支配するのだ

ダース・ヴェイダーにとって息子は帝国を統べる希望なのです。ときには息子の友達関係に口をはさむこともあります。

だめだ、ハン・ソロとは遊ぶな。絶対にだめだ

ただしいくらダース・ヴェイダーの期待を受けても、ルークはけろっとしているので先が思いやられます。

そしたらおやつくれる?

この調子でダース・ヴェイダーの英才教育は成功するのでしょうか。もちろん、みなさん御存知の通り、育児の残念な結末は歴史が証明することとなります。

やはり圧されているのはダース・ヴェイダーの方です。奔放なルークに振り回される日々が続きます。せっかく朝ごはんをつくったのにルークはこうです。

わたしがつくった卵料理は食べられないのか?

わかるわかる。子どもが好き嫌いするとイライラしますよね。

ルーク、いますぐすべて片づけなさい
それとも、自分の部屋で反省するか?

ほんとうにこれ。男児はなぜ毎回おもちゃ箱を全部ひっくり返すのだろう。

こんな具合だから、ときに育児はしんどい。妻を亡くし、友を裏切り、師を殺めた男であればなおさらでしょう。ダース・ヴェイダーだってときには独りになりたい夜もある。そんなときはこっそりタイ・ファイターに忍びマスクを脱ぐしかありません。

ルーク、すこしはひとりにしてくれ


わかる。育児って、そういうときもあるよね。

 

筆者は34歳です。スターウォーズとともに青春を歩みました。高校時代にはエピソード1のレイトショーに並び、美術の授業でダース・ヴェイダーの絵を書き、ハズブロー社製のフィギュアを大量に買い集めました。

やがて故郷を離れ、定職につき、結婚し、住宅ローンを組み、フィギュアは押し入れにしまいこんだまま取り出すこともなくなりました。大人になるとはそういうことなのかもしれません。そんなあるとき、たまたま遭遇したのが本書の原画展でした。ひさびさに胸が熱くなりました。

ほどなく筆者は男児を授かりました。本書が邦訳されたことを知り、息子へのプレゼントとして(という名目で)購入しました。もちろん息子を趣味に洗脳しようというよこしまな考えがあったことは否めません。あえなく息子はその罠に落ちました。夜に一緒にベッドにはいるときには、本書の読み聞かせを求めるようになりました。スター・ウォーズの絵本で寝息を立てはじめる息子の隣にいることはこれ以上ない幸せです。

そうか。ルークに自分を重ねていたあの頃から時は流れ、いつの間にかダース・ヴェイダーに追いついてしまったんだなあ。

本書はルークによってこのようにしめくくられます。

パパ、大好き

泣ける!・・・泣いてしまうよ!

このシーンは全ての父親の愚かしい理想です。そんなもの御伽だ、永久には続かない、時は止まらない。理解しつつも、そうありたいと願ってしまうのが父親です。

いつの間にか筆者の息子は今月で4歳を迎えます。ルークと同い年です。本書の作者ジェフェリー・ブラウンもまた、シカゴに息子がいるそうです。彼は父としての願望をスター・ウォーズに重ねたのではないだろうかなあ。

本書はきわめてほほえましいパロディ作品ですが、なんとも言えない寂寥感が残ります。ダース・ヴェイダーとルークの行く末を我々は知っているからです。「パパ、大好き」というセリフの先にありえたかもしれない可能性は胸をちくちくと刺します。本書はダース・ヴェイダーが心に隠した妄想として読むこともできるんだよなあ。読み聞かせをする筆者の感傷は、息子に隠しきれているかなあ。

スター・ウォーズがこれだけ世界で愛されている理由は、きわめてシンプルな家族の物語だからだと筆者は思います。宇宙世紀を舞台装置にファンとともに成長していく稀有の作品です。父になったスター・ウォーズファンの男性陣は、ぜひこの絵本で寝かしつけにチャレンジしてみてほしいと願います。

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ダース・ヴェイダーとプリンセス・レイア
作者:ジェフリー・ブラウン 翻訳:富永 晶子
出版社:辰巳出版
発売日:2013-04-27
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